犬の痛み止めに効果的なもの!市販品は使っても大丈夫?副作用が心配

犬 痛み止め
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私達は痛みを言葉で、「あそこが痛い」と場所を伝え、「ジンジン痛い」と状況を伝え、「昨日から何時間おきかに痛い」といつからどのように痛いかと伝えることができます。

しかし、犬は言葉で痛みを伝えることができません

そのため私達はワンちゃんのしぐさなどから感じ取るしかないのです。

ところが、痛みをがまんするというか、隠そうとするかのような行動を取るために、なかなか察してあげることが難しいですよね。

でも、できることなら痛み止めを効果的に使って愛犬の痛みを取って楽にしてあげたいと思いませんか?

ここでは犬が痛みを表している行動やしぐさ、そしてその元になっている疾患をお伝えして、それを取り去ってあげるのに有用な薬について紹介します。

 

犬が見せる痛みのサインってどんなものがあるの?

一般に動物が痛みを感じると自己防衛をしようとするためか、痛みを隠すかのようにしてじっと耐えるようにひたすら寝ているといったような様子を見せたります。

あるいは身体をひたすら舐めていたり、運動もしていないのに呼吸が荒くなっていたり(パンティング)、それらも含めてこのような行動やしぐさを見せます。

  • のろのろと歩くなど、跛行(はこう)と呼ばれるおかしな歩き方をする
  • 身体に触れようとするとこわばらせ、やたらと鳴きたり歯をむいて唸ったりする
  • 身体の一部をしつこくなめたり噛んだりしている 
  • 怒りっぽくなったり、いつもイライラするなどのほか、無気力になったり性格に変化が見られる
  • いつも背中を丸めている姿勢をとる
  • 冬でもなく寒くないのにいつも震えている
  • いつも呼吸が荒い(パンティング)
  • いつもできているのにトイレを失敗する
  • 明らかに以前より食欲が落ちる  
  • いつもより元気がなく散歩などに行きたがらず動きたがらなくなる    
  • ボール遊びなど好きだったことに興味を示さなくなる
  • 眼が沈んで見えて表情が暗くなる  
  • いつも寝てばかりいる

このような状態でいる時にはたぶん身体のどこかに痛みを感じて苦しんでいます。

ふだんのQOL(quality of life:生活の質)が格段に落ちてしまっているので、早く気づいてあげて痛みを取り除いてあげなければなりません。

 

犬が痛みを感じるのはどんな時?

痛みには急性痛と慢性痛があります。

またこれらとは別にがんによるがん性疼痛があります。

 

急性痛

手術やケガなどで発生する痛みのことで、身体に異変が起きたことを報せる警告の意味を持った痛みです。この痛みには鎮痛薬が効きます。

手術のケースでは事前から鎮痛剤を投与しておいて、術中から術後もずっと継続してできるだけ痛みを和らげるようにします。

 

慢性痛

関節炎や椎間板ヘルニアなどの神経性の痛みがこれにあたり、3カ月以上続けて痛みが発生していることを指しています。

この痛みでは鎮痛薬だけで痛みをコントロールすることが難しく、そのほかに理学療法やサプリメントなども併用することがあります。

 

がん性疼痛

がんの終末期にはほぼ痛みが発生して、苦しみ続けることになります。

がん細胞自体が増えることによって起こる痛みと、化学療法や放射線療法などによる痛みもあります。

痛みによってQOLが妨げられてしまうことがあるので、とにかく痛みを取ることが目的となります。

 

犬の痛み止めにはどんな薬があるの?副作用は?

急性痛、慢性痛、がん性疼痛には非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、非麻薬性オピオイド、麻薬性オピオイドなどの鎮痛薬などが痛みの度合に合わせて、注射、経口、座薬、貼り薬として使われます。

これらだけで抑えきれなければ補助としてこれらのほかの鎮痛剤や抗ケイレン薬に局所麻酔薬(キシロカイン、マーカイン)などが使われることもあります。

 

非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)

  • カルプロフェン(リマダイルほか)
  • メロキシカム(メタカムほか)
  • フィロコキシブ(プレビコックスほか)
  • テポキサリン(ズブリンほか)
  • ロベナコキシブ(オンシオール)
  • マバコキシブ(トロコキシルチュアブル)

主な副作用には胃腸障害、腎機能・肝機能障害などがあります。

 

非麻薬性オピオイド鎮痛薬

  • ブトルファノール(ベトルファールほか)
  • ブプレノルフィン(レペタンほか)
  • トラマドール

主な副作用としては、嘔吐や気分が悪くなったりするほか、眠くなることがあります。

 

麻薬性オピオイド鎮痛薬

  • リン酸コデイン
  • モルヒネ
  • フェンタニル

副作用には依存性、呼吸抑制、意識障害、けいれんなどが出現します。

これらの中で特に強力な鎮痛作用のあるオピオイド鎮痛薬は、麻薬に似た作用を持つ鎮痛薬です。

法律上「麻薬」として指定されているため、免許を持っている獣医さんしか処方することができません。

これらのほかにはステロイド(プレドニゾロンなど)も使われることがあります。

 

犬に使える急性痛や慢性痛の痛み止めはこちら

よく使われているのは非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)で、経口で与えられるものがこちらです。

 

フィロコキシブ(商品名:プレビコックス)

炎症を起こしている酵素を阻害することで、老犬に多い変形性関節症などの炎症を抑えて関節の痛みを和らげます。

非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)の中では副作用が少ないとされています。

ワンちゃんが好むフレーバーが付けられていて飲ませやすい薬です。

 

ロベナコキシブ(商品名:オンシオール)

効果の持続する時間が長いとされている非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)です。

痛いところに24時間残るとされていて、6か月間処方しても安全であったとの報告があります。

炎症を起こしている部分を狙って酵素を阻害するので副作用が少ないとされています。

錠剤ですが、牛肉フレーバーが付けられています。

 

マバコキシブ(商品名:トロコキシル)

持続時間が長いために1ヶ月に1回飲ませるだけで長期間飲ませることができる非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)です。

毎日飲ませなくとも良いので、飼い主さんの負担を大きく軽減することになります。

 

カルプロフェン(商品名:リマイダル、カロダイル、リカルファほか)

こちらも悪玉酵素を阻害する非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)です。

やはり副作用が少ないとされていて、慢性の痛みに長期間処方されています。

牛肉などのミート風味がつけられていて、ワンちゃんが喜んで飲んでくれる薬です。

 

メロキシカム(商品名:メタカム、メロネックス、メタフラムほか)

シロップタイプで飲ませやすい非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)です。

副作用が少なく慢性の痛みだけでなく急性の痛みにも処方されています。

これらの薬は飲ませやすい工夫がなされていて、ワンちゃんの好むフレーバー付きのものや砕いてご飯にまぜられるもの、ほかにシロップタイプなどがあります。

愛犬の好みなどを獣医さんにも伝えて、処方してもらうと良いでしょう。

 

人用の市販薬を犬に飲ませても大丈夫?

愛犬が朝から「クンクン」と鳴いてどこかを痛がっているのだけど、今日は忙しくて診察に連れていく時間がない時ってありませんか?

そんな時にちょうど手元に人用の痛み止めがあったら、飲ませて楽にしてあげたいと思いますよね。

でもそれはちょっと待ってください!

人用に市販されている痛み止めをワンちゃんに飲ませてはいけません。

獣医さんから出してもらえる薬は、ほとんどが人用の薬と同じ成分が含まれているものがほとんどです。

ワンちゃんにも効果があるだろうと思えるのですが、その成分の量に問題があるのです。

薬はどんなものでも副作用があるので、治験を行って安全で効果のある量を調べてから販売されています。

人用の薬を「これくらいならいいだろう」と素人判断で飲ませると、ワンちゃんにとって安全である量よりも多くなってしまう恐れがあるのです。

痛み止めには量が多いと肝臓や腎臓などに悪い影響を与えるものや、中毒を起こすものがあります。

薬は必ず獣医さんが処方してくれるものを指示に従って飲ませるようにしてくださいね。

 

がんによる痛みに使う薬は違うの?

薬が必要になる痛みの中で「がん」による癌性疼痛は、いつも激しい痛みが急に出て、しかも長く続いてとても辛く苦しいものとされています。

その痛みによって動くことができなくなり眠ることもできず、食欲も落ちてしまうために、さらに体力が弱まるのでより一層QOL(生活の質)が低下する悪循環におちいるのです。

そのために、人の「がん」の治療では痛みを早く取ることが大切とされていて、特に末期がんで最重視されているのは、ワンちゃん、ネコちゃんなどの動物においても同じです。

WHO(世界保健機構)ではこの痛みの管理に「除痛ラダー」というステップを示していて、動物にも適用されています。

  1. 第1段階(軽度の痛み):非オピオイド鎮痛薬(NSAIDsほか)に補助薬などを加えても良い
  2. 第2段階(中等度の痛み):非オピオイド鎮痛薬に弱オピオイド鎮痛薬や補助薬を併用する
  3. 第3段階(重度の痛み):強オピオイド鎮痛薬(モルヒネほか)に補助薬を併用する

弱オピオイド鎮痛薬には以下のものがあります。

  • リン酸コデイン
  • トラマドール
  • ブトルファノール
  • ブプレノルフィン

また強オピオイドは、モルヒネやフェンタニルのことです。

 

犬の痛み止めに効果的なもの!市販品は使っても大丈夫?副作用が心配・まとめ

愛犬が痛みに苦しんでいる姿は見ていてかわいそうで、一刻でも早く助けてあげたいですよね。

でも、だからと言って飼い主さんが飲んでいる痛み止めを安易に与えてはいけません。

ひとくちに痛みと言っても原因によってさまざまな違いがあって、使われる薬も違います。

また、安全で効果が期待できる成分量は人と犬とでは全く異なりますので、思わぬ副作用が出てしまうこともあるのです。

愛犬から痛みのサインが出ているのを察知したら、直ぐに動物病院で診断してもらうことをおすすめします。

犬用の痛み止めを正しい使い方で与えることで、苦しい痛みを早く取ってあげるようにしてくださいね。

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