犬が前庭疾患になった!?治療法は?マッサージが効くってホント?

前庭疾患 犬 治療
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それまで元気だったのに、急にふらふら歩きだして倒れることを繰り返したり、グルグルを回り出したりしたら、愛犬に前庭疾患が起こっていると考えられ治療が必要です。

犬の前庭疾患とは神経が機能しなくなり異常な行動を取る疾患です。

耳の疾患や脳の障害などで起こるとされていますが、高齢のワンちゃんでは特発性として原因がわからずに起こることがあります。

特発性のケースでは原因がわからないために有効な治療がありません。

さまざまな症状へ対処しながら自然に回復するのを待つだけで、かなりの日月がかかります。

また、後遺症がのこりやすく、とても面倒な疾患なのです。

 

こんな症状が現れたら気をつけましょう

ワンちゃんの平衡感覚がおかしくなるために、下記のような症状が現れます。

このような仕草を見つけたら早めに診察を受けましょう。

  • 頭を片側に傾けて首をひねったような姿勢をとる(捻転傾斜)
  • 真直ぐ歩けず、左右どちらかに倒れ込むように進んでいく(運動失調)
  • 転んだまま一定の方向にグルグル回り続ける(運動失調)
  • 何もないのにつまずいてしまい、よろめくことがある(運動失調)
  • 立ち際にふだんより足を広げないと立てない(運動失調)
  • 目が回ったかのように眼球が回転するような動きをする(眼振)
  • 眼球が一定の方向に小刻みに往復している(眼振)
  • よだれをたくさん垂らす
  • 食欲がなくなる
  • 嘔吐する

これらは3日ほどで消え始めて3週間ほどで見られなくなるようになることが多いのですが、捻転斜頸という頭を傾ける状態が後遺症になることがあるほか、再発することもあります。

どのワンちゃんにも起こる疾患ですが、特に柴犬に多いとされています。

 

前庭疾患が起こる原因とは?

前庭は耳の内耳と中枢の脳幹にある橋、延髄、小脳方葉とに分かれていますが、それぞれに原因となる疾患があります。

ほとんどが末梢性として内耳で発生しますが、中枢でおこるものはなかなか治らないとされています。

 

末梢性前庭疾患の原因となるもの

  • 中耳炎
  • 内耳炎
  • 内耳の腫瘍
  • 甲状腺機能低下症
  • 外傷
  • 生まれつきの奇形
  • 内耳への毒性がある薬剤や化学物質
  • 加齢によって起こる特発性の前庭疾患

この中で高齢のワンちゃんに起こることが多いとされている特発性前庭疾患は、検査をしても原因がわからないケースがほとんどです。

 

中枢性前庭疾患の原因となるもの

  • 脳脊髄炎
  • 脳腫瘍
  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • 外傷
  • 中毒
  • ビタミンB1の欠乏

これらの疾患を発見し、特定するために以下に挙げる検査が実施されます。

  • 耳鏡検査
  • 歩行検査
  • 神経学的検査
  • 血液検査
  • CT検査
  • MRI検査
  • 電気生理学検査

この中で中枢性の原因を調べるのにはMRIが、末梢性のものを調べるにはCTで診断されます。

最近では、抹消性のものでも脳幹にも疾患があるケースがあるため、どちらも診断できるMRIが使われることが多いようです。

 

どのような治療法があるの?費用は?

原因となっている疾患を見つけ、それを治すことが必要となります。

前庭疾患の症状そのものは自然に回復していきますが、お年寄のワンちゃんで体力が著しく低下してしまっているケースや、症状が重いケースでは対症療法としてこれらの処置が行われます。

  • 捕液の点滴による水分や栄養の補給
  • 酔い止め薬の処方
  • 制吐剤の処方

なお、原因がわからない特発性前庭疾患や、高齢のワンちゃんやほかの持病などによって全身麻酔をかけることができないことがあります。

このようなケースではMRI、CTなどの検査や手術の実施が難しいために、内服薬での治療が選択されてステロイドが処方されます。

ステロイドはこの疾患には有効な薬ですが、漫然とつかっているとさまざまな副作用がありますので、獣医さんの指示に従って服薬させるようにしてください。

 

治療にかかる費用

施設や処置によって差がありますが、1度の通院でかかる費用の平均は6,000円ほどです。

原因の疾患がある場合は、その治療費が別にかかることになります。

 

症状が出ている時にはどうしたらいいの?

先に挙げた症状を発見した時にパニックにならないようにするために、日ごろから意識しておくべきことがあります。

捻転傾斜、眼振、運動失調が現れるのに決まった順番はありませんし、ワンちゃんによってその程度もさまざまです。

特にワンちゃんが高齢になっていたら、毎日その様子をしっかり観察しておきましょう。

 

何はともあれ冷静になること

とにかく何の前触れもなく発症することが多い疾患なので驚かされることが多いのですが、何かおかしいと思った時に大声で騒いだりしないことが大切です。

ワンちゃんは飼い主さんの声や動きの変化に敏感に反応しますし、緊張した時の汗の匂いの変化なども嗅ぎ分けることができるのです。

一緒にパニックになってさらに、状態が悪化してしまうかもしれません。

 

現状の記録をとる

獣医さんに診察してもらう前にワンちゃんの様子を記録しておきましょう

  • 呼びかけへの反応
  • 心拍数
  • 呼吸数
  • 呼吸の程度(荒い、浅いなど)
  • 食欲の有無
  • ご飯の食べ方や量
  • 外傷の有無
  • よだれの有無や量
  • 嘔吐の有無
  • オシッコの回数や量、色、匂い
  • 直前のウンチの硬さ、量、色、匂い

これらについてメモしておくかスマホなどで写真や動画を撮っておき、獣医さんに伝えることで正確な診断に役立ちます。

 

安心して休むことができる場所をつくる

呼びかけに反応せず意識がない、あるいは嘔吐などが酷くて苦しんでいるようなら、急いで獣医さんの診察を受けましょう。

また、軽い症状でも中枢性の前庭疾患だと命にかかわることになるかもしれませんので、様子を見るなどせずに動物病院に連れて行くようにしてくださいね。

診察が終わって入院しなければならないケースもありますが、たいていは家に帰ることができるでしょう。

家の中では症状が治まるまでは安静第一です。

ワンちゃんのお気に入りの場所があればそこに、室外で飼っているワンちゃんも様子を観察できる場所に寝かせてあげるようにしてください。

その際には室内の温度や湿度を管理して、静かに快適に眠ることができるような環境を作ってあげてくださいね。

もし何か少しでも異変を感じることがあったら、すぐにかかりつけの獣医さんに連絡を取り、現状を伝えて指示を受けてください。

 

回復期に行うマッサージとは?

症状が治まってきたらマッサージをしてあげると良いとされています。

  1. 洗面器に40℃ほどのぬるま湯を入れてそばに置く
  2. いれいなタオルを濡らして絞る
  3. ワンちゃんの首の上に絞ったタオルを置く
  4. タオルの上から首の筋肉を優しく揉みほぐす
  5. タオルが覚めてきたら再びお湯に浸けて暖かい状態を保つ
  6. 首の次は身体にタオルを当てて温めながら軽くさするようにほぐす

なお、可能ならば足の裏の肉球も押すようにマッサージしてあげると良いでしょう。

マッサージする際はあまり力を入れないようにすることがポイントで、ワンちゃんが嫌がるようなら無理にしないようにしましょう。

それと、空腹の時やご飯の後1時間くらいは食休みをさせるようにしてあげてくださいね。

 

回復期に気をつけることとは?

症状が消えるまでは3週間から長い時には数カ月かかることがあります。

その間、ワンちゃんは寝たきりでいるか、歩けるようになってもふらつき、倒れることがあります。

 

寝たきりになっていたら

特に高齢のワンちゃんでは寝たきりになってしまうことがありますが、その場合、最も気をつけなければならないのは床ずれです。

症状が酷いと寝返りを打てなくなるために、下になっている部位に体重がかかり血行が悪くなり皮膚や筋肉が壊死することがあります。

これを防ぐために、定期的に寝返りを手伝ってあげて体位を変えてあげて、床ずれができていないかどうかをチェックしておくことも忘れないようにしてください。

また、その際に上記マッサージをしてあげると床ずれを防ぐことに役立つでしょう。

なお、床ずれが起きていたら軽いうちに獣医さんに手当してもらってくださいね。

 

室内を安全にする

少しでも歩けるほどに回復しても、上手く歩けず転んでしまうことが多々あります。

その際にテーブルやタンスなどの家具の角にぶつかり、ケガをすることがあるので、そのような角にはクッションやスポンジなどを当てておきましょう。

また、片づけておくことができるものはしまっておき、ワンちゃんの居場所の周辺や動線のスペースを確保してあげてください。

特に家具のすき間などに入り込むと出られなくなってしまうことがあるので、すき間は塞いでおきましょう。フローリングの滑りやすい床にはカーペットなどを敷いておき足腰の負担を減らしてあげてください。

 

歩行のサポートをする

歩けるようになったら、リハビリを進める意味でもできるだけ歩かせましょう。

その際、体力が戻っていないワンちゃんをサポートするために、歩行補助用のハーネスを装着させて飼い主さんが手で持って負担を軽くしてあげると良いでしょう。

 

犬が前庭疾患になった!?治療法は?マッサージが効くってホント?まとめ

それまで元気に普通にすごしていた愛犬が急に歩けなくなり倒れてしまって、目見ると眼球が不自然に動いていたら、ほとんどの飼い主さんはビックリしてパニックになることでしょう。

犬の前庭疾患は突然発症する神経症状で治療は対症療法が中心です。

前庭部は末梢性(耳の内耳)と中枢性(脳幹の延髄などの部位)の2カ所に分かれていて、それぞれ異なる疾患が原因となって発症します。

また、高齢の愛犬では原因不明とされている特発性前庭疾患が発症しやすく、その場合には対症療法で症状を抑えるしか治療手段がありません。

犬の前庭疾患は治療をしなくとも自然治癒することが多く予後が良いとされていますが、原因となっている疾患があるなら早く治療をしなければなりません。

愛犬の様子が少しでもおかしいと感じたら、できるだけ早く動物病院で診察してもらいましょう。

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