犬が僧帽弁閉鎖不全に!咳が止まらないので手術が必要?

僧帽弁閉鎖不全 犬
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僧帽弁閉鎖不全症は、犬に最多く見られる疾病と言われています。

小型の老犬によく見られるとされていますが、例外的に若齢でも発症するケースもあります。

夜間から明け方の夜中に出る咳が特徴的ですが、初めの内は特に異変が見られず、元気がなくなっても老化のせいかと片付けられてしまうこともあります。

しかし、放置しておけばやがて心不全を起こして命を失う疾病ですので、できるだけ早く発見して進行を止めることが大切になります。

今回は犬の僧帽弁閉鎖不全症の病態や、早く見つけてあげることの重要性についてご紹介します。

 

僧帽弁閉鎖不全症ってどんな疾病?

4つの部屋がある心臓では、全身を巡ってきた血液が以下の順番で送り出されます。

  1. 静脈
  2. 右心房
  3. 右心室
  4. 左心房
  5. 左心室
  6. 全身

左右の心室が心筋によって大きく収縮してポンプの働きをするのですが、この心室にはそれぞれ出入口に弁がついていて逆流を防ぐようにできています。

その4つの弁のうち、肺から戻ってきた血液をためる左心房と、全身に血液を送り出す左心室との間にあるのが僧帽弁です。

この弁が何らかの原因で上手く閉じなくなって、左心室から左心房に血液が逆流してしまい、全身に血液が巡りにくくなってしまうのです。

 

犬ではどのような症状が出るの?

初めのうちは特に変わりはなく、初期に見つかるのは定期健診などで獣医さんが心音を聴いた際に異音があることでわかります。

進行するに連れて、愛犬が疲れやすくなり、散歩にいくことや運動することを好まなくなるようになります。

そして、夜間や何かに興奮した時などに「ゼーゼー」と痰がノドにつかえたような咳が出て、この時点で何かおかしいと異変に気づくケースが多いようです。

そして、最終的には心不全となって命を落としてしまうことになります。

老犬での発症が多いために、運動量が落ちて疲れやすくなっても「歳を取ったな」と片付けずに念のため上記のような症状が見られたら早めに獣医の診察を受診してくださいね。

 

かかりやすいのはどんな犬種?

中高齢の小型犬で、10歳以上だとかかりやすいとのデータがあり、以下の犬種があげられています。

  • マルチーズ
  • チワワ
  • ポメラニアン
  • シーズー
  • パピヨン
  • トイプードル
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル

この中では、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルが遺伝的にかかりやすいとされていて、若齢犬でもかかります。

 

犬の僧帽弁閉鎖不全症を早く見つけるために

この疾患は早期発見が大切であることがわかりましたが、検診を受けるだけでなく飼い主さんが自宅で調べることもできます。

以下にチェックポイントについて記しておきますので、ぜひ実施してください。

 

心音を聴く

小さいワンちゃんなら抱っこで身体に耳をつければ心音を聴くことができます。

心臓の鼓動だけでなくテレビ放送終了後の「砂の嵐」のような雑音が聴こえたら、血液が正常ではなく逆流しているかもしれないので、静かな場所でしっかり確認しましょう。

 

心拍数をはかる

成犬での安静にしている時の心拍数は小型犬で約70回/分、大型犬なら約50回/分です。

子犬は多くて成犬の倍あるのでビックリするかもしれませんが、220回以下なら大丈夫です。

これらの数値を上回ることが多く、かつ心雑音が聴こえるようなら診察をしてもらってください。

心拍をはかるには、愛犬が落ち着いている時に左胸に指先をあてるか、あおむけに寝かせて後ろ足の付け根に指をあててはかると良いでしょう。

 

呼吸を数える

血の巡りが滞ると、身体が反応して呼吸を増やして補おうします。

そのため呼吸数が上がるので、それを数えれば疾病にかかっているかどうかがわかるのです。

安静にしている時に寝かせるか伏せの姿勢にして、吸って吐く「スーハ―」で1回とカウントしますが、音が聞きづらいならば胸の動きからもわかります。

安静の時の呼吸は小さい犬ならば20回/分、大きい犬では15回/分とされていますが、30回/分より多ければ体に異変があると言われ、40回/分より多くなると危ないとされています。

それほどの呼吸数だとたぶん見た目で具合が悪いことがわかるでしょうから、直ちに病院へ連絡をして連れて行きましょう。

 

食欲の変化を見る

理由は不明ですが、この疾病が進むと食欲が低下するのに加えて、偏食になるケースが多いとされています。

これまでの好物を食べなくなり、違うものを好むようになるなどしますが、1週間もするとまた好みが元に戻るなどとの偏食が見られるとされています。

 

体毛や皮膚の状態を見る

血行が悪くなるので体毛が乾燥気味にパサパサになる、あるいは弾力がなくなりゴワゴワになることがあり、脱毛が起こるようになります。

皮膚も乾燥しますのでカサカサになるほか、舌や歯茎などの粘膜の血の気がなくなり青白くなっていたり、もし紫に見えたらチアノーゼが起きていることが考えられますので直ぐに診察を受けましょう。

 

散歩に行く際の様子をよく見る

身体の血流が低下して疲れやすくなるので、散歩に行きたがらなくなります。

しかし、犬は飼い主さんから散歩に誘われると、嬉しくて無理をしてしまうことがあると言われています。

喜んで散歩に出かけたように見えても、途中で立ち止まって動かなくなったり座り込んだりするようであれば、とりあえず散歩を中止して帰宅し、かかりつけの獣医に相談しましょう。

これら6つのポイントは日常の世話する中で調べられることばかりなので、高齢の愛犬に対しては毎日チェックをして、異変を早く見つけてあげてくださいね。

 

犬の僧帽弁閉鎖不全症の分類

このように発表されています。

 

ステージA

  • 心雑音がない
  • 少し元気がない感じ
  • 散歩から早く帰ろうとする

 

ステージB1

  • ごく軽い心雑音がある
  • 心拍が少し早い
  • 呼吸が少し早い

 

ステージB2

  • 軽い心雑音がある
  • 痰がからむような咳が出る
  • 舌や歯茎が青白くなる
  • 息切れしやすい

 

ステージC

  • 心雑音がある
  • 咳が激しく出る
  • 呼吸数がかなり多い
  • 興奮すると失神しやすくなる

 

ステージD

  • 心雑音がある
  • 激しい咳が続きひどいときは失神する
  • 呼吸が異常に早く多くなる
  • 興奮すると失神することがある

これらのステージ分類で大切なことは、次のステージには進めないことです。

 

疾病の進行を防ぐ食事やサプリメント

ステージA、B1については食事に注意するほかサプリメントなども摂らせて進行を防ぎます。

 

食事

この疾患では心臓にかかる負担を増やさないため、高血圧になるのを防ぐことが最も大切です。

そのため食事では塩分を摂り過ぎないようにしてください。

塩分を摂り過ぎると水を飲むことが増え、血流量が増えて高血圧になってしまいます。

塩分制限されたドッグフードや塩分を排泄させるカリウムを含む食品、例えばバナナなどをおやつとして与えるのも良いですね。

また肥満も高血圧の敵ですので、カロリー摂取に気をつけて体重を適正に保つようにしましょう。

 

サプリメント

動脈硬化を防ぐサプリメントは高血圧を防ぐことができるのでおすすめです。

不飽和脂肪酸やコエンザイムQ10、ビタミンB類などを含むものが良いでしょう。

さらにビタミンA(βカロチン)、E、Cなどを含むものも有効とされています。

 

処方される薬剤

ステージB2、C、Dでは食事、サプリメントに加えて薬物により、血圧を下げる、心臓の働きを助けるための薬剤が処方されます。

  • 血管拡張薬(血圧を下げる:アンジオテンシン変換酵素阻害薬、カルシウム拮抗薬)
  • 利尿薬(血圧を下げる)
  • 不整脈薬(β遮断薬)
  • 強心薬

なお、これらの薬剤はステージの進行を遅らせるだけで根本的に治せるものではないので、生涯飲み続けなければなりません。

 

手術が必要になるの?

この疾患を根本的に治すには、僧帽弁が正常に働くようにオペをしなければなりません。

手術には僧帽弁を修復する弁膜修復術と、人工弁を移植する人工弁置換術があります。

人ならば手術が完治への早道と言われていますが、身体も心臓も小さい犬での難しい手術を避ける獣医がほとんどでした。

近年では技術や器具などが進歩しており、実施できる施設が増えています。

しかしながら一般的に普及が進まないのは、その費用が高額なことにもあります。

手術を実施している施設の料金を見てみると以下のとおりです。

  • 最初の検査:7~10万円
  • 手術費用:140~150万円
  • 入院費:1週間として30~40万円
  • 定期検診:1回5~6万円×4回=20~24万円

 

犬が僧帽弁閉鎖不全に!咳が止まらないので手術が必要?まとめ

老犬に多いとされている僧帽弁閉鎖不全症はかかってしまうと寿命を縮めることになります。

ふだんから愛犬の様子をしっかり見てあげることで早期発見が可能ですが、手術をせずに食事療法や薬物療法だけでは病状の進行を遅らせることしかできない病気です。

それでも早く発見する事で愛犬が苦しみを少しでも減らせる可能性はあります。

老犬の飼い主さんは、心音、脈拍、呼吸などのほか、散歩と運動の際の様子のチェックを毎日欠かさずに行って僧帽弁閉鎖不全症の早期発見に務めるようにしてあげてくださいね。

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