犬の放射線治療って費用はいくらか紹介!保険ってきくの?

犬 放射線 治療
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愛犬が「がん」と診断されたらどうしますか?

飼主さんにとっては大切なかけがえのない家族の一員と、少しでも長く一緒に過したいとと思われることでしょう。

ワンちゃんの平均寿命(最近では13歳)の延びとともに、がんは死因の1位となり10歳以上では50%ががんで命を落としています。

がんの治療には人と同じように外科手術による切除、抗がん剤による化学療法があるほか、犬でも放射線による治療があります

これらの中から飼主さんが選んであげなくてはならず、獣医さんからの説明をしっかり理解できるように、それぞれについて勉強しておきたいですよね。

しかし、おそらく多くの飼い主さんは、これらの中では特に犬の放射線治療には馴染みが薄いのではないでしょうか?

ここではその放射治療について方法や費用などのほかペット保険での扱いなどを紹介します。

 

放射線治療とは?

がん細胞に対して放射線を照射して叩く治療で、これだけ単独で施されることは少なく、ほかとの併用で組み合わせて実施されます。

がんのある部分に放射線をピンポイントに当てることができるかどうかが、獣医さんと放射線技師さんの腕の見せ所です。

放射線を当ててもワンちゃんが痛みや熱さを感じることはありませんが、動いてはいけませんので全身麻酔をかけることになります。

正常な細胞に当てないよう慎重に少しずつ照射しますので、1ヶ月ほどかかります。

また、どうしても周辺の正常な細胞にも多少当たってしまうために副作用が出ることがあります。

 

放射線治療の利点と欠点

ほかの療法と比べた利点と欠点がこちらです。

 

利点

  • 抗がん剤の化学療法よりも、がん細胞を殺す効果が大きい
  • 抗がん剤では全身に影響があるが、ピンポイントに照射するので影響は局所のみ
  • 周辺の正常組織への影響が少ない(手術では周辺の正常組織も切除される)
  • 手術ができないケースでも治療が可能

 

欠点

  • 多い場合には数十回の照射が必要で、そのたびに全身麻酔をかけなければならない
  • 少ないとはいえ、周辺の正常細胞に放射線による障害が起こる
  • 局所のがん細胞を叩く治療のため転移が多い場合には根治できないことがある
  • 実施できる施設が限られる(都市部に集中していて地方には少ない)

治療の回数はさまざまな要因で異なりますが、一般的には週5回で15~20回ほどとされています。

がん腫と転移などの状況によっては、3日程度で治療ができる設備を持つ施設もあります。

 

犬の「がん」で適用になるのはどれ?

施設や使用する機器によって違いがありますが、以下のがんに適用されます

  • 脳腫瘍(髄膜腫、神経膠腫、下垂体腫瘍、神経鞘腫ほか)
  • 頭頚部腫瘍(鼻腔腫瘍、口腔腫瘍、甲状腺癌、眼窩腫瘍、喉頭腫瘍ほか)
  • 胸腔の腫瘍(胸腺腫、心臓腫瘍、縦隔リンパ節転移、初期の肺転移ほか)
  • 腹腔の腫瘍(肝臓腫瘍、副腎腫瘍、胃・膵臓の腫瘍、腹腔内リンパ節転移ほか)
  • 骨盤腔の腫瘍(膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、転移性リンパ節ほか)
  • 骨の腫瘍(四肢の骨肉腫の患肢温存治療、椎体腫瘍ほか)

ただし、これらのがん種の全てが適用となるわけではありません。

また、放射線治療の中でもさまざまな療法があって、ここに挙げていないがん種を治療できるケースもあります。

また、放射線が効くがん種があり、その感受性がこの治療を行うかどうかの目安になります。

  • 感受性高:リンパ腫、肛門周囲腺腫、棘細胞性エナメル上皮腫
  • 感受性中:肥満細胞腫、血管周皮腫、腺癌、口腔内扁平上皮癌、膀胱ガン
  • 感受性低:線維肉腫、骨肉腫、悪性メラノーマ、平滑筋肉腫

 

放射線治療の目的とは?

がんの治療は完全に治すことだけが目的ではありません。

がんの進行度合やワンちゃんの体力などを総合的に判断して治療の目的を設定することになります。

以下の目的によって放射線の強さや実施回数、などが変わります。

 

根治治療

腫瘍を完全に取り除くために、生活の質が多少悪くなっても根絶を優先します。

条件は、発生した部位のみで転移がない、浸潤がんではない、切除しやすい部位であることなどです。

 

緩和治療

根治することができないので、生活の質を向上させることを優先します。

進行していて転移が見られる、またはこの先確実に転移が予想される、切除はしたが取り切れていない、ほかに重い基礎疾患があるなどが該当します。

ほかにも体力がかなり衰えていて開腹手術ができない場合も当てはまります。

また、単独なのか、あるいはほかの療法と併用なのかでも違ってきます。

単独やメインとして施されることはあまりなく、術後の補助療法として、あるいは化学療法や温熱療法との併用で実施されます。

また、ワンちゃんの痛みが酷い場合には、非オピオイド系の癌性疼痛薬による疼痛管理も行われます。

 

予想される副作用とは?

腫瘍の周辺の正常な細胞に照射が当たってしまうことで発生します。

 

急性障害

炎症がおもなもので、照射が始まってから2週間から3週間ごろから現れます。

  • 皮膚炎
  • 脱毛(不可逆性)
  • 毛色が変化
  • 火傷のようになる潰瘍

これらが現れた後、治療が終わる4週目ごろに一番酷い状態となって、治療が終わって2週間ほどで治まります。

 

遅発障害

3%ほどの確率で現れ、組織の壊死が主に見られ、治療が終わって3カ月から半年ほどで発症します。

  • 色素沈着
  • 組織の壊死
  • 永久脱毛
  • 難治性潰瘍

治療終了後、数年経ってから現れることもあるので注意が必要です。

 

費用はいくらかかるの?

がん治療は高額医療のイメージがありますが、ワンちゃんにおいても高い治療費となります。

施設や病状によって違ってきますが、一般的な金額として下記になります。

 

手術

術式や部位によって異なりますが、10~20万円ほどかかるとされています。

もし術後の回復がスムーズにいかなかったりすると、入院をすることになり1日5千~1万円が追加となります。

 

抗がん剤

1回の投薬で2~3万円ほどとして、それを月に2、3回として半年以上は続けるパターンが多いので、この例でいえば24~54万円は必要です。

 

放射線

施設で幅がありますが、1回につき1~5万円はかかるようです。

仮に5万円として月に20回照射すると最高で100万かかることになります。

 

保険は効かないの?

放射線治療が補償の対象にならないものが多いので、契約時にしっかり確認しておきましょう。

保険料が高くなりますが、何でもありのフルカバータイプのプランに加入しておくと安心ですね。

なお、最近インターネット上でよく見かけるのが、ワンちゃんの高額な手術費を用意できずにクラウドファンディングで治療費募集を出しているのをよく見かけるようになりました。

募集が成功して治療を受けて元気になったワンちゃんもいるようですが、確実ではありませんので、やはり保険をかけておくことをおすすめします。

 

がんになりやすい犬種はあるの?

まず全般に高齢のワンちゃんはなりやすいとされています。

冒頭にも書いたようにワンちゃんの寿命が延びているので、がんにかかるリスクは高くなっています。

日本では以下の種類でがんの発生が高かったとする報告があります。

  • ゴールデン・レトリーバー
  • ラブラドール・レトリーバー
  • シェットランド・シープドッグ

また、特定のがんになりやすい犬種も知られています。

  • バーニーズ・マウンテン・ドッグ:悪性組織球症
  • フラットコーテッド・レトリーバー:悪性組織球症
  • パグ:肥満細胞腫

これらを飼っていたら定期的に検査を受けた方が良いかもしれません。

 

犬の緩和ケアってなに?

がんが見つかったけど、あちこちに転移していて手遅れだったらどうしますか?

あるいは、転移をしていなくともワンちゃんが歳を取っていて体力がなく、手術が受けられないと言われたらどうしましょうか。

それでも無理にでもお腹を開いてがんを切り取ってもらいますか?

あるいは、がんに効くけど強い副作用も必ず出る抗がん剤や放射線治療を受けさせますか?

その結果がんは消えたけど、立ち上がることができなくなり寝たきりになっても?

緩和ケアとは、治療をあきらめるということではありません。

がんと共存しながらワンちゃんの生活の質を維持するための治療なのです。

がんによる激しい痛みを取り除いて、ふだん通りに生活できるようにする

生活の質を高めて、ご飯を食べることができる元気をとりもどす

元気が出てきたら、副作用が出ない程度の放射線療法や温熱療法でがんの進行を抑える

このようにして、おだやかに寿命を全うさせるのが緩和ケアなのです。

大切な家族であるワンちゃんを、病院のケージの中でなくお家で看取ってあげることができるのです。

 

犬の放射線治療って費用はいくらか紹介!保険ってきくの?まとめ

大切な家族の一員である愛犬ががんであることがわかったら、すぐに治してあげたいと思いますよね。

がん治療はとても高額な費用がかかりますが、まだまだ一緒に楽しく暮らして行くために、可能な限りの治療を受けさせてあげたいものです。

愛犬の身体への負担が少ない放射線療法は、手術や抗がん剤治療のサポートとして最適な治療です。

毎日通院することや費用がかかることなど飼い主さんの負担は大変なものがありますが、試すだけの価値がある治療法です。

放射線治療の費用を賄える犬の保険に入っておけば経済的な負担は軽減できることでしょう。

備えをして憂いを失くせば、後は愛犬にとって何が一番良い選択なのかを考えてあげるだけですね。

いつまでも家族で楽しく過ごすことができるように、後悔しない決断をしてあげてくださいね。

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