犬が口腔癌に!食事や手術費用、余命は?

犬 口腔癌
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たまに愛犬に歯みがきでもしてやろうと口を開けさせてふと見ると、口の中にデキモノがあったらどうしますか?

人でも口内炎や歯茎が腫れることはよくあるので、あまり気にしない飼い主さんも多いことと思います。

しかし、犬の口のデキモノには口腔癌などの悪性であるケースが多いとされているのです。

そのうちに消えるだろうと放置して、手遅れになってしまったとの話はたくさん聞かれますので、見つけたらまずはそれが何であるのかを調べてもらうことが愛犬を守ることに繋がるでしょう。

その中でも特に犬の口腔癌は発見が遅れると取り返しのつかないことになります。

ここでは犬の口腔癌についての解説と、発症してしまった時に飼い主さんがどうしたら良いかなどについてご紹介します。

 

犬の口の中にデキモノができた!どんなものがあるの?

口の中のデキモノは、大きく分けて2つの原因によるものが考えられます。

 

口内炎や歯周炎などの炎症

歯周炎や口内炎によって腫れて、それが潰瘍となることがあります。

このような炎症が慢性化することで歯の周囲の肉が硬く増殖して、しこりのようになるのです。

炎症が起きているのを放置したままにしておくと、痛みや違和感でご飯を食べなくなることがあるのに加えて、歯の根の方まで化膿が拡がって悪化してしまうこともあるので気をつけなくてはなりません。

 

口腔内の腫瘍

良性と悪性のものがありますが、口の中にできる腫瘍は悪性であることが多いと言われています。

腫瘍にはいくつか種類がありますが、悪性で転移するものは予後が悪いものが多く、命にかかわります。

 

犬の口にデキモノを見つけたらどうすればいいの?

まず、デキモノを見つけるためには愛犬の口の中を見てあげることが必要ですよね。

理想は毎日歯みがきをしてあげながら観察することですが、それが難しいとしても2、3日に1度くらいは口を開けさせて見てあげるだけでも良いでしょう。

そして、小さくとも発見したらできるだけ早く病院で検査をしてもらってください。

見た目だけでは腫瘍なのかどうか、あるいは良性か悪性は全くわかりません。

組織の生検などをしてもらい、判定してもらわなければなりません。

「小さいツブだから大丈夫だろう」などと自己判断しないで、検査を受けさせておかないと後で後悔することになりかねません。

 

犬の口腔癌にはどんなものがあるの?

くちびるや歯肉、あごの骨、扁桃腺などに発生する腫瘍の総称で、下記のような腫瘍が見られます。

 

エプリス

歯肉にできる良性の腫瘍で、犬ではよくできるとされています。

骨性と線維性と診断されるものが多く、どちらも切除すれば治りますが、棘細胞性(きょくさいぼうせい)と呼ばれるものは、その部分の骨にまで達することがあるので骨も切除しなければなりません。

 

悪性メラノーマ

黒色腫とも呼ばれるメラノーマは、日焼けなどに関係するメラニンを作る細胞が腫瘍となってしまうものです。

口の粘膜に発生することが知られていて、とても進行が早いために見つけた時にはリンパ節、肺などに転移してしまっているケースが多く、予後が悪く長期間の生存率がとても低い腫瘍です。

下記にあるような犬種(特に小型の犬)の老犬に多くできると言われています。

  • プードル
  • ダックスフンド
  • スコティッシュテリア
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ラブラドール・レトリーバー

 

扁平上皮癌

口の中の粘膜のほか、お腹の皮膚、陰部の粘膜などにできる悪性の腫瘍です。

皮膚などにできると皮膚病などと間違われることがあります。

歯肉によく発生して、特に舌の付け根や扁桃腺にできたものは浸潤する速度が速く、あっという間に骨などにも拡がってしまいます。

さらに、肺やリンパ節への転移はかなり高い確率で起こると言われています。

 

線維肉腫

上記2つの腫瘍と比べて若い犬に発生する腫瘍で、その場合は進行の速度が速いとされています。

ゴールデン・レトリーバーなどの大型犬の上あごに発生することが多い腫瘍です。

転移よりは発生した部位の肉や骨を深く侵すためにそれを抑えることが重要です。

 

犬の口腔癌ではどんな症状が出るの?

癌ができた口内の場所や腫瘍の種類などによって違いがありますが、おおよそ次のような症状が見られます。

  • よだれが多くなり垂らすようになる
  • よだれに血が混ざっている
  • ご飯を食べづらそうにして時間がかかるようになる
  • 口臭がきつくなる
  • 口を開けようとすると痛がる
  • 体重が減ってくる
  • 鼻血を出すことが多くなる
  • 顔の形が変形してくる
  • 眼球が突出してくる

このような様子が見られたら手遅れにならないうちに病院へ連れていき、診察と検査を受けさせてあげてください。

ちゅうちょしていると腫瘍はあっという間に大きくなり、転移をしてしまいます。

 

犬が口腔癌になった時の食事はどうしたらいいの?

愛犬が癌になったら、それと闘うための体力や免疫力をつけなければなりません。

手術はもちろん、抗がん剤や放射線での療法をも、体力がなければ受けることができないのです。

そのためには毎日の食事で必要な栄養をしっかり摂らせることがとても大切です。

癌の際には「癌性悪液質」と言って、身体を保つための恒常性が全ておかしくなってしまい、食べているのにやせてしまうことがあります。

飼い主さんは、癌と闘う愛犬の栄養管理をしっかりと行ってサポートしてあげてくださいね。

 

犬が口腔癌になった時に必要な栄養素

体力を付けなくてはならないと思えば、どのような栄養素もたくさん摂った方が良いように思いますよね。

しかし、癌細胞は宿主である愛犬が摂った栄養素を利用して増殖するため、炭水化物やタンパク質は摂り過ぎると、むしろ癌細胞が活発になってしまうことになることもあるので注意しましょう。

そのために、一般的には「炭水化物(ブドウ糖など)はやや控えめにして、良質なタンパク質(とくにアルギニン、グルタミン、グリシンなどのアミノ酸を含むもの)を適度に摂り、オメガ3脂肪酸、リノール酸、リノレン酸、EPA、DHAなどの脂質を積極的に摂るのが良い」とされています。

ただし、ほかの疾病を併発している時はこの限りではありません。

かかりつけの獣医さんと相談しながら食事のバランスを考えてあげてください。

 

口腔癌になったら食欲が落ちた

どんなに栄養を考えて、どんなに美味しいご飯を用意しても具合が悪ければ食べてはもらえません。

癌になると悪液質による不快感や痛みによって食用が落ちてしまう犬もいます。

愛犬の食が進むように以下のことを試してみてください。

 

不快感や痛みをなくしてあげる

獣医さんと状態をしっかり相談した上で、不快感を減らす薬を処方してもらうほか、痛みの管理をしてもらいましょう。

 

食べたくなるような工夫をする

「美味しそうだな」と思えるように食事の温度や香りに気を使うことや、適度に身体を動かすようにしてあげるなど、飼い主さんがしてあげられる工夫があります。

  • 食事を温めて香りを立てる
  • 出し汁などで風味を付ける
  • 愛犬が好きなトッピングを付ける
  • 無理のない範囲で、散歩などで身体を動かす
  • 嬉しく食べられるように、ほめたりして明るく声をかける
  • 食べやすくなるように皿の高さを変えてみたり、流動食風にしてみる

これらのほかにもまだあると思いますので、考えられることを試してあげてくださいね。

 

食欲増進剤を試してみる

さまざまな工夫をしてみたけどやっぱり食べないようであれば、食欲増進剤を試すのも手段です。

副作用が少ない良い薬がありますので、獣医さんとよく相談してみてください。

 

犬の口腔癌の手術費用はいくらくらいなの?

切除、摘出する手術の費用は施設によって違うのと、腫瘍の部位や転移などによってかなりの幅があります。

ネット上での情報をまとめて、転移のないメラノーマを取る手術の場合をご紹介します。

  • 検査料(血液、X線検査ほか:2~3万円)
  • 手術料:10~15万円
  • 入院費(通常は日帰り、容体により入院):1日1~2万円

これらのほかに退院後の通院費(診察料、検査料、薬代など)がかかります。

 

犬の口腔癌で起こる痛みの管理

 

癌でおこる痛みはかなり強いとされていて、がまん強いワンちゃんでも苦しみことがあります。

痛みが強すぎるとご飯を食べることもできなくなって、ますます身体が弱る悪循環となってしまうのです。

人の癌でも最近は痛みをがまんしないように管理をすることが重視されるようになりました。

愛犬がご飯を食べない、元気がないなど、いつもと違う様子を見せたら痛みのサインかもしれません。

身体をさすってあげる、優しく声をかけてあげるなどしても苦しそうにしているなら、獣医さんと相談して鎮痛薬で痛みを取ってあげることを考えてみてはどうでしょうか。

 

犬が口腔癌に!食事や手術費用、余命は?まとめ

口腔癌に限らず愛犬の悪性腫瘍は予防が難しい疾患です。

犬の口腔癌は口の中であるために発見が遅れがちになることが多いとされています。

飼い主さんができることとして、できれば毎日口の中をチェックしてあげることで早期発見に結び付くので大切です。

そして、デキモノを見つけた時には自己判断をせずに急いで動物病院で検査してもらうことが肝心です。

それでも発見が遅れて獣医さんから余命を告げられてしまうことはあるでしょう。

愛犬が高齢ならば、飼い主さんは辛い決断をしなければならないかもしれません。

手術も抗癌剤による化学療法も放射線療法も体力が落ちている老犬には難しいこともあるでしょう。

人の末期癌ではきつい治療を避けて癌性疼痛だけを取り除く「疼痛緩和ケア」の考え方が広まっています。

老犬の末期癌では痛みや苦しみを取り除いてあげて安らかに旅立たせることも必要なのかもしれません。

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