犬の抗生物質の種類は何があるの?副作用や飲ませ方などを紹介

犬 抗生物質
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ワンちゃんに薬を飲ませる機会はよくあると思いますが、指示どおりに正しく飲ませていますか?

具合が悪かったけど飲ませていたら元気になったので、治ったと判断して勝手に止めていませんでしょうか?

また、副作用が心配だからと量を減らしてしまう、あるいはその逆に効きが悪いと指示よりたくさん与えたりしてしまっていませんでしょうか?

犬に抗生物質を与える際には獣医さんの指示を守ることが大事なのです。

犬に与えている抗生物質を素人判断で減らす、増やす、中止するのは良くないことなのです。

ここではそれらの種類やその副作用、正しい飲ませ方などを紹介します。

 

犬の抗生物質の種類は?青いパセトシンやオレンジ色の錠剤など

これらは自然界に普通に存在している微生物、自分にとって都合の悪い細菌を寄せ付けないために出す物質です。

青カビから発見されたペニシリンが世界最初で、その後は世界中の土の中などにいる微生物から、下記のさまざまな成分が発見されました。

 

β-ラクタム系

ペニシリンなどβラクタム環と呼ばれる化学構造を持っているのが特徴で、細菌の細胞壁合成を阻害することで増殖を抑えるため毒性が低く安全性が高いとされています。

ワンちゃん用のβ-ラクタム系薬剤には下記のものがあります。

  • ペニシリン系
  • セファロスポリン(セフェム)系

ペニシリン系は第Ⅰ世代から第Ⅳ世代まで、セフェム系には第Ⅰ世代から第Ⅲ世代まであって、それぞれ有効とされる菌種が違っています。

ワンちゃんによく使われる青い錠剤パセトシンはアモキシリンと呼ばれる成分で、ペニシリン系です。

ほかにも獣医さんから処方されるものとして、オレンジ色の錠剤があります。

これはセフェム系のセファレキシンで、どちらもブドウ球菌などに良く効きます。

 

アミノグリコシド(アミノ配糖体)系

強力で、β-ラクタム系が効きにくい緑膿菌などにも効果が高いです。

作用が強いために毒性も強く、慎重に処方する必要があります。

 

テトラサイクリン系

幅広い細菌に効果があって、毒性も比較的少ないとされています。

リケッチアやマイコプラズマ、一部のウィルスにも効くものがあります。

 

マクロライド系

特に呼吸器の感染症に使われる薬剤で、肺炎球菌やマイコプラズマなどに効きます。

 

犬に投与する抗生物質のスペクトラムとは?

スペクトラムとは、それぞれの成分がどの菌に感受性があるか(効くか)を示したもので、表として表されています。

患部から膿や痰、尿、などを採って菌を調べ、スペクトラム表と照らし合わせて効果のある成分が選ばれます。

そのようにして、薬が効かなくなる耐性菌が現れるのを防ぐのです。

そして、菌の種類の分類にはグラム染色と呼ばれる方法があります。

細胞壁を染める試験で、これが陽性か陰性か、そして形状が球形か棹形で菌は4つに分類されています。

  • グラム陽性球菌:ぶどう球菌・肺炎球菌・連鎖球菌・腸球菌ほか
  • グラム陽性桿菌:破傷風菌・炭疽菌・ジフテリア菌ほか
  • グラム陰性球菌:淋菌・髄膜炎菌ほか
  • グラム陰性桿菌:大腸菌・インフルエンザ菌・クレブシェラ・緑膿菌ほか

なお、これらに含まれないものとして、マイコプラズマ、クラミジア、スピロヘータなどがあります。

以下は成分ごとの感受性を示したスペクトラムです。

  • ペニシリン系:グラム陽性球菌(第Ⅳ世代にはグラム陰性桿菌に効くものがある)
  • セフェム系・第Ⅰ世代:グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌に有効
  • セフェム系第・Ⅱ世代:グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌(第Ⅰ世代が効かないもの含む)
  • セフェム系・第Ⅲ世代:グラム陽性球菌(ブドウ球菌除く)、グラム陽性桿菌(一部は緑膿菌を除く)
  • アミノグリコシド系:グラム陽性球菌(ブドウ球菌のみ)、グラム陰性桿菌
  • テトラサイクリン系:グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌のうち大腸菌、インフルエンザ菌
  • マクロライド系:グラム陽性球菌、マイコプラズマ、クラミジア

それぞれ成分によって違いがあり、これらを基に原因菌によって使い分けられています。

 

抗生物質が必要な犬の疾患とは?皮膚感染症や歯周病など

主に下記の疾患で処方されることが多く、原因となっている細菌を調べた後にスペクトラムを参考にして効くものが選ばれて投与されます。

  • 外傷による細菌感染症
  • 皮膚感染症:膿皮症など
  • 呼吸器感染症:肺炎、ケンネルコフなど
  • 腹膜炎
  • 腎炎:腎盂腎炎など
  • 膀胱炎
  • 眼病:活膜炎、眼瞼炎、麦粒腫など
  • 歯肉炎・歯周病
  • 一部のウィルスによる感染症:パルボウィルスなど

 

これらのほかにもたくさんの疾病に使われています。

効きが悪いケースでは、作用の機序が違うものに変更されます。

化学合成の抗菌剤などに変更されることが多いようです。

 

犬の抗生物質の副作用とは?嘔吐・眠気・便秘など

どんな薬でも副作用は必ずありますが、重篤なものは少なく、その中では胃腸障害が多いとされています。

 

胃腸障害

比較的軽いものが多いとされ、以下のものが現れます。

  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 消化不良
  • 軟便
  • 下痢
  • 便秘

 

皮膚障害

こちらも軽い症状のものが見られることがあります。

  • 痒み
  • 湿疹
  • 蕁麻疹

 

肝障害

薬剤が肝臓で代謝されて排泄される場合に肝機能値異常などが見られることがあり、重症の場合には黄疸が出ることがあります。

 

腎障害

薬剤が腎排泄の場合に軽い腎障害が起こる場合があります。

 

心・呼吸器障害

  • 動悸
  • 息切れ
  • 低血圧
  • 呼吸困難
  • 喘息

 

精神障害・神経障害

  • ふらつき
  • めまい
  • ねむけ
  • 夜間せん妄

 

血液障害

  • 貧血
  • 溶血
  • 顆粒球減少
  • 血症板減少

これらのうち、心臓や血液は重篤になりやすいので気をつけましょう。

またこれらのほかに、症状としてアナフィラキシー・ショックが起きると短時間に命を落とすことがあります。

 

犬に抗生物質を飲ませる期間は?長く効く注射があるってホント!?

内服薬であれば、7日間というのが標準的ですが、状態や疾病によってはそれ以下だったり、もっと長くなることがあります。

慢性の疾病などでは1ヶ月ほども投与することがあって、飲み方だけでなく副作用などの管理が大切になります。

また、細菌では薬を飲むことを嫌がるワンちゃんのために、2週間効果が持続するコンベニアという名のセフェム系の注射剤が販売されています。

使用できる疾病が増えているので、ワンちゃんが薬を飲んでくれず困っているなら、かかりつけの獣医さんに相談してみると良いでしょう。

 

犬の抗生物質で注意することは?市販薬は?人間用の薬でもいいの?

どんな薬でも獣医さんの指示どおりに与えることが大切です。

 

市販薬

ワンコ用などとして販売されているものであれば問題はありませんが、与え方と与える量を指示どおりにしっかり守りましょう。

また、ほかに持病があって別に薬を飲ませている場合は、いきなり与えず獣医さんに確認してからにください。

 

家にある人間用の薬

獣医さんに相談せずに、家にある人間用の薬を与えてはいけません。

量が多過ぎると酷い副作用が起こることも考えられるので、絶対に飲ませないようにしましょう。

 

指示された用法・用量・期間を必ず守る

治ったとして途中で勝手に中止すると、生き残った原因菌が再び増殖して再発することがあります。

また、効きが悪いからと量を増やすと、強い副作用が出ることがあります。

獣医さんに指示された与え方と与える量、そして与える期間を守って、少しでも異変が現れたら相談しましょう。

 

抗生物質の犬への飲ませ方

あまり神経質ではないワンちゃんであれば、ご飯やオヤツに混ぜて与えてください。

茹でたイモやカボチャをつぶしたものや、パンやチーズに包んで与えると良いでしょう。

この時のポイントは以下のとおりです。

  • ワンちゃんが飲み込める大きさにする(大きい錠剤なら割る)
  • 食べものの量を少なめにする
  • 最初は入れずに少し食べさせてから、薬入りのものを与える
  • いつものフードに混ぜずに、違うものを用意する

最初から薬入りにした際に違和感をあると、次から食べなくなってしまいます。

また、いつものフードに混ぜて気づかれて嫌がるようなことがあると、そのフードを食べなくなってしまうことがあります。

入れるのは別のフードやオヤツにしてくださいね。

 

口を開けて直接飲ませる

ワンちゃんとのスキンシップが取れているなら、直接飲ませても良いですね。

以下のやり方で飲ませてください。

  1. 上あごの犬歯の辺りを持ち、口を開かせる
  2. できるだけ口の奥に入れる
  3. 口を閉じて鼻先を上に向けて喉をさすって飲み込ませる
  4. シリンジやスポイトで水を飲ませて薬を胃に落とす

これらのほかに甘い味がするオブラートで包むのも良いですし、服薬ゼリーに混ぜてオヤツのように与えてあげるのも良いですね。

 

犬の抗生物質の種類には何があるの?副作用や飲ませ方などを紹介・まとめ

犬への抗生物質の投薬を慎重に考える獣医さんが増えています。

抗生物質は感染症に手軽に投与できる反面、安易な処方によって効かなくなる耐性菌を産み出してしまいました。

犬の感染症に抗生物質を処方するには、原因となっている細菌をきちんと調べて、それに効く薬剤を選ぶことが必要です。

そして、大切なのはそのように選ばれた抗生物質を獣医さんの指示どおりに投与することで、勝手に中止するのは止めましょう。

犬に抗生物質を与える際は、用法や用量、投与期間をしっかり守ることが大切です。

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