犬が扁平上皮癌になった!転移は?完治は?余命と安楽死について

犬 扁平上皮癌
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愛犬の口の中や皮膚にできものがありませんか?

そのままにしておいて拡がっていくようなら、そのできものは癌かもしれません。

犬の扁平上皮癌は、できものだけでなく潰瘍やただれとして現れるケースもあり、10歳以上の老犬に多く見られるとされています。

そして犬の扁平上皮癌は皮膚や粘膜に拡がる悪性腫瘍です。

早く発見すれば手術で取り去ることができて長生きできる可能性がありますが、手遅れになると余命の短い癌です。

ここでは原因や症状、治療法や余命などについて紹介します。

 

犬の扁平上皮癌は皮膚や粘膜に多く、転移は遅い

皮膚や粘膜などにある扁平上皮と呼ばれる組織にできる癌で、10歳以上のワンちゃんにできやすいとされています。

カリフラワーのようなしこりや潰瘍、びらんのように境界線がハッキリしないタイプもあります。

全般に転移は遅いとされていますが、一部の部位では早いものもあります。

ワンちゃんの扁平上皮癌は口腔粘膜や皮膚、爪の周りなどで多く発生するとされていて、部位としては以下が多いとされています。

  • 腹部の皮膚
  • 鼠径部(後ろ足の付け根)の皮膚
  • 肛門
  • 口腔内の粘膜
  • 扁桃
  • 鼻平面(鼻の穴のある面)
  • 爪下(足の指)

被毛の色が薄いワンちゃんに多いとされていることから、原因には紫外線の影響があると考えられています。

そのほかには、いつもタバコの煙にさらされているような環境や、化学薬品などの刺激なども誘因と言われていますが原因はよくわかっていません。

 

犬の扁平上皮癌の症状とは?

できものが出る部位によってさまざまな症状が見られます。

 

腹部や鼠径部の皮膚

これらの色素が少なく薄い部位の皮膚にできることが多いとされていて、さまざまな形で現れます。

ワンちゃんが気にして舐めてしまうと癌の表面に傷が付いてしまうことがあり、皮膚の常在菌によって細菌感染がおこることがあります。

その場合には舐め過ぎよるただれができるほか、感染症によっていつも膿でジクジクしているようになります。

どの種類にも起こりますが、できやすいワンちゃんとしては以下が挙げられています。

  • ダルメシアン
  • ビーグル
  • ブルテリア
  • ウェストハイランド・ホワイト・テリア
  • スコティッシュ・テリア
  • ウィペット

 

口腔

口の中にできる腫瘍としては多く見られて、歯肉にできます。

あごの骨に拡がるのが早いほか、扁平上皮癌の中では転移が早く、特に舌根やノドの扁桃にできたものは転移する率が高いとされています。

 

ワンちゃんの顔を正面から見て、鼻の穴が見える面は鼻平面と呼ばれています。

ここにできるものは潰瘍化しやすく、出血したりしてクシャミが止まらなくなることもあります。

ここの部位の中の組織に拡がって骨まで到達するとされています。

同居家族のタバコの煙が誘因となっているとの見方があります。

 

耳道にできやすいとされ、初期では外耳炎や中耳炎などと似た症状が見られます。

外耳道の外にできたものでなければ発見しづらく手遅れになることがあります。

 

足(爪下や指)

ワンちゃんの四肢に現れる場合は、指や爪下にできやすいとされていて、ここにできるものも骨に浸透しやすいとされています。

特に人間で言えば中指にあたる、第三指という4本の指の内側から2番目の指の骨が溶けてしまっているワンちゃんが多いとされています。

また、特にこの爪下できやすいとして、

  • スタンダード・プードル
  • ラブラドール・レトリーバー
  • フラット・コーテッド・レトリーバー
  • ロットワイラー
  • ダックスフント

これらの被毛が黒いワンちゃんたちが挙げられています。

犬の扁平上皮癌のステージ分類とは?

臨床ステージとして、人間と同じようにTMN分類が使われています。

  • T:腫瘍の大きさ(Tis・T1~3の4段階でT3は腫瘍の大きさ4cm以上)
  • N:リンパ節転移(N0はなし、拡がり具合でN1~3、aはリンパ節に腫瘍あり、bはなし)
  • M:遠隔転移があるかないか(M0はなし、M1はあり)

進行癌とされているのステージⅢ以降です。

  • ステージⅢ:T3・N(0~2a)・M0
  • ステージⅣ:T関係なし・N1b、2b、3・M0、またはT、N関係なしでM0

いずれにしても遠隔転移があればⅣとなり、進行癌とされます。

 

犬の扁平上皮癌は手術で完治するの?

外科的に切除することが第一の治療法となります。

扁桃など転移が早い部位でなければ、しっかり切除することができれば長い生存期間を得ることが可能です。

鼻平面などにできて広く切除することができないケースでは化学療法や放射線療法を併用します。

癌を切除する手術には大きくわけて2種類あります。

 

根治手術

癌のある部位を含めて広く切り取る方法で、必ず根治できて完治するということではなく、根治できる可能性があるとの意味です。

 

姑息手術

別の名を緩和手術とも呼ばれていて、癌の広く浸潤していて取り切れないなどで完全に取り切れないケースをこのように呼んでいます。

ひとまず原発巣をとるので一時的に症状が改善しますが、やがて再発する可能性が高いとされています。

そのため、抗がん剤の併用や放射線療法などを併用することが多い術式です。

 

犬の扁平上皮癌が進行した際の化学療法とは?

進行癌や麻酔が無理で手術ができないワンちゃんに施されます。

現在、よく使われている抗がん剤としてはつぎの分子標的薬がよく使われています。

  • イマチニブ
  • トセラニブ

この分子標的薬とは、癌細胞の分裂に深く関わる分子をターゲットとしてブロックするため、これまでの抗がん剤に比べて副作用が少ないと言われています。

トセラニブについてはワンちゃんの扁平上皮癌で良好な効果が認められたとの報告があります。

このほかに化学療法で使われる薬剤に以下があります。

  • ルペオール(注射):がん細胞の遺伝子に作用して、炎症や疼痛を抑える
  • ビタミンA(注射):扁平上皮にできた未熟な癌細胞の角化を進めて剥奪させる
  • ピロキシカム(内服):免疫を阻害するプロスタグランディンE2を抑制して免疫を高める
  • セラミド(外用):癌細胞を死滅させる

この中で、ピロキシカムはNSAIDsと呼ばれる非ステロイド消炎鎮痛薬です。

免疫を抑制して炎症を起こすプロスタグランディンE2と抑制して免疫を活性化する報告があり、抗がん剤として使われています。

また、セラミドは化粧品などに使われる肌のうるおいを保つ成分です。

近年になって、癌細胞を死滅させるアポトーシス作用を持つことがわかって、塗り薬として使われ始めています。

皮膚表面だけでなく、口の中に塗ることも可能で、手軽な抗がん剤として期待されています。

 

犬の扁平上皮癌での放射線療法とは?

この癌は抗がん剤や放射線にあまり反応しないとされていて、その効果にはあまり期待することができないとされています。

しかし、手術が難しい高齢のワンちゃんや持病のあるワンちゃんでは、これらの治療をメインにせざるを得ません。

ただ、放射線の施術にはワンちゃんが動かないように基本的に全身麻酔下で行われます。

さらに、病状によっては毎日照射することもあり、当然その期間は入院しなければなりません。

しかも施術できる施設は少なく、必ずしも近所にあるとは限りません。

 

犬の扁平上皮癌を治す費用はいくらかかる?

施設による違いがあり、摘出手術では数万円で済むケースから数十万になるケースまでさまざまです。

ただし完治を期待できるのは、早期の段階で癌を完全に取り切れた場合のみです。

この癌では完全に取り切ることが難しく、再発が多いためです。

そして、放射線療法の費用は1回あたり1~5万円で平均20回として、20~100万円と高額になります。

さらに毎日照射するケースや、施設が自宅から遠い場合には入院が必要になりますので、そのトータル費用はかなりの高額になるでしょう。

さらに何度も麻酔をかけることになります。

なお、抗がん剤治療も金額はまちまちで、1回2~3万円とされていて、長期だと高額です。

 

犬の扁平上皮癌の余命とは?疼痛緩和と安楽死について

例えば口腔内に発生したケースでの余命は以下のような報告があります。

  • 顎骨切除術を施術:中央生存期間として9~18カ月
  • 摘出手術の単独治療:術後1年生存率85%
  • 放射線療法単独:中央生存期間9~12カ月
  • 化学療法(BRM療法):ピロキシカム単独で疼痛緩和効果あり

なお扁桃や舌根に発生したケースでは転移が多く、予後不良との報告があります。

 

疼痛緩和ケアについて

ワンちゃんが高齢の場合では、身体に負担がかかる治療を選択しないで、疼痛だけを取り除いてあげる緩和療法も選択肢のひとつです。

モルヒネなどの麻薬やフェンタニルなどオピオイドなどで癌性疼痛をコントロールして、ワンちゃんのQOL(生活の質)を向上させます。

なお、麻薬やオピオイドは免許を持った獣医さんしか処方してもらえません。

 

安楽死について

治療を施さないケースでは、緩和ケアのほかにもうひとつの選択肢があります。

次のようなケースでは、獣医さんから安楽死を勧められることがあります。

  • 施す術がなく、もはや治る見込みがなく回復も見込めない
  • ワンちゃんの苦しみが大きく続く
  • ワンちゃんのQOLの低下が著しく、向上する見込みがない

安楽死は、獣医さんから苦しまない薬剤を処方してもらい旅立たせます。

 

犬に扁平上皮癌ができた!転移は?完治は?余命と安楽死について・まとめ

犬の扁平上皮癌は強いて言えば予後不良な悪性腫瘍です。

なので、愛犬の命を守るには扁平上皮癌を早期に発見してあげることが大切です。

ふだんから口腔内を歯磨きしながらチェックすることや、お腹や鼠径部皮膚をマッサージがてら触ってしこりがないかを確認することをおすすめします。

それによって愛犬が扁平上皮癌を発症しても早期発見することができるでしょう。

悲しい別れを少しでも先にするために、愛犬への日ごろのケアをしっかりしてあげてくださいね。

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