犬が天疱瘡になった!治療薬は?人にうつる?

天疱瘡 犬
Pocket

自分の身体の組織を抗原と間違えてしまい、攻撃してしまい炎症が起きてしまうものを自己免疫性疾患といいます。

犬の天疱瘡(てんぽうそう)は自己免疫性疾患のひとつで、よく見られる疾患ですが、皮膚病全体から見るとそれほど多い疾患ではないとされています。

痒みはすくないとされていて、人間やほかの犬や動物にうつることはありません。

膿疱(膿が入った湿疹)やカサブタが顔面だけでなく全身に現れることがあり、膿疱は簡単に破れてしまい、ただれてしまうものもあれば次々にカサブタになったりもします。

犬が天疱瘡にかかった際には免疫抑制剤の内服薬が使われます。

命にかかわる疾患ではありませんが、一生投薬が必要になるケースもあります。

 

どのような症状があるの?

冒頭に記しましたが、自分の免疫が自分の細胞を異物と判断して攻撃してしまうことで発症する自己免疫性の皮膚炎です。

発症する部位などによって4つに分類されています。

 

落葉状天疱瘡(らくようせいてんぽうそう)

中年齢のワンちゃんに多いとされていて、顔面の鼻筋やまぶた、耳たぶなどに赤みが見られるほか、膿疱やカサブタが形成されます。

また、肉球の角質の増殖が進み分厚くなってガサガサになるワンちゃんもいます。

初期では顔面に現れますが、全身に広がることもあり、その際にはお腹やほかの部位にも膿疱やカサブタができることになります。

痒みは少ないとされていますが、まれに全身が痒くなることがあるようです。

膿疱は簡単に破れてしまうため、患部はいつもジクジクでただれていてカサブタができやすく、膿皮症が起こることがあります。

紫外線を浴びることで悪化することがあります。

ワンちゃんの場合には最も多いとされていて、これらのワンちゃんがかかりやすいとされています。

  • 秋田犬
  • ドーベルマン
  • ダックスフンド

なお、下記の疾患は似た症状が現れるとされているので、獣医さんに診断をしてもらいましょう。

  • ブドウ球菌性膿皮症
  • ニキビダニ症
  • 皮膚糸状菌症
  • 表在性壊死性皮膚炎
  • 亜鉛反応性皮膚症
  • 皮膚リンパ肉腫
  • 犬ジステンバー

 

尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)

人間では多い皮膚炎ですが、ワンちゃんではさほど多くはないとされています。

この疾患では皮膚に発症するだけでなく、以下の部位の粘膜やその境目で症状が現れるのが特徴です。

  • 口腔内
  • 口唇
  • 歯ぐき
  • まぶた
  • 肛門
  • 包皮
  • 外陰部の周り

このような部位に下記のものが現れ、口腔内に発症すると、よだれを大量に垂らすほか、口臭がきつくなることもあります。

  • 水疱
  • 広い範囲のただれ
  • 潰瘍

またこれらのほかには元気や食欲がなくなり発熱することがあります。

 

紅斑性天疱瘡(こうはんせいてんぽうそう)

紅斑と呼ばれる赤い発疹が見られ、落葉性天疱瘡が治りかけて変化した状態と考えられていて、病変部位は頭部と首周りに限定されています。

 

増殖性天疱瘡(ぞうしょくせいてんぽうそう)

尋常性天疱瘡の一種で、最初に小さな水疱から始まって、やがて膿疱が現われます。

前足のわきの下や後ろ足の付け根など、被毛同士がすれる部位にびらんが現れて、その表面が乳頭のように増殖します。

びらんが隆起するノイマン型と小さな膿疱がたくさんできるアロポー型があって、ノイマン型よりアロポー型は予後が良いとされています。

なお、これらのほかに最近では、悪性腫瘍に伴って発症する腫瘍性天疱瘡が新たに分類されています。

 

発症する原因はなに?

それぞれ皮膚や粘膜の細胞をつなぐデスモゾーム結合に存在するタンパク質を異物と認識してしまうことで、抗体が作られて攻撃することで起こる免疫の異常が誘因です。

  • 落葉状天疱瘡:角質細胞をつなぐデスモコリン1が抗原として認識されます
  • 尋常性天保性:皮膚深くにある表皮の細胞をつなぐデスモグレイン3が抗原と認識されます

1年の内では夏季に発症することが多く、また夏季に悪化することが知られています。

発症の誘因として、紫外線による刺激、遺伝的要因、アレルギーの発症、細菌やウィルスによる感染などが考えられていますが、はっきりとはわかっていません。

 

天疱瘡の治療とは?

正常な組織への攻撃を抑えるために、免疫を抑制する薬剤が投与されます。

 

ステロイド剤(グルココルチコイド:糖質コルチコイド)

副腎皮質ホルモンとして分泌されて、体内ではさまざまな働きがありますが、薬剤として抗炎症作用や免疫抑制作用を発揮します。

  • コルチゾール
  • コルチコステロン
  • コルチゾン

この疾患では長期間投与されることになり、一生飲み続けなければならないケースもあります。

炎症を抑えて過剰な免疫もしっかり抑制するのでとても効果がある薬なのですが、長く投与を続けることで下記の副作用が発現することも知られています。

  • 多飲多尿
  • 多食(過食による肥満)
  • お腹がはる(腹部膨満)
  • 肝臓が大きくなる(肝機能値の異常ALT・AST・ALP・GPTそれぞれ上昇)
  • 皮膚に症状がでる(脱毛、皮膚が薄くなる、感染しやすくなる、石灰沈着)
  • ハアハアと息遣いがあらくなる(パンティング)
  • 筋肉が衰える
  • 感染しやすくなる(免疫を抑えることによる易感染性状態)
  • 糖尿病(インスリンの効果が弱まる)

このような副作用があるために、高用量のまままんぜんと投与し続けるのは危険と言われています。

病状を見ながら獣医さんから、だんだん減らすように細かく指示を出してもらえますので、必ずそれに従って服薬を続けるようにしてくださいね。

 

免疫抑制剤

ステロイド剤を投与してもなかなか改善しないワンちゃんには違う作用機序の免疫抑制剤の併用か、切り替えが検討されます。

 

アザチオプリン(イムラン)

ワンちゃんに処方される際はステロイドとの併用で使われることが多い免疫抑制剤です。

処方を始めて効果が確認されたら、それをを少しずつ減らしていきます。

以下の副作用がありますので、定期的に血液の検査をすることになります。

  • 骨髄抑制
  • 胃腸障害
  • 膵炎
  • 肝毒性

 

シクロスポリン

強い免疫抑制作用のある薬です。

この薬は液性免疫を抑制しませんので、ワンちゃんにワクチンを接種した際の反応に影響しない利点があります。

副作用にはこれらがあります。

  • 胃腸障害
  • 感染
  • 歯肉過形成
  • 乳頭腫
  • 多毛

これらのほかに一般的ではありませんが、以下の薬剤が使われることがあります。

  • シクロフォスファミド
  • 免疫グロブリン

 

投薬治療はいつまで続けるの?

この疾患は治ったと思っても、また再発をすることが多いため、ワンちゃんには薬を生涯飲ませ続けることになります。

治療を開始して効果が出るまでに6週間から7週間ほどかかります。

症状が治まることを寛解(かんかい)と言いますが、そのようになるまで9カ月以上かかるとされています。

とにかく寛解したとしても、いつまた免疫が活発になって再発するかわかりません。

かかりつけの獣医さんと一緒に、定期的にチェックしながら一生付き合う覚悟で治してあげてくださいね。

 

漢方薬で治療ができるってホント?

漢方薬について勉強をされている獣医さんがおられます。

漢方薬は西洋医学の薬と比べて即効性はありませんが、じっくり時間をかけてワンちゃんの体質を変えていく効果があるとされています。

こうした漢方薬を併用することで、ほかの薬の量を減らすことができるかもしれません。

最近では、ワンちゃんに合わせて調合された漢方薬が手に入るようになってきました。

以下のような事情でお悩みの飼い主さんは、一度漢方を扱っている獣医さんの診察を受けてみてはいかがでしょうか。

  • ずっと免疫抑制剤で治療してきたが、効果が薄くなっているけどこれ以上増やしたくない
  • 天疱瘡以外に基礎疾患があって免疫抑制剤をずっと飲ませるのが不安
  • 高齢のワンちゃんで免疫抑制剤の副作用に耐えられないかもしれない
  • 何度も再発を繰り返している

ネット通販などで購入できる漢方薬もありますが、ほかの薬との相性などもありますので、飲ませる前に獣医さんに相談するようにしましょう。

 

皮膚に良いサプリメントを与えても大丈夫?

ワンちゃんの皮膚に良いとされる成分が含まれているサプリメントは、たくさんの種類が売られています。

ドッグフードでも手作りご飯でも混ぜたりして食べさせることができるのが良いですね。

サポート的に利用するのであれば、いろいろ試してみても良いでしょう。

また、オヤツとして売られているものもあって、ワンちゃんが喜んで食べてくれることでしょう。

ただし、これらのサプリやオヤツなどに入っている成分の中には他の薬との相性がありますから、かかりつけの獣医さんに見せて確認してから与えるようにしてくださいね。

 

犬が天疱瘡になった!治療薬は?人にうつる?まとめ

天疱瘡は人間もかかる皮膚疾患ですが、人間と犬との間でうつることはありません。

しかし、人間の症状よりも犬の場合は被毛が抜けて悲惨な状態になる疾患です。

自己免疫疾患であるため難治性で、天疱瘡になった犬はステロイドなどを一生飲み続けることになります。

予防ができる疾患ではありませんので、常日頃から愛犬の皮膚を観察して、少しでも異変をみつけたらすぐに獣医さんの診察を受けるようにしましょう。

また、犬の天疱瘡に良いとされる漢方薬が出ていて、ストロイドなどの量を減らす効果が期待できるので、処方してくれる獣医さんを探して相談するのも良いですね。

>>合わせて読みたい!犬がアトピー性皮膚炎になった!?原因や症状、食事などの治療方法