【獣医師監修】犬は春菊(菊菜)を食べても大丈夫?犬が食べてはいけない理由とは?

春菊 菊菜
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春菊 菊菜

鍋の季節には欠かせない冬の代表的な葉物野菜「春菊」。

春菊は11月から3月が旬の、キク科の野菜だ。キク科ゆえに、花も菊に似ており、春にその花を咲かせることから春菊という名になったという。

人によって好き嫌いが分かれるが、種類もあり産地によって苦みや甘みが違ってくる。関西方面では「菊菜」とも呼ばれ、稀に「新菊」と表記されることもあるようだ。

また、栄養の観点からみても、春菊はとても優れた栄養成分と効能があることで知られている。

 

そんな春菊だが、犬にとっては「有害」という意見もあれば、「少量なら与えても大丈夫」という2つの意見があるようだ。

そこで今回は、どんな理由が原因で有害とされているのか詳しく説明していこう。

【獣医師監修】班目美紀

専門家 監修
麻布大学獣医学部獣医学科卒。現在は動物病院で小動物臨床獣医師として勤務。

 

犬にとって春菊の有害性とは?

春菊 菊菜

犬にとって有害だと考えられているのは、「春菊がキク科の植物に属しているから」という理由からきている。

どういうことかと言うと、一般的にキク科の植物を犬が食べてしまうと「嘔吐」「下痢」などの症状を引き起こしてしまう可能性があるからなのだ。

 

ほかにも、キク科の植物にはアレルゲン物質の「セスキテルペンラクトン」が含まれている。これは、接触性皮膚炎の原因物質の一つとされており、キク科の植物との長期的な接触にによって皮膚炎が生じるもの。

セスキテルペンラクトンはキク科以外の植物にも多く含まれ、適度な量であれば動脈硬化の予防や治療の助けとなる成分。

ただ、放牧家畜のように人間が繁殖させ飼育する動物では、過剰による毒性やアレルギー反応の原因となってしまうこともある。

春菊はキク科の植物。つまり春菊も同じように危険な植物ではないのか、ということなのだ。

 

ちなみに、いずれも犬が春菊を食べて中毒を引き起こした症例はない。そのため、過度に神経質になる必要はないのかもしれない。

だが、ハッキリとした確証がないだけに、わざわざ春菊を与えない飼い主さんが多いようだ。

 

春菊の栄養と効能

春菊 菊菜

私たち人間にとっては、ガンや風邪の予防から、自律神経を整える効果までさまざまで、積極的に取り入れたい食材の一つ。

だが、犬にとってはどうなのだろうか?

では、春菊に含まれる犬に役立つ栄養をチェックしてみよう。

 

βカロテン

βカロテンには抗酸化作用があり、ガンの予防老化予防に効果的と言われている。しかも、βカロテンは必要な量だけ体内でビタミンAに変換するという優れもの。ビタミンAは、視力を維持するには欠かすことのできない栄養素の一つ。

 

ビタミンC

犬は体内でビタミンCを合成できるが、だからといって摂取しなくてもいいわけではない。年齢と共にその能力は低下するので長期的に摂取したい栄養素の一つなのだ。

ビタミンCの主な働きとして、活性酸素を無毒化する「抗酸化作用」が挙げられ、免疫力の向上、コラーゲンの生成を促すなど、身体の調子を整えるには欠かすことのできない栄養素なのである。

 

ビタミンB2 (リボフラビン)

糖質、脂質、タンパク質を分解する酵素のサポート役として働く。

別名「発育のビタミン」とも言われ、発育促進に重要な役割を果たしてくれる。ほかにも、皮膚、被毛、爪などの細胞を作るためにも必要と言われている。

 

カリウム

カリウムは、体に含まれている余計な塩分(ナトリウム)を排出する効果があることから、利尿作用血圧を下げる働きに期待ができる。

 

食物繊維
 

春菊に含まれる食物繊維の割合は、100gあたり不溶性2.4g、水溶性0.8gと、不溶性食物繊維を多く含んでいる。そのため、便質の改善や便通を促す働きに期待ができる。

 

クロロフィル

葉緑素ともいわれ、植物の緑色の部分にあたる成分だ。

春菊をはじめ、ほうれん草、小松菜、モロヘイヤ、ケールといった野菜に多く含まれる。

クロロフィルはコレステロール値を下げ、血中コレステロール値を正常化にしてくれるほか、体内に蓄積した残留農薬やダイオキシン、有害金属などを排出してくれる働きもある。

 

 

 

与える前に知っておきたい、与え方と注意点

春菊は茹でてから与えるのがベスト

加熱春菊は香りが強いのでアクも強そうに思われがちだが、意外とえぐみが少ないため生食する方もいるかと思う。

しかし、春菊にはシュウ酸も若干ながら含まれていることは知っておこう。

その含有量はほうれん草の4%ほどと少ないが、シュウ酸の摂取はシュウ酸カルシウム尿石症の原因にもなってしまうため、犬にはなるべく摂取させないためにも工夫する必要がある。

 

シュウ酸は水溶性なので茹でることにより、その量を減らすことができる。そのため、生で与えるより茹でてから与えた方が、シュウ酸を減らすことができてオススメだ。

 

ただし、あまり長い時間茹でていると他の栄養素も流れ出してしまうため、あまりグズグズしてはいられない。

そのため、水溶性のシュウ酸はサッと茹でて減らそう!

 

 

食物アレルギーがないか様子を見守ろう

アレルギーアレルギーの原因となるものをアレルゲンと呼ぶのだが、実は食べ物全てにアレルゲン要素があることは知っておきたいところ。

初めて与える時は少量から与えて、痒がったり嘔吐したりしないか、愛犬の様子を見守ってあげるのも大切だ。

 

犬の負担にならないよう注意しよう

春菊 菊菜春菊は食物繊維も豊富に含まれているため、消化不良にならないよう与え過ぎには気をつけたい。

また、スーパーで購入する時も、葉のギザギザが浅く葉が広いものが「苦味」や「香り」が穏やかといわれている。

愛犬に与えるのであれば、切れ込みが深くて風味の強い春菊ではなく、苦味や香りを抑えた葉が浅くて広いタイプの春菊をチョイスするといいだろう。

 

調理の際は、犬が消化しやすいよう「柔らかい葉の部分」を細かく刻んでから与えるのがオススメだ。

 

さいごに

春菊 菊菜

ビタミンやミネラルを豊富に含み、私たちの健康にも一役買ってくれる春菊。

確かに、香りや苦みで好みの分かれやすい食材なため、犬に与えても食べてくれないこともあるようだ。

春菊は愛犬に対して、ぜひ積極的に…とは言い難い部分はあるが、心配ならば与えないという判断も必要だ。

 

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