犬が骨肉腫になった!治療法や痛みの管理法を紹介

犬 骨肉腫
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ガンはその部位によっていろいろな呼び名が付けられています。

犬の骨肉腫とは骨の組織にできるガンのことで、予後の悪い悪性腫瘍です。

肺などに転移しやすいことが知られていて、進行が早く致死率が高いガンなのです。

見つかった時には手遅れ、ということがよくありますが、初期ではこれと言った特別な症状は見られません。

少し足を引きずっているとか、痛がるようなそぶりを見せたなど、ちょっとした変化を見のがさないで獣医さんに診察してもらうようにしてください。

ここでは犬の骨肉腫を早く発見するために気をつけることや、治療と疼痛コントロールの方法などを紹介します。

 

どんなガンなの?できやすいのはどこ?

ワンちゃんの骨に発生する悪性の腫瘍で、進行すると骨に深く入り込んで歩くことができなくなるだけでなく、肺などの内臓に転移して命を落とす恐ろしい疾患です。

そして、このガンは腫れが酷いほか、痛みが強いのも特徴です。

骨にできるガンには他のところから転移したものと、下記の骨自体に発生するものの2つがあります。

  • 骨肉腫:ワンちゃんの骨腫瘍の80~85%を占める
  • 軟骨肉腫:骨腫瘍の10%で、軟骨部分にできて転移することが少ない
  • 線維肉腫:軟部組織のコラーゲン繊維を作る線維芽細胞にできて、転移は少ない
  • 骨軟骨肉腫:頭蓋骨にできるが、進行が遅い
  • 血管肉腫:少ないが転移しやすい

この中では骨肉腫が最も多く、骨にできる悪性腫瘍の85%にもなるとされています。

特にできやすい部位は四肢で、長い骨に出やすく前足が後ろ足の2倍発生すると言われています。

発生する部位は以下の通りです。

  • 前足の型近くの上腕骨の上端
  • 前足の手首近くの橈骨(とうこつ)の下端
  • 後ろ足の膝近くの大腿骨の下端
  • 後ろ足の膝近くの脛骨の上端
  • 後ろ足の足首近くの脛骨の下端
  • 頭蓋骨
  • 鼻骨、副鼻腔
  • 脊椎
  • 肋骨
  • 骨盤

四肢においては、長い骨の中ほどよりも骨端の部分に多く発生します。

そして肺や別の部位の骨に転移しやすいことがわかっていて、そうなると余命が短くなります。

なお、ワンちゃんでも病期の進行度は人間と同じTNM分類で表されますが、リンパ節への転移を表すNはカテゴリーが設定されていません。

 

原発腫瘍の大きさ(T)

  • T0:腫瘍ではない
  • T1:骨の組織のうち髄質と皮質だけにある
  • T2:骨膜の外に出て拡がっている

 

遠隔転移(M)

  • M0:遠隔転移がない
  • M1:遠隔転移がある

これを基にしたステージ分類は以下の通りです。

  • ステージⅠ:局所にのみ腫瘍があり、根治が可能なケースもある
  • ステージⅡ:周囲のリンパ節に転移がある
  • ステージⅢ:Ⅱよりさらに広範囲に拡がっている
  • ステージⅣ:遠隔転移がある

 

犬に骨肉腫ができる原因とは?できやすいのはどの犬種?

なぜ発生するかについてはまだよくわかっておりません。

これまでの報告で、骨折をしたワンちゃんで治ってから7、8年経ってから起きたケースがあります。

また、骨肉腫が発生したワンちゃんの5%に骨折の経験があるとのデータがあり、骨折した部位を繋ぐ金属プレートから溶けだした金属イオンが誘因ではないかとの説もあります。

ワンちゃんの大きさが危険因子として挙げられていて、大きい体高が高いワンちゃんで起こりやすく、年齢では7歳から9歳が多く、メスよりオスの方が多いとの報告があります。

起こりやすいとされている犬種はこちらです。

  • ゴールデン・レトリバー
  • ジャーマン・シェパード
  • ロットワイラー
  • アイリッシュ・セッター
  • ドーバルマン・ピンシャー
  • グレート・デーン
  • セント・バーナード
  • グレート・ピレニーズ

 

どのような症状があるの?

このガンでは早期発見が何よりも大切ですので、これらの症状が見られたら直ぐに検査を受けるようにしてください。

  • 歩いている際に、足をあまり地面に着けないですぐに上げる
  • 足を地面に着けずに、跛行しながら歩くようになる
  • 足の関節に近い骨の端の部分が腫れている
  • 触ると硬いしこりができている
  • 足が痛いそぶりを見せる
  • 足を触られない、触ろうとすると噛み付く
  • 散歩に行きたがらず歩くのを嫌がる
  • アゴにできていると口を開くと痛そうにする
  • 鼻や副鼻腔などにできると顔が変形してくる
  • 脊椎で発症すると、さまざまな神経症状が見られるようになる

これらが現れたら少しでも早く診察をしてもらい検査を受けましょう。

ちゅうちょしているうちにガンはどんどん進行してしまいます。

 

どのような治療があるの?

次のものがあります。

 

外科手術

ガンを摘出することが第一の治療になりますが、このガンは浸潤性が強く、骨の奥に見た目以上に浸み込んでいるため広く骨を取らなければなりません。

そのために、断脚術を施術してガンができた足を以下の術式で根本から切除しなければならなくなります。

そのための費用は平均でおおよそ20万円前後とされています。

  • 肩甲帯離断術:前足を肩から切除する
  • 股関節離断術:後足を股関節から切除する

足を失ったワンちゃんを見るのはとても辛いものですが、延命のためには仕方のないことですね。

ガンが小さいケースでは断脚をしないでガンの部分だけを切り取って足を温存する術式もあるそうですが、まだ一般的ではありません。

しかし、これらを施術したとしても余命は半年もないとされています。

 

化学療法

断脚術などを施術した後に抗がん剤を使って補助療法として行われます。

完全に治すことはできませんが、余命を数カ月ほど延ばせる可能性はあります

しかし、重い副作用が多いためワンちゃんには辛い思いをさせるであろうことと、薬剤費が高額のため飼い主さんの経済的負担を軽視できません。

主に使われる抗がん剤は人間にも使用されているものです。

  • ドキソルビシン(抗腫瘍性抗生物質)
  • カルボプラチン(白金製剤)

この2剤の併用が一般に使われているほか、最近では分子標的薬のトセラニブでは47%に有効性が見られたとの報告があり期待されています。

 

放射線療法

原発巣の痛みを和らげることには有効とされていますが、転移を防ぐことはできません。

実施できる施設が限られていることと、毎回麻酔が必要なこと、高額になる短所があります。

しかし、最近では定位手術的照射(SRS)と呼ばれる原発巣を切り取らずに治せる療法が注目されています。

ガンのある部分を狙い撃ちするもので、海外では90%もガンの増殖を抑えたとの報告があり、脚を切断しなくとも治せるとして注目されています。

さらに治療費が30万円ほどとされ期待が寄せられていますが、実施できる施設が日本国内では北海道大学しかないため、簡単に受けることができません。

 

余命はどのくらいなの?

転移が速く予後がとても悪く、かかってしまったら余命は平均で1年ほどとされていて、飼い主さんは覚悟しなければなりません。

文献での報告によれば、大型のワンちゃんで骨肉腫ができた足を切断したとしても、余命は4カ月程度です。

その後に抗がん剤や放射線で治療を続けたとしても7、8カ月とされています。

ただ、四肢以外では四肢に発生するよりは長いものがあるとされています。

しかし数が四肢ほど多くないので、必ずしも長いとは言い切れないようです。

 

ガンの痛みを取ってあげるにはどうしたらいいの?

ガンには痛みが伴いますが、骨肉腫では特に強い痛みが起きるとされています。

それによりワンちゃんがご飯を食べられなくなるばかりか、動けなくなってしまうこともあるのです。

ワンちゃんのQOL(生活の質)を落とさないためには、痛みを取ってあげることが重要となります。

ガンによる疼痛には次のようなものがあります。

 

ガン自体が誘因となるもの

癌性疼痛の70%が腫瘍とその周りから起こり、ガンが大きくなって神経を圧迫することで強い痛みが発生します。

 

ガンによって間接的に起こされるもの

身体を動かすことができず寝たきりになると、褥瘡と呼ばれる床ずれができて痛みが発生します。

また関節がこわばって起こる痛みや、胃腸が弱ることで腹痛が起こることもあります。

 

検査や治療によるもの

  • 身体の組織を採取する生検時
  • 手術後の術創
  • 抗がん剤の副作用や放射線治療による口内炎や腸炎、皮膚炎ほか

 

ガン以外に併発している疾患によるもの

もともとの持病(腰痛、関節痛ほか)による痛みが酷くなることがあります。

これらの疼痛を抑えるために、次にあげる薬物が単独、あるいは併用で使われます。

 

非ステロイド系抗炎症剤

NSAIDsと呼ばれていて、人間でもさまざまなケースで使われています。

軽い疼痛であればこれだけでもコントロールが可能です。

  • カルプロフェン
  • メロキシカム
  • フィロコキシブ
  • テポキサリン

 

非麻薬性オピオイド鎮痛薬

オピオイド受容体に作用して疼痛を抑える薬で、医療用麻薬に指定されていないものを指します。

  • ブトルファノール
  • ブプレノルフィン
  • トラマドール

 

麻薬性オピオイド鎮痛薬

医療用の麻薬として指定されていて、麻薬使用者免許を持つ獣医しか処方することができません。

  • モルヒネ
  • フェンタニル

なお、オピオイド鎮痛剤は作用の強さによって弱オピオイドと強オピオイドに分類されています。

 

犬が骨肉腫になった!治療法や痛みの管理法を紹介・まとめ

犬の四肢に起こることが多い骨肉腫は進行と転移が早く、余命が短いガンのひとつです。

犬が骨肉腫になってしまったら、完治は難しいとされています。

治療方法は断脚術という足を切断する手術で、手術後には足を失くした痛々しい愛犬の姿を見ることになります。

老犬にこの骨肉腫が出来てしまった場合には、持病の存在や体力的に手術ができないような状態ならば、安楽死を勧められることがあります。

そのようなことにならないために、愛犬の様子を常日頃からよく観察して、身体をマッサージしながらしこりなどがないかをチェックしてあげるようにしてくださいね。

とにかく愛犬と少しでも一緒に過していたいのであれば、早期に発見してあげることが大切なのです。

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