犬の腎不全の食事療法とは?食べない時の対策など

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腎不全の中でも特に慢性のものはその機能が二度と戻ることがありません。

人間ならば完全に働かなくなったとしても、人工透析で長生きすることが可能です。

しかし犬においては、透析に取り組む施設が増えてきたものの、まだ一般的ではなく高額の費用がかかってしまいます。

そのため犬の腎不全では第一に食事療法を施しますが、なかなか食べないことがあったりして飼い主さんを困らせます。

犬が腎不全の療法食を食べない時には、多種類のフードを試してみるのもひとつの手段です。

ドライタイプ、ウェットタイプなど、いろいろ食べさせてみて食いつきの良いものを探してみてはいかがでしょうか。

 

犬の腎不全とは?苦しまないで末期を迎えるってホント?

腎不全とは何らかの原因で尿が作れなくなる状態のことです。

尿を出せなくなるため尿毒症を起こすほか、それ以外のさまざまな働きが低下して身体に変調をきたして命を落とすこともあるのです。

ワンチャンの腎臓は背中の後ろの方に人と同じに左右1個ずつあって、以下の働きがあります。

 

尿をつくる

血液をろ過してオシッコを作っています。

ネフロンという組織がたくさんあって、その中の糸球体でろ過され老廃物を含んだ原尿は、尿細管で水分を再吸収された後でオシッコとして出されます。

 

身体のイオンのバランスを調整する

主に以下のイオンの血液中の濃度を調整して、血液を弱アルカリ性に保ちます。

  • ナトリウム
  • カリウム
  • カルシウム
  • リン
  • 重炭酸イオン

 

血圧を調整する

自分自身が血液を正常にろ過するために血圧を一定に保つ働きがあります。

特に血圧が下がると、ろ過機能が低下するためレニンという酵素を出して、レニンーアンギオテンシン系という体内メカニズムに働きかけて血圧を上げます。

 

血を造るホルモンを出す

骨髄に働きかけて赤血球を造らせるエリスロポエチンを分泌して血を造らせます。

 

活性型ビタミンD3を造る

肝臓に溜められていたビタミンDは腎臓に運ばれて、1-25-OH2D3と呼ばれる活性型ビタミンD3に変換されカルシウムの吸収を助けます。

腎臓は沈黙の臓器と呼ばれ、頑張るだけ頑張っていきなりダウンすると言われています。

腎不全では、ワンちゃんが苦しむことなく診察で末期と診断されることがあり、ふだんのチェックが大切です。

 

腎不全にかかりやすい犬種は?

まず、ワンちゃんが高齢になればなるほどかかるリスクが高くなります。

また、かかりやすいとされているのはこれらです。

  • ブルテリア
  • イングリッシュ・コッカー・スパニエル
  • キャバリア
  • ウェストハイランド・ホワイト・テリア
  • ボクサー
  • シャーペイ

これらのワンちゃんたちには注意が必要とされていますので、定期的に検査をしてもらいましょう。

 

犬の腎不全で急性と慢性の症状の違いとは?寿命は?

急性と慢性ではこのような違いがあります。

 

急性腎不全

毒性を持つものを摂取して中毒を起こし腎機能が低下する場合と、何らかの理由で血流量が急に低下した時に尿をつくることができなくなり腎不全を起こします。

その際には尿毒症を起こすなどで急激に容体が悪化し、命を落とすことがあります。

中毒物質を解毒するなどして回復すれば、機能が回復することが多いとされていますが、障害が大きい場合は慢性腎不全になるケースがあります。

主な症状にはこれらが現れます。

  • 食欲不振
  • 元気がなくなりグッタリする
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 脱水症状

また、尿毒症を起こすと下記のような症状が現れます。

  • 口内炎
  • 舌に潰瘍ができる
  • 口臭がアンモニア臭くなる
  • けいれんを起こす
  • 意識が低下する

 

慢性腎不全

急性と違い、数カ月から長い場合は数年かけて組織が破壊されていきます。

機能の75%が失われると、このように呼ばれます。

ワンチャンでは主に以下のような疾患が元になって慢性化します。

  • 急性腎不全
  • 糸球体腎炎
  • 間質性腎炎
  • 腎盂腎炎
  • 犬フィラリア症
  • 水腎症
  • 高血圧症
  • レプトスピラ症
  • 腎異形成
  • 腫瘍

なおこの疾患で見られる症状は、機能が残存している割合によるステージ分類によって違ってくるため、ステージを把握する目安になります。

  • ステージ1:この状況では尿比重の低下がみられるものの、これといった症状は現れません
  • ステージ2:機能25%の状態ですが、多飲多尿が見られるくらいでワンちゃんは元気です
  • ステージ3:機能が10%以下になり、食欲不振、体重減少、嘔吐、脱水などが現れます
  • ステージ4:5%以下となり上記症状に高窒素血症などの全身症状が出て、尿毒症を発症します

このように症状が出て気がついた時には機能がほとんど残っていない状態で、4ではもはや末期となり、余命を全うするのみとなります。

かかりつけの獣医さんに検診してもらい、尿比重値と血清クレアチニン値をチェックして、できるだけ早期に発見してもらいましょう。

 

犬の急性腎不全の末期は点滴で回復できるの?

まずは発症する元になった原因を取り除かなくてはなりません。

中毒の場合は催吐処置で吐かせるほか、毒素を中和する薬剤を投与するなどが施されます

血流量が低下している際には、輸液によって血流量を増やすほか、各種電解質を補給するための点滴が行われます。

点滴は一時的な処置ですので、それだけでは回復することはできません。

主に下記の薬剤で治療が施されます。

  • 利尿剤:水分が過剰になった際に尿の排出を増やして血圧を下げる
  • 制吐剤:吐き気を止める
  • 制酸剤:胃酸を抑える
  • 消化管運動促進剤

なお、尿毒症を起こしているケースでは、人工透析によって毒素を取り除くことができますが、透析の設備がある施設は限られています。

 

慢性腎不全での余命は?食べない犬には食事療法が重要

残念ながら破壊された組織は二度と回復することがありません。

ちなみに、先に紹介した国際獣医腎臓病研究グループによるステージ分類では、余命としてステージ2以上の平均生存期間が公表されています。

  • ステージ2:14.78カ月
  • ステージ3:11.14カ月
  • ステージ4:1.98カ月

残存機能が5%以下となるステージ4まで進行してしまうと、2ヶ月以内に命を落とすとされています。

この疾患にかかってしまったら少しでも進行を遅らせて余命を延ばすしかありません。

そのために最も重要な治療は薬物療法ではなく、人工透析を除けば初期の内に始める食事療法と水分補給です。

 

食事療法

食欲が低下するので、獣医さんが勧めてくれる腎臓病用療法食を指示どおり与えます。

手作り食の場合は、食材などについて指導を受けましょう。

 

水分補給

いつでも新鮮な水を飲むことができるようにしますが、飲んだ水の量を量って記録しておきましょう。

点滴などを受けた時もその量を記録してください。

また、オシッコをトイレシートにさせるようにして、その重さを測れば尿量も測ることができますので、飲水量と一緒に記録しておくと良いでしょう。

 

食べない、飲まない、慢性腎不全の犬の療法食とは?

療法食では下記のように栄養素が管理されています。

 

リンを取り過ぎない

リンは腎臓で排出されるために取り過ぎると負担がかかります。

摂取制限することでワンちゃんの生存率が高くなるとの報告があり、制限されます。

 

タンパク質を取り過ぎない

機能が低下して尿素が排出されなくなると尿毒症となりますが、その元になる尿素はタンパク質のアミノ酸の残骸から作られます。

そのため、タンパク質を過剰に摂取することが避けられることになるのですが、タンパク質には身体に必要な必須アミノさんを含むものがあります。

必須アミノ酸の含有を確認しながら良質のタンパク質を選びましょう。

 

ナトリウムを調節する

塩分(ナトリウム)の摂り過ぎによる高血圧状態は腎臓に負担をかけることになります。

しかし逆に資源し過ぎても血流量が減ってしまい進行を進めるおそれもあるので、適量を調節しながら与えるようにしましょう。

 

オメガ3脂肪酸を与える

この脂質には以下のような望ましい作用があります。

  • 炎症の緩和
  • 血管拡張作用による降圧効果
  • 腎機能の保護

これが含まれている療法食が多いですが、下記の食材からも積極的に摂ると良いでしょう。

  • 魚油(特に青魚類)
  • 亜麻仁油
  • シソ油

獣医さんが勧めてくれる療法食は、化学的なデータに基づいて作っている信頼できるメーカーのものばかりです。

多少値段が高めだとしてもずっと与え続けるものですから、獣医さんが指示してくれるフードを選ぶことをおすすめします。

 

犬の腎臓病用フードはどれがいい?手作りの食事もおすすめ

フードにはドライタイプとウェットタイプがありますので、ワンちゃんの食いつきなどを見ながら選ぶと良いでしょう

しかし、ドッグフードを変えるとなかなか食べてくれないことがあります。

そんな時は次のことを試してみてください。

  • ドライフードとウェットフードを混ぜる
  • ドライフードの場合、ぬるま湯でふやかして柔らかくて温める
  • ワンチャンが喜びそうな食材をゆでてトッピングしてあげる

なお、トッピングする場合には、使う食材を獣医さんに伝えて指示を仰いてください。

リンが少なく、ワンちゃんが喜ぶトッピングを紹介します。

  • ブロッコリー
  • さつまいも
  • キャベツ
  • リンゴ
  • 白米

野菜や果物は喉に詰まらせるといけませんので、小さくカットしてくださいね。

 

犬の腎不全の食事療法とは?食べない時の対策など・まとめ

愛犬が慢性腎不全になったら、その治療は食事療法で進行を遅らせるだけです。

せめて療法食をしっかり食べさせてあげて、少しでも長く一緒にいられるようにしたいですよね。

しかし腎不全になった犬は食欲が低下することもあり療法食を食べないことがあります。

そんな時はいろいろと工夫をして愛犬が楽しく食事をすることができるようにしてあげたいものですね。

フードを食べない腎不全の愛犬には、好物をトッピングするなどして美味しく食べてもらえるように工夫をしてあげましょう。

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