犬が多形紅斑になった!原因とは?治療方法は?

多形紅斑 犬
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久しぶりにマッサージでもと思って、寝転んでいたワンコをゴロンとひっくり返したお腹に、いろいろな形の赤い斑点が出ている!

真っ赤に並んだ赤い斑点が管状や、蛇行しているなど、多形紅斑と呼ばれる皮膚疾患かもしれません。

痒みがないのが特徴とされていて、お腹などにできるとなかなか気がつかないことでしょう。

人間にも見られるこの疾患は、ヘルペスウィルスやマイコプラズマなどが関連するとする説やなどがありますが、犬の多形紅斑の原因は薬物によるものが多いとされています。

同じように薬物が原因とされている犬の多形紅斑ですが、実はまだよくわかっていないのです。

免疫が関わるとされている、珍しいこの疾患について紹介します。

 

犬の多形紅斑とはどんな皮膚疾患?

免疫とは細菌やウィルスなどから身体を守る生体の防御反応のことですが、身体を守るはずの免疫反応が何かのはずみに自分自身を傷つけてしまうことがあります。

このように自分の身体の正常な組織を免疫が誤って攻撃して起こる疾患のことを、免疫介在性疾患と言います。

いわゆるアレルギーもこの免疫介在性疾患に含まれますが、アレルゲンと呼ばれる抗原に対して免疫が過剰に反応してしまい辛い症状が引き起こされます。

ワンコにアレルギーを起こすアレルゲンとしては、主に食物を中心に次のものが挙げられます。

  • 牛肉
  • ラム肉
  • 鶏肉
  • 鶏卵
  • 乳製品
  • 小麦
  • 大豆
  • とうもろこし
  • ハウスダスト
  • ダニの死骸
  • ノミの唾液
  • 杉などの花粉

これら以外の原因がよくわからない、免疫の異常が原因となって皮膚炎を起こすことを、免疫介在性皮膚疾患と呼び、これらが含まれます。

  • 多形紅斑(EM)
  • 中毒性表皮壊死症(TEN)
  • エリテマトーデス
  • 天疱瘡(てんぽうそう)
  • 無菌性結節性皮下脂肪組織炎
  • 皮膚血管炎
  • 薬疹

これらのいずれもまれな疾患ではありますが、命にかかわる重篤性を持つものもあります。

比較的見られるとされている疾患と好発するワンコの種類は以下のとおりです。

  • 天疱瘡:秋田犬、チャウチャウ
  • エリテマトーデス:シェパード、コリー、シュエルティー
  • 無菌性結節性皮下脂肪組織炎:ミニチュア・ダックス

 

EMとTENとは?同じ疾患なの?原因は?

多形紅斑(EM)と中毒性表皮壊死症(TEN)はよく似ているとされています。

どちらも薬物が異常の原因となっていることが多いとされていて、症状などにも共通点が多い疾患です。

厳密には違う疾患なのかもしれませんが、軽症のものを多形紅斑、重症のものを中毒性表皮壊死症とする考え方があります。

この2つの疾患については人間の医学でも獣医学においても同じ疾患なのか違うものなのかについて結論が出されていないのです。

ここでは便宜上、同じ疾患の軽症タイプと重症タイプとして紹介したいと思います。

なお、中毒性表皮壊死症はライエル症候群とも呼ばれています。

そして、同じ様に薬物の重篤な副作用として知られているスティーブンス・ジョソン症候群(SJS)とも同列の皮膚疾患とされています。

 

原因と発生機序

ほとんどが服用した薬物に免疫が異常に反応して起こるとされています。

皮膚の表皮にある角化細胞をケラチノサイトと呼びますが、それが何らかの誘因で変化してしまい、それを異物として免疫が標的と捉えて攻撃することで炎症が起こります。

細胞介在性過敏症のひとつであると考えられ、その結果として表皮の角化細胞のアポトーシスと言われる細胞死が引き起こされるのです。

 

どのような症状が現れるの?

多形紅斑は少しだけ隆起が見られる丘疹と局面が特徴とされていて、見た目が火傷や化学薬品によろう熱傷に似ているとされています。

赤い皮疹がだんだん拡がって行き、全身に以下のものが見られるようになります。

  • 鱗屑:角質が剥がれたもので、頭皮にできるとフケになります
  • 痂皮:俗にいうカサブタで、血小板のフィブリンが赤血球と一緒に固まったものです

これが重症化して中毒性表皮壊死症になると、さらにこれらの症状が特徴として現れます。

  • 痛みを伴う水疱(水ぶくれ)ができる
  • 潰瘍ができる
  • 表皮の細胞が壊死してしまう
  • また、これらのほかに全身症状として以下のものが併発することがあるので注意が必要です。
  • 沈鬱(気分が沈んでふさぎ込む)が見られ元気がなくなる
  • 食欲が低下する
  • 発熱がある

これらの症状と似たものが現れるものは多く、下記に挙げるものとの鑑別診断が大切です。

  • 全身性エリテマトーデス
  • 水疱性皮膚エリテマトーデス
  • 深在性の感染症(細菌、真菌)
  • 水疱性類天疱瘡
  • 尋常性天疱瘡血管炎
  • 上皮向性リンパ腫
  • 薬疹
  • 熱傷
  • 蕁麻疹(じんましん)

 

皮膚疾患の鑑別診断とは?

ワンコにおいても人間と同じように皮膚疾患では症状が似ているものが多く、さまざまな検査を用いて似ている疾患を除外していきます。

検査の手段としては主にこれらが行われることになります。

 

皮膚の細胞診

炎症などが起きている皮膚にスライドグラス、あるいはセロハンテープを押し付け、それにくっついた細菌の種類を同定して、それを基に診断します。

 

被毛検査

症状がある部位の被毛を抜き、顕微錠で糸状菌やダニなどの寄生虫の存在を調べます。

また被毛の組織に異常がないかを確認することもできます。

 

皮膚掻把検査

症状が現れている部位をピンセットなどで引っ掻いて組織を集め、それを顕微鏡で寄生虫(疥癬虫、ニキビダニ)などの存在を確認します。

 

ホルモン検査

血液検査から、原因になっている疾患として副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や、甲状腺機能亢進症や低下症が発症していないかどうかを確認します。

 

真菌培養検査

ワンコの症状が出ている部位の被毛やフケを集めて培養することで、糸状菌の存在を確認できます。

 

薬剤感受性検査

抗菌薬を処方する際に実施される検査で、症状が出ている部位の膿などから細菌を採取して培養し、薬剤を含む感受性ディスクによって効果を確認することができます。

 

皮膚生検(病理検査)

自己免疫疾患や腫瘍の診断で、上記に挙げた検査で判明しない場合の確定診断や、それまでの治療で効果が見られないような場合に行われます。

症状がある部位と正常な部位の皮膚組織を3、4カ所切り取って、顕微鏡によって組織の異常を調べます。

ほかにも症状が似ている疾患の判別で用いられることもあります。

 

どのような治療方法があるの?

ワンコの多形紅斑と中毒性表皮壊死症は以下のような手順で治療が進められます。

まず、それらを誘発していると考えられる薬物、食品を与えるのを中止します。

  1. 症状が出る2週間から1ヶ月前まで遡り、可能性のある全てのものを中止して様子を見る
  2. 薬物などの関連がなければ、感染症や腫瘍の存在を調べる
  3. この間、症状の度合に応じて支持療法(輸液による電解質補正や栄養補給)を行う

軽症の多形紅斑ではここまでで2~4週間で自然に治癒することがあります。

しかし、中毒性表皮壊死症では重症化していて、万一の場合を考えて入院して様子を見ることがあります。

そして、それでも症状が治まらない場合には免疫を抑える薬剤の投与を開始します。

  • 副腎皮質ホルモン剤(ステロイド:プレドニゾロンほか)
  • 免疫抑制剤(シクロスポリン)

これらを投与して症状が良くなり効果が見られようになったら、少量ずつ量を減らします。

また、これらの薬剤によって免疫が低下しているため、日和見感染などの二次感染を防ぐ必要があります。

元々疑われていた薬物との関連性のない抗生物質や抗菌剤が投与されます。

 

犬の皮膚科専門医とは?

近年では、獣医学においても専門的かつ高度医療が進歩しています。

動物病院では総合診療科のようなイメージで獣医さんが何でも診察していましたが、ワンコの疾患の研究が進み、診断や治療が進化しているため獣医さんにも専門性が求められているのです。

皮膚疾患においては、獣医皮膚科専門医という日本獣医皮膚科学会が認定した専門医がいます。

ここで紹介した多形紅斑や中毒性壊死症は原因不明の難病とも言える疾患で、最悪命を落とす可能性があるため、もしも通える範囲に皮膚科専門医がいるのなら、診察してもらうことをおすすめします。

施設には皮膚疾患を調べるために必要な設備が整っているだけでなく、何よりもワンコの肌について常に勉強している獣医さんの存在が頼もしいですよね。

インターネットで検索すると近くの皮膚科専門医がすぐに見つかりますよ。

 

犬が多形紅斑になった!原因とは?治療方法は?まとめ

皮膚疾患って名前が難しいと思ってことがある方は多いことと思います。

感じだらけで中には見たこともない漢字が使われていたりしますよね。

しかし、皮膚疾患そのものは外から見て、かかったことがわかりやすい疾患なのです。

犬の多形紅斑もお腹などをよく観察していれば初期に発見できる疾患です。

軽いうちならば、免疫を刺激していると思われる原因を取り除くことで犬の多形紅斑は自然治癒することもあるのです。

多忙を理由に愛犬の世話をしていなかったら、重症化していて手遅れになってしまいかもしれません。

かわいい愛犬とずっと一緒に楽しく暮らすために、身体のチェックを怠らないでくださいね。

そして、もし異変が見られたら、近くの獣医皮膚科専門医を探して診察してもいましょう。

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