秋から冬はジビエのシーズン。
鹿肉は脂肪が少なく、その味は牛肉の赤身に似て美味しいらしい。
食べるために野生の動物を狩る「ジビエ」。なぜ、秋から冬かというと、野生動物は冬眠に向けて栄養を蓄え始める時期だからだ。つまり、この時期の鹿は脂肪分が豊富になり、肉質も良好、一年を通して最も美味しい時期だとされている。
日本ではあまり馴染みのない鹿肉だが、自然環境で育った野生動物の体は、食用の肉と比べて栄養価が高く、カロリーが低いため、ヘルシーな食材として注目を集めている。
今回は、そんな鹿肉の基礎知識から犬への与え方までをレクチャーしていこう。
知られざる鹿肉の優れた栄養価
犬は鹿肉のアレルギーがない限り食べても大丈夫だとされている。
鹿肉は、低カロリーで高たんぱくな理想的な肉だ。牛・豚・鶏と比べてもカロリーや脂質は少なく、ビタミンB群やカリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄分などの量は勝る。
まずは実際の栄養価を、鹿肉、牛肉、鶏肉とで比較してみよう。
鹿肉(※1) | 牛肉(※2) | 鶏肉(※3) | |
カロリー(Kcal) | 140 | 251 | 244 |
たんぱく質(g) | 23.9 | 19.0 | 19.5 |
脂質(g) | 4.0 | 18.0 | 17.2 |
ビタミンB1(mg) | 0.20 | 0.11 | 0.05 |
ビタミンB2(mg) | 0.35 | 0.23 | 0.08 |
ビタミンB6(mg) | 0.60 | 0.39 | 0.35 |
カリウム(mg) | 390 | 330 | 190 |
鉄(mg) | 3.9 | 2.7 | 0.3 |
(※引用:日本食品標準成分表2015年版(七訂)100gあたりの数値)
(鹿肉※1:にほんじか/赤肉/生) (牛肉※2:交雑牛肉/ヒレ赤肉/生) (鶏肉※3:成鶏肉/むね/皮つき/生)
こうして見ると一目瞭然。いかに牛肉や鶏肉に比べて低カロリー、低脂質かが分かる。
しかも、牛や鶏に比べて高たんぱくで、ビタミンB群やミネラル分も豊富だ!
また、鉄分が豊富に含まれているのも嬉しい魅力である。鉄分といえば、肉や魚に多く含まれているヘム鉄と、野菜に含まれる非ヘム鉄に分けられるのだが、ヘム鉄のほうが鉄としての吸収率が高い。
鹿肉の鉄分はヘム鉄だ。
そのため、吸収性に優れたヘム鉄を豊富に含んだ鹿肉は、犬にとって理想の食材といえるだろう。
鹿肉に含まれる栄養と効能
アセチルカルニチン
ずいぶんと難しい名ではあるが、実は鹿肉の注目したい成分でもある。
アミノ酸の一種であるこの成分は、脳機能向上や疲労、ストレス軽減などの効果があるとされている。
ちなみに、牛肉にもこのアセチルカルニチンが含まれているが、鹿肉はなんとその2倍の含有量を誇っているから驚きだ!
また、農水省発行のPDF「特集ジビエ」でも掲載されているので、気になる方はチェックしてみよう。
ビタミンB1
ビタミンB1はエネルギー代謝に必要な栄養素といわれ、記憶力や認知機能を正常に保つ働きや、脈拍数や血圧が上がりすぎないように調節する。
別名、「神経系のビタミン」とも表現され、ビタミンB1の欠乏は運動失調や神経伝達に障害が発生しやすくなる。
ビタミンB2 (リボフラビン)
糖質、脂質、タンパク質を分解する酵素のサポート役として働く。
別名「発育のビタミン」とも言われ、発育促進に重要な役割を果たしてくれる。ほかにも、皮膚、被毛、爪などの細胞を作るためにも必要と言われている。
ビタミンB6
「ピリドキシン」とも呼ばれる水溶性ビタミンの一つ。
ビタミンB6はタンパク質をアミノ酸に作り変える働きがあり、効率よく体内へ取り込むには欠かすことのできないビタミンと言われている。
また、ビタミンB6を活性化するには、ビタミンB2の摂取も必要になってくる。鹿肉のようにビタミンB2も持ち合わせた食材は、まさに相性のいい食材と言えるだろう。
カリウム
カリウムは、体に含まれている余計な塩分(ナトリウム)を排出する効果があることから、利尿作用や血圧を下げる働きに期待ができる。
鉄分
鹿肉の鉄分は、吸収性に優れたヘム鉄である。
鉄分は貧血予防、改善には効果的といわれている。鉄分は赤血球の中の「ヘモグロビン」を作るのには欠かせない材料になってくれるほか、赤血球が酸素を運ぶ手助けをしてくれる大切な役割をはたす。
ジビエの基礎知識と与える注意点
食の安全への重要性が叫ばれる現在、野生の動物には感染や食中毒などのリスクはないのだろうか?
いかに栄養満点で犬に与えたい食材であっても、与え方を間違えてしまえば大きなデメリットになってしまう恐れはある。
ということで、まずはどういった危険性があるのか事前に知っておこう。
ジビエの基礎知識
ジビエとは、狩猟で得た野生動物の肉である。
一見、「野生動物を狩猟して食べるなんてヒドイ!」と感じるかもしれないが、実は増えすぎた鹿の生態系の調節にも役立っている。
というのも、野生動物による農作物の被害などが問題になっており、ジビエは有効的な歯止め方法のひとつとしても考えられているのだ。
日本では主に、「エゾジカ(蝦夷鹿)」や「二ホンジカ(本州鹿)」が食べられているが、ジビエは一般的なスーパーなどでは扱われてはいない。
地域活性化のために特産物として広める動きもあるが、まだまだ専門の業者や通販に頼ってしまうのが現状だ。
ジビエと感染症
そもそも野山を駆け回っている野生動物であるため、家畜とは異なり寄生虫やウイルスを保有していることが多い。
食卓でもお馴染みの、牛・豚・鶏肉についても「しっかり加熱」することはみなさんもご存知かと思うが、ジビエにも同じことは言える。
火を通さない「生肉」は、О157(腸管性出血性大腸菌)や、E型肝炎ウイルスなどの食中毒を引き起こすほか、寄生虫の感染も知られている。
鹿の生肉に少なからずリスクがある以上、間違っても生では与えないようにしよう!
また、東京都福祉保健局の「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」に分かりやすく衛生管理のポイントが載っているので、大事な愛犬の安全を確保するためにも、確認することをおすすめする。
出典:東京都福祉保健局の「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」
安心できる業者からの購入
鹿肉を購入する場合は、トレーサビリティ(いつ、どこで、だれによって作られたのか)が明らかになっている業者から買うのが望ましい。
ネット上では明らかに安すぎるケースもあるようだが、価格よりも信頼できる業者であるかがポイントだ!
さいごに
鹿肉ジビエは「獣臭くないの?」という意見もあるが、これは捕獲後の処理によるところが大きい。
本来であれば、仕留めてすぐに適切な処理をするのが理想だが、ハンターは山の中にいるため理想的な処理を行うのは困難である。また、その処理が悪いと臭みはさらに強くなるそうだ。
そう考えると、いかに信頼できる業者から購入することが大切なのか分かっていただけるだろう。
ヘルシー且つ、優れた栄養を持つ鹿肉。自然の恵みに感謝しつつ、しっかりと火を通して愛犬に与えよう。