犬の腸炎とは?原因と症状、治療法などを紹介

犬 腸炎
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犬の腸炎と言っても急性と慢性があって、消化器症状が似ていてもその原因や背景、罹病期間などが異なります。

また、発症部位でザックリ分けたとしても、小腸と大腸とでも違う様相を呈します。

犬が腸炎を起こす原因はさまざまあって、それぞれ対処や治療法が違います。

しばらく様子を見ても良いものもあれば、大変な疾患が隠されていることもあります。

愛犬のお腹の調子が悪く腸炎が疑われる時は、まず獣医さんの診察を受けることです。

ここでは症状が出た際、獣医さんに診察してもらう前に飼い主さんが注意しておくことや、家庭内で療養をする上で大切なことなどを紹介します。

 

犬の腸炎とは?原因と症状、子犬では死ぬことも

腸の粘膜で起こる炎症のことを指します。

腹痛や下痢が主な症状で、場合によっては発熱を伴ってワンちゃんがぐったりしてしまいます。

急性と慢性の2つに分けられますが、その原因はさまざまに異なります。

一般的に何らかの誘因から24時間以内に発症した場合を急性として、症状が続くのは6日以内とされています。

その期間を越えて2週間、3週間と続くような場合を慢性腸炎として、検査をしても原因がわからないケースも慢性として扱われます。

また、胃に近い小腸で炎症が起こっていると、下痢便は食べ物が消化されていないような感じの液体状のゆるい便となります。

そして、大腸で炎症が起こるケースでは、水に近い便となって血や粘液が混じることがあります。

子犬の腸炎では、軽症だと思っていても急変することがあります。

元気だったのに突然死んでしまうことがあるので、少しの変化でも見失わないようにしましょう。

 

犬の急性腸炎はすぐ治るの?血便には注意

一過性の嘔吐や下痢が現れて、自然に1~3日程度で治まることがあるほか、点滴などの対処でも治まります。

 

症状

小腸の胃に近いところや胃で炎症が起きている場合は、どちらかというと嘔吐が多く見られ、炎症部位が大腸に近づくにつれて下痢の発症が多く見られるようになります。

主な症状として、これらが見られます

  • やたらとお腹が鳴る
  • 腹痛が起こる
  • 嘔吐
  • 吐血(嘔吐したものに血が混ざる)
  • 下痢
  • 血便
  • 食欲不振
  • 元気消失

これらが現れる前に元気のない状態が見られることもあります。

嘔吐や下痢はさほど頻繁ではなく、症状が軽いケースでは部屋の中を歩くなどして、ある程度治まるとご飯をねだるほど食欲が出て来る場合もあります。

 

原因

ワンちゃんは散歩中や家の中でも何でも口にしてしまいます。

腐ったものを口にすることや、細菌まみれの他のワンちゃんのウンチの臭いを嗅ごうとして口で触ってしまうなどすることがあります。

また、薬物も含めて中毒を引き起こすものを知らずに食べてしまうことや、長い留守番などのストレスによって引き起こされることもあります。

主な原因は以下のとおりです。

  • 細菌:カンピロバクター、クロストリジウム、サルモネラ菌ほか
  • ウィルス:パルボウィルス、ジステンパーウィルスほか
  • 寄生虫:回虫、コクシジウム、ジアルジア、トリコモナスほか
  • 食事:アレルギー、腐敗したもの、食べなれないもの、食べ過ぎほか
  • 薬物:非ステロイド性抗炎症剤ほか
  • 中毒:植物、タバコほか

ほかにもたくさんあって、原因はさまざまです。

 

検査

嘔吐した場合は吐いたものを、下痢をしていたら便を採取して持参して検便をしてもらいしましょう。

まずは炎症を起こしている原因を突き止めて対処することが最優先です。

そのほかには症状に応じて主に次の検査が行われます。

  • 触診
  • 血液検査
  • ウィルス検査
  • 超音波検査
  • レントゲン検査

なお、ワンちゃんの吐瀉物や下痢便を採取する際には、素手で触らないようにしましょう。

うっかり素手で触れて手に付いて、それが口に入ると飼い主さんも感染してしまう恐れがあります。

 

犬の慢性腸炎とは?症状が長引く腸炎はこれ

ワンちゃんに起こる腸炎はほとんどが急性腸炎で、激しい症状が出た後は自然に治って回復しますが、中には長引くものもあります。

3日以上、下痢が続いているような場合には慢性腸炎を疑います。

 

症状

下痢が続いて、その間に腸の炎症が拡がると嘔吐なども現れます。

現れる症状は以下のように急性期と同じようなものが多く見られますが長期間継続します。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 元気がなく、ぐったりしている

特に長期間に渡って食欲が低下するばかりか、栄養の消化吸収も低下するために、顕著に体重が減少します。

 

原因

下痢が長く続くのはさまざまな原因がありますが、中にはとんでもない疾患が隠れていることがあります。

単なる腸の炎症だと思って、高をくくっていると、とんでもないことになるかもしれません。

ワンちゃんに下痢が長く続く可能性がある疾患には、以下のようなものがあります。

  • 炎症性腸疾患(IBD)
  • リンパ管拡張症
  • 抗菌薬反応性腸炎
  • 食物アレルギー:食物不耐性ほか
  • 悪性腫瘍:消化管リンパ腫、消化管がんほか
  • 慢性膵炎
  • 膵外分泌不全
  • 寄生虫:ジアルジア、コクシジウムほか

このうちリンパ管拡張症とは、何らかの原因でリンパ液の流れが滞ることを解消するため、リンパ管が拡がってタンパク質が流れ出る疾患です。

また、抗菌剤反応性腸炎は、投与された抗菌薬に腸が反応して下痢が起こり、投与を中止すると下痢が治まります。

なお、これらのほかにも長い間下痢を引き起こす疾患があります。

慢性腸炎の場合、下痢や嘔吐が繰り返されるためにワンちゃんの体力が奪われていき、どんどん衰弱していきます。

そのために全身に栄養が行き渡らなくなり、さらにほかの疾患を併発してしまうことがあるので、注意が必要となります。

 

検査

以下のとおりに急性腸炎と同じ検査が多いですが、細菌やウィルスの検査は行わず、腫瘍の疑いも考慮してそれらに関連した検査が加えられます。

  • 触診
  • 血液検査
  • レントゲン検査
  • 超音波検査
  • 内視鏡検査
  • 病理組織検査
  • 試験開腹

この中で試験開腹とは開腹手術を施術する前に消化管の様子を外側から確認し、必要なら腸の組織を採取して病理学組織検査に回します。

これらのほかにホルモン検査、アレルギー検査、画像診断などを行なわれることもあります。

 

犬の腸炎の治療法、抗生物質やステロイドなど

まずは急性時の治療から始めて、病状の回復や進行の度合を見ながら検査や治療法が変更されます。

 

急性腸炎の治療

軽いものであれば、脱水状態への対処としての輸液の点滴などで治ることがありますが、感染など外部からの誘因がある場合にはそれに対する薬剤が投与されます。

  • 輸液の点滴:主に皮下点滴
  • 制酸剤:嘔吐が強い場合に胃酸の分泌を抑制する
  • 制吐剤
  • 消化管運動促進剤
  • 消化管運動抑制剤
  • 消化管保護剤
  • 抗生物質:細菌感染時に処方
  • ステロイド:炎症が強いケースに処方
  • 下痢止め
  • プロバイオティクス:乳酸菌ほか

点滴や注射は通院で施され、嘔吐が治まって薬が内服できるようになったら自宅での内服療養となります。

これらの治療で治らない場合は、根底にほかの疾患があるかもしれませんので、そのための検査が実施されます。

なお、食欲が回復してからの食事については獣医さんの指示に従いながら少しずつ元に戻していきます。

 

慢性腸炎の治療

腸炎を治すための抗生物質や整腸剤などが投与されるほかに、原因となっている疾患があればその治療が施され、以下の薬剤が使われます。

  • ステロイド
  • 免疫抑制剤:炎症性腸炎(IBD)、リンパ管拡張症
  • 抗がん剤:腫瘍に対しての化学療法として

このほかに腫瘍には摘出手術や放射線療法が施されることがあります。

 

犬の腸炎を防ぐには食事が大切、フードの切り替えに注意!

まずは急性腸炎を起こさないように予防することを考えて、以下のことに気をつけましょう。

  • 誤食を防ぐ:散歩での拾い食いをさせず、家の中でワンちゃんの届くところに物をおかない
  • 過剰なストレスを与えない:留守番をさせないなど
  • 温度や湿度などを快適に維持する:室内飼いの場合
  • 食事を突然変更しない:ドッグフードの変更は少しずつ慣らしながら行う

ドッグフードを変える際にはワンちゃんのウンチをよく観察してくださいね。

 

腸炎を起こした犬では治るまで食事に注意

自宅でのワンちゃんのふだんの生活や、療養させる際に再発させないようにするためのいくつかのポイントを紹介します。

 

まだ下痢が続いている場合

体温が低下しているため、室温を調整しましょう。

そして脱水症状を起こさないように、吸水性が高いワンちゃん用のドリンクを用意して飲ませあげましょう。

 

症状が軽症の場合

体力があるなら、獣医さん処置してもらった後1日絶食して様子を見ましょう。

腸を休ませることで治りが早くなります。

頃合いを見てまずは水を少量ずつ飲ませて様子を見てから、栄養バランスに配慮した流動食を少しずつ与えます。

流動食はドッグフードをお湯でふやかしたものや、手作り食なら野菜や肉を小さく刻んで少量の白米と煮込んだおじやなどがおすすめです。

また、食欲がないようならば、くず湯が良いとされています。

くずは腸の粘膜をほごしてくれるほか、ワンちゃんのエネルギー源にもなります。

ただし、これらの流動食を始めるタイミングと内容については、獣医さんに伝えてOKが出てからにしてくださいね。

 

犬の腸炎とは?原因と症状、治療法などを紹介・まとめ

犬は嘔吐や下痢をしやすい動物ですよね。

何かちょっとしたことで吐いたり、お腹を壊して下痢したりします。

犬の腸炎は軽症であれば直ぐに回復することが多いので心配は少ないのですが、まれに症状が長引いてなかなか治らないことがあります。

そんな時は、何かほかの悪い疾患が併発している可能性があるのです。

良くお腹を壊すからと油断していると、思わぬ重い疾患にかかってしまうかもしれません。

犬の腸炎を甘く見ずに、必ずかかりつけの病院で診察を受けるようにしましょう。

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