
いちじくを漢字で書くと「無花果(むかか)」。
花を咲かせずに実をつけるように見えることでついた名だが、花は鞘の中でしっかりと咲いている。
私たちが口にする部分は、いちじくの実ではなく花なのだ。
いちじくの歴史は古く、古代メソポタミアでは6千年以上も前から栽培されていたほど。いちじくには栄養が豊富に含まれており、様々な健康効果が期待できることから「不老長寿の果物」、「不老不死の果物」とも言われている。
健康食材なら愛犬にもお裾分け…と思うところではあるが、実はいちじくは犬に与えてはいけない食べ物であるのはご存知だろうか?
ここでは、いちじくにはどんな成分が含まれ、何が理由で食べてはダメなのかについて紹介していこう。
いちじくってどんな果実なの?

いちじくは、アラビア南部を原産地とする果実だ。
一般的には果実に分類されるが、正確にいえば果実でも野菜でもなく「花」。日本では夏の終わりから秋にかけて出回り、生食用以外にも乾燥いちじく(ドライフィグ)としても多く流通している。
意外にも食べる機会が少ないと思われるいちじくではあるが、生果・乾燥品ともに、パンやケーキなどに練りこんだり、ジャムやコンポート、スープやソースの材料、またワインや醸造用など、さまざまな用途を持っている。
食感としてはねっとりとして強い甘みを感じるのが特徴。そのトロっとした甘さで、少々高級な天ぷら屋では「いちじくの天ぷら」にして提供することもあるようだ。
ただ、その甘味ゆえにフルーツの中ではカロリーも糖質も高め。また、整腸作用を持つ食物繊維が含まれているため、食べ過ぎるとお腹の調子が悪くなってしまう果実としても知られている。
いちじくの成分

「不老長寿の果物」、「不老不死の果物」と呼ばれるいちじくだが、一体どんな成分が含まれているのだろうか。
食物繊維
いちじくには食物繊維が多く含まれている。
その多くはペクチンという水溶性食物繊維なのだが、ペクチンは腸内の悪玉菌を体外に排出し、便秘を予防する働きがある。
カリウム
カリウムには、利尿作用があるほか、血圧を下げる働きにも良い効果を与えてくれる。欠乏すれば「低カリウム血症」を発症し、子犬で情動不安および筋麻痺などが報告されているほどだ。
しかし、カリウムは犬にとっても大切な成分であることは間違いないのだが、過剰に摂取すると逆に「高カリウム血症」の原因になってしまうので注意が必要である。
マグネシウム
血圧や体温調整、神経伝達には欠かせないミネラルのひとつ。
もちろん、過剰摂取は尿路結石を引き起こす要因にもなってしまうが、気にしすぎて摂取せずにいると欠乏症による神経障害や骨、血圧などに異常をきたす場合もある。
犬の健康維持には必要不可欠なマグネシウムであるが、バランスよく摂取することが大切だ。
カルシウム
カルシウムは骨や歯を作るのに必要な栄養素。それなりのドックフードを与えていれば、カルシウムを不足することはないだろうが、手作り派の方は不足しないよう意識して摂取したい成分でもある。
犬に与えないほうが良いとされる理由

このように、いちじくには健康に役立つ成分が豊富に含まれているのだが、半面では中毒症状を引き起こす「ソラレン」と「フィシン」という成分が含まれている。
これらの成分は、アメリカのASPCA(米国動物愛護協会)でも犬に毒性(猫・馬にも毒性)があると設定している。
フィシン
フィシンはタンパク質分解酵素であり、いちじくの実や葉、茎に含まれる。
いちじくの茎を切るとミルク状の液体が出てくるのだが、それこそがフィシンである。いちじくが害虫から身を守る防衛物質であるのだが、それに触ると痒くなったりかぶれる場合がある。
よく、いちじくを食べると口が痒くなるのも、このフィシンが舌を刺激してしまうからなのだ。
また、人の場合でもフィシンが皮膚に付着したまま紫外線を浴びると火傷のような症状を示すことがある。光過敏症と呼ばれるものだが、犬にとっては強すぎる働きをしてしまう可能性もある。犬が間違って舐めないよう注意が必要だ。
ソラレン
ソラレンは柑橘類や一部の野菜などに含まれている物質である。
紫外線を吸収する作用やメラニンの生成を活性化させる作用があるため、肌荒れ、赤み、シミ、そばかすなど美容に大敵な成分である。
よほどの量を犬が食べない限りは中毒症状は出ないとも言われているが、中毒になると下痢や嘔吐といった症状を起こす場合がある。
結論

いちじくにはどんな成分が含まれ、何が理由で食べてはダメなのかについて解説した。
栄養価も高く、ほぼ旬の時期にしか味わえない貴重なフルーツであるが、犬にとっては中毒症状を引き起こしてしまう成分が含まれているのが残念なところである。
健康に良くて、美味しいから少しだけ…と思っても、グッとこらえて別なフルーツを選択するのが正解だ。