片側に両目がある独特な風貌の「カレイ」。
英名でflatfish(扁平な魚)と呼ばれるように、浅瀬から深海にかけての海底に平らな姿でペタッと寝ている不思議な魚。見た目も、飛び出たクリクリした目と小さなおちょぼ口が印象的だ。
体が薄く、他の魚に比べて栄養が少ないのでは?と思ってしまいそうだが、実際はドックフードの材料にもなっている栄養豊富な魚でもある。もちろん、犬に与えても問題のない魚のひとつなのだ。
ここでは、カレイの栄養や効能、与え方などを紹介したい。
カレイの栄養と効能
見た目からは想像がつかないほどの白い身を持つカレイは、たんぱく質を多く含んでおり、脂肪分も少なく、ヘルシーな食材だ。
また、白身が淡白なカレイは消化にも良く、愛犬が体調不良や食欲不振な時にも最適な食材。そんなカレイの栄養素について見ていこう。
タウリン
栄養ドリンクに含まれている成分でお馴染みのタウリン。
カレイの代表的な栄養素であるこの成分は、非常に強い抗酸化作用を持っている。また、心臓機能を正常に保つためにも必要な成分であるほか、視力を回復させたりする効果もあるようだ。
犬は肝臓でタウリンを合成できるが、その合成量にも限度があるといわれている。不足しないよう食べ物からも補ってあげたい。
さまざまなビタミンB群
カレイには、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)を含む。
これらビタミンB群は基本的には炭水化物、脂肪、タンパク質の代謝に必要な成分である。つまり、人や犬にとっても生きるためのエネルギーを作るには欠かせない栄養素でもあるのだ。
またB群はどれかひとつだけでは効果を発揮しにくい成分。互いに助け合ってその機能を発揮するので、一つだけの大量摂取よりもバランスよく摂取したい。
カルシウム+ビタミンD
カルシウムは100gあたり43mgと多く含み、且つ、カルシウムの吸収を上げるビタミンDもカレイには含まれているので、効率よく摂取できるとされる。
骨や歯を丈夫にして骨粗鬆症の予防に有効と言われているので、手作り食をメインで作っている方は意識して摂りたい成分。
マグネシウム
血圧や体温調整、神経伝達には欠かせないミネラルのひとつ。
もちろん、過剰摂取は尿路結石を引き起こす要因にもなってしまうが、気にしすぎて摂取せずにいると欠乏症による神経障害や骨、血圧などに異常をきたす場合もある。
犬の健康維持には必要不可欠なマグネシウム。バランスよく摂取を心がけたい。
カリウム
カレイはカリウムも豊富だ。
カリウムは、体に含まれている余計な塩分(ナトリウム)を排出する効果があることから、利尿作用や血圧を下げる働きに期待ができる。
近年、高血圧や脳卒中の予防などにもつながる重要な栄養素として注目されている。
鮮度の良いカレイの選び方
せっかく愛犬に与えるのだから、鮮度の良いカレイの見極め方を知っておこう。今や、冷凍魚も多く見かけるので併せて紹介したい。
生の状態
カレイは大小様々なので、一尾売りされている場合も多いだろう。
基本的には裏側が純白のものが良いとされるが、種類によっては黄色みの強いもの、赤みの強いものほど良品というケースもあるので、チェックすべきは「ぬめり」。
全体が透明感のあるぬめりで覆われ、ツヤがあるものは鮮度の良い証だ。
また、切り身のものを購入する場合は、白身の部分を良く見るようにしよう。骨のあたりに血がにじんでいるもの、パックの底にドリップ(魚の汁)が多く溜まっているものは鮮度が落ちている可能性があるので注意したい。
冷凍カレイを選ぶポイント
最近では冷凍技術が発達し、魚が獲れると瞬時に船内でマイナス40℃~50℃で急速に冷凍する。
これには、魚の味や栄養を損なわないというメリットがあり、鮮魚だけではなく、冷凍物でも美味しくいただくことが可能に。長期保存にも向いているので、上手に利用したいところだ。
とはいえ、いざ店頭で選ぶとなると、どれも同じに見えてしまう…ということはないだろうか?
冷凍魚を選ぶポイントとしては、まず包装がきれいで固く凍っているか要チェック。また、包装の内側に「霜」がついているものは、一度溶けてから再冷凍した恐れがあるので避けるようにしよう。
カレイの与え方と注意点
生で与える場合
ヒラメに比べ、生の刺し身として売られている印象が少ないかもしれないが、カレイも刺し身にして美味しくいただくことができる。
ただし、日本近海で獲れるものだけで30種類ほどあるので、種類によっては脂ののり、肉質の柔らかさ、旬の違いがあるため、種類によってはソテーや煮つけに向いているものもある。
刺し身として美味しくいただくなら、「マコガレイ」「アカガレイ」といった種類を選ぶのがおすすめ。身が柔らかいので愛犬も食べやすくて良い。
生で食べさせる場合は与え過ぎないように注意しよう
カレイに限らず生の魚には、チアミナーゼ(アイノリーゼ)という酵素が含まれている。
この酵素は、せっかくビタミンB1を摂取しても分解してしまう成分。よく「魚を生で与えるのは避けた方がいい」と言われているのは、こういった理由からきている。
刺し身をお裾分けする分には問題ないが、与え過ぎには気をつけたい。
ちなみに、このチアミナーゼだが、熱を加えることによって活性が失われ反応が進行しなくなる。心配な時は念のため加熱してから与えよう。
子持ちガレイの卵は与えてもいいの?
カレイは一般的に夏から旬を迎え、寒くなると子持ちガレイがあがり、身と卵の美味しさを二度楽しむことができる。
もちろん、犬に与えても問題ないが、魚卵の近くには骨も多いので、魚卵を一度取り除きボロボロに崩したものを与えるのが良い。
また、カレイは小骨が多いので身の部分を与える際にも、骨は必ず取り除いてから与えよう。
さいごに
「左ヒラメの右カレイ」と言われるように、一部の例外を除き、左側に目があるものをヒラメ、右側に目があるのはカレイと見分けることができる。
しかし、両者とも生まれた直後は、左右に目がついているというのだから不思議なものだ。
カレイは見た目の割に…といったら失礼かもしれないが、実に様々な栄養が含まれていることが分かった。
魚の調理が面倒という飼い主さんも、そろそろ魚料理に挑戦といこうではないか。