犬が中耳炎になった!治療費や原因は、薬で治るの?

犬 中耳炎
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犬が首をかしげて蓄音機のスピーカーからの音を聴くポーズってありましたよね。

とこかのレコード会社のワンちゃんのように愛犬が頭を傾けていたらかわいいですが、いつもそのようなポーズだったなら、ちょっと気をつけてあげた方が良いかもしれません。

それは犬が中耳炎になるとこのような頭を傾けるようなしぐさをすることがあるからなのです。

あるいは耳を触ると痛がるなどして触らせないような時もそうなのかもしれません。

しかし、中耳炎はいきなり発症するのではなくその前に外耳炎を起こしているケースがほとんどです。

外耳は外から見える部分なので、飼い主さんが常に注意しておくことで進行を防げられるかもしれません。

ここでは犬の耳に起こる疾病について解説をしていきます。

 

犬の耳の構造はどうなっているの?

構造は人の耳とあまり違いがなく、耳たぶ(耳介)から神経までの構造はこのようになっています。

  • 耳介(耳たぶ)
  • 外耳(外耳道)
  • 鼓膜
  • 中耳(耳小骨、鼓室、耳管)
  • 内耳(三半規管、蝸牛)

蝸牛からは聴神経を経て脳に音の信号を伝えます。

大きく違うところは外耳道の形で、人はほぼ真直ぐなのに犬ではL字型になっており、垂直耳道と水平耳道と呼ばれています。

外耳道は毛が生えており、皮脂腺やアポクリン腺があり保護するための分泌物を出していて、それらとはがれた皮が混ざって耳あかとなります。

 

犬が中耳炎にかかるのはなぜ?

耳の炎症は起きた場所ごとに外側から外耳炎、中耳炎、内耳炎に分類されています。

ほとんどは外耳から始まって、それが進行して中から内に拡がっていくのです。

外耳が炎症を起こすのは、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどのアレルギー体質によるものが多いとされています。

また散歩中に草むらなどで草や実や種が外耳に入ってしまって炎症を起こすこともあります。

それが元で自浄能力が失われて細菌や真菌が増え、炎症がさらに進み拡がってしまうのです。

 

かかりやすい犬種

かかりやすい種類はこちらです。

  • フレンチブルドッグ
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
  • アメリカン・コッカー・スパニエル
  • コッカー・スパニエル
  • ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • プードル
  • トイ・プードル
  • シー・ズー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ラブラドール・レトリーバー
  • ミニチュア・ダックスフンド
  • 柴犬

このうちキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは外耳からの拡がりではなく、人と同じように耳管などから発症するとされています。

また、フレンチブルドッグは水平耳道が狭く閉塞してしまうことが多いために、洗浄ができず手術するよりほかなくなることがありますので、耳の状態にはいつも気をつけておきたいですね。

 

犬がこんなしぐさ見せたら外耳炎かも

一部の例外を除いて中耳炎は外から起こるので、まずは外耳炎に気をつけましょう。

耳に関してこんなしぐさを見せたら、かかりつけの獣医さんを受診して治してあげてください。

  • やたらにかゆがる
  • 痛そうなそぶりを見せる
  • 頭をしょっちゅう振るようになる
  • 周りを足で掻くことが増える
  • 片方の耳だけを下に向ける
  • 匂いをかぐと悪臭がする
  • 垢が良く出る

 

こんな状態になったら中耳炎かも

冒頭に書いた「首をかしげるしぐさ」は「捻転斜頸」と呼ばれていて特徴的です。

そのほかに顔面神経麻痺やホルネル症候群(神経の異常で瞳孔が小さくなる)などが現れたりします。

  • 外耳炎がいつまでも治らず再発が繰り返される
  • 耳垂れが多く見られる
  • 頭を横に振るしぐさが増える
  • ひどく痛がり、あくびでも痛がる
  • 大きな音でも反応しない
  • いつも頭を傾けている
  • くちびるが垂れたままになる
  • 眼の瞳孔が小さくなっている

 

犬の中耳炎はどのように検査するの?

耳鏡(内視鏡)、細胞診、レントゲン、CT、MRIなどを使います。

 

耳鏡(耳内視鏡)

以前は手持ちで覗き込む耳鏡で診ていましたが、犬の外耳道はL字型に曲がっているので目視では耳の奥や鼓膜が見えにくいものでした。

そのため、最近ではビデオオトスコープ(VOS)というモニターに耳の中を映す耳内視鏡が登場して、診断に使われています。

これによって奥までモニターの映像で調べることができるようになったのです。

また、この内視鏡を通してカテーテルや鉗子を奥まで入れられようになって、薬で洗うなどのほか、異物を取り出せるようになりました。

また、これによってポリープや腫瘍を見つけることもできて、生検鉗子を使えば簡単に生検を行えて、良性のものであれば取り除くこともできます。

なお、検査中に動かれると耳道を傷つける恐れがあるので、全身麻酔をかけます。

 

細胞診

耳あかや分泌物を採って、原因菌を調べます。

炎症を起こしている細菌や真菌の種類がわかれば、効果のある抗菌薬を選んで使えます。

 

レントゲン

骨の形や耳道の拡がりなどを確認できますが、これだけで確定診断をすることは難しいとされています。

麻酔をかけなくとも検査をすることができます。

 

CT、MRI

耳の中だけでなく、周辺の組織の様子もはっきりわかるので、とても有用な画像診断です。

長時間じっとしていてもらわなければならないので全身麻酔をかけて寝かせておくことになります。

 

犬が中耳炎にかかった時の治療方法は?

内服薬を投薬か、ビデオオトスコープを使うか、あるいは外科手術の施術となります。

 

内科的薬物療法

軽いもので痒みなどもないようであれば、抗炎症剤や抗生物質や抗真菌剤などを内服させます。

炎症を起こしていて痛みや痒みが強い場合には、全身麻酔をかけてビデオオトスコープを使って治療をします。

 

ビデオオトスコープによる洗浄

映像を見ながらの耳道内洗浄はとても効果的で、なかなか治らない外耳道炎で何日かおきに繰返し洗浄をするときれいになります。

また、鼓膜の奥まで炎症が拡がっているようなら、切開して小さな穴をあけて中にカテーテルを入れて薬液で洗浄をすることができます。

 

手術

外耳が塞がってしまっている時や、フレンチブルドッグなど元々耳道が狭い犬種ではビデオオトスコープを入れることができないケースがあります。

その際には手術で耳道を取り除いて、鼓室内を洗浄します。

顔面神経に近い場所での手術のため障害が起きることがあることや、ブルドッグのような頭短種では手術後に窒息を防ぐために気道を確保しなければならないなど、心配もありますが、成功すれば再発を防ぐのには有効手段です。

 

犬の耳の腫瘍にはどんなものがあるの?

腫瘍には良性と悪性のどちらもあります。

 

良性の腫瘍

  • 乳頭腫(パピローマ)
  • 基底細胞腫
  • 耳垢腺腫

 

悪性の腫瘍

  • 耳垢腺癌
  • 扁平上皮癌

これらが出来てしまった際の症状は炎症とほぼ同じです。

おおむね悪性では大きくなった腫瘍の形が崩れてグジャグジャになることや、出血する傾向があります。

良性では形がしっかりしていているので、ビデオトススコープで取り除くことができるケースがあります。

いずれにしても早く発見して処置が大切ですし、特に悪性の場合には放置してしまうと命にかかわることになります。

 

犬の中耳炎を予防するにはどうすればいいの?

ふだんからワンちゃんの耳の中をこまめにチェックしてきれいにしてあげましょう。

特に垂れ耳のレトリーバーやダックスフンド、コッカー・スパニエルなどでは耳道の通気が良くなく耳あかなどがたまりやすいため、常にきれいにしてあげてくださいね。

見る時には、デリケートな耳の周辺を傷つけてはいけませんので、飼い主さんは指の爪を切っておくようにしましょう。

そうじをする際は、洗浄液(イヤークリーナー)を使い、柔らかいコットンなどにそれを浸して指届く範囲だけで良いですから耳の中をきれいにしてあげましょう。

その間、大人しくしていたらほめてあげながらやってあげると良いでしょう。

ポイントは、皮膚を傷つけてしまわないようにするために綿棒を使わないことです。

それと、耳毛が伸びるワンちゃんでは、密生してしまうと通気が悪くなりますので、指先で届く範囲の毛を少し抜いてあげると良いとされています。

ただし、炎症が起きているような時は悪化させてしまいますから止めておきましょう。

なお、耳そうじは毎日やらなくとも、ひと月に1、2回でも大丈夫ですよ。

 

犬が中耳炎になった!治療費や原因は、薬で治るの?まとめ

犬の中耳炎の治療費は、軽症だとしても診察費と薬代を合わせて5,000円くらいはかかります。

数回は通院が必要ですし、手術になれば数万円から数十万円まで治療費がかかることもあります。

愛犬の耳をいつもチェックして、きれいにしてあげて中耳炎を予防しましょう。

見るだけなく臭いもかいであげて、悪臭が酷いようであれば耳の奥で炎症が起きているかもしれません。

また、耳を触ろうとすると痛がったり、かゆがっていつも足で耳を掻いているなどや、首を振ったり傾げたままであれば、動物病院で診察してもらいましょう。

愛犬の耳の中をきれいにしてチェックしてあげていれば中耳炎を防げるだけでなく、内耳炎にまで発展することを防げます。

内耳炎を発症してしまうと聴神経から脳にかけて炎症が拡がってしまい悪い影響が出て、てんかん発作などを起こしてしまうこともあるとされています。

そしてもし、それが腫瘍によるものであれば、放置してしまうことでやがて転移して手遅れになってしまいます。

そのような悲しいことにならないように、愛犬の耳をよく見てあげて、きれいにしてあげることを飼い主さんの習慣にしてしまいましょう。

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