犬の瞬膜が出たまま戻らない!?大丈夫なの?

犬 瞬膜
Pocket

犬の目頭あたりから出てくる膜があることを知っていますか?

それは瞬膜と呼ばれる第三のまぶたで、犬の目を保護するほかに涙を行き渡らせるなどの働きもしています。

この膜は意思で動かせるものではなく、目の玉が引っ込んだ時に出てきて保護する仕掛けになっています。

人間にはない面白い組織ですが、犬の瞬膜は何らかの誘因で出っ放しになって戻らなくなることがあり、ビックリさせられることがあります。

また、出たままにしておくと炎症が起きたりするほか、身体の異変を知らせるサインであることがあるので、獣医さんに診てもらうことをおすすめします。

ここではそんな瞬膜のメカニズムや、出っ放しになってしまう原因やその時の対処などを紹介します。

 

何のためにあるの?

まぶたは上下に動きますが、これは水平に動いて目を保護する半透明の膜です。

活用しているのは主に両生類、魚類(サメなど)鳥類、爬虫類で、彼らの中には自分の意思で自由に動かすことができるものがいます。

ワンコではこれを意思で動かす筋肉がなく、表面に傷が付くなど何らかの誘因があって眼球が奥に引っ込むと出てくる仕組みになっています。

さらには、眼球の後ろにあるクッション代わりの脂肪が病気などでやせてしまった場合などでも、落ちくぼんでこれが出てきます。

また、内側の付け根には瞬膜腺という組織がありますが、ここでは涙を作ることができます。

 

出ていても大丈夫なケースとは?

ワンコの意思で動かせるものではないのですが、いろいろなケースで見ることができます。

目を閉じる際に自動的に閉じるので、ちょっと眠くてウトウトしている時などで半開きになっていたりすると出っ放しになることがあります。

また、よく目を開けたまま眠るワンコがいますが、白目をむき出しにしているのかと思って近くによって見てみるとこれが出ているのです。

目を開けたまま眠るのは短頭種に多いとされていますが、それは頭の形から眼窩と呼ばれるくぼみが浅く、眼球が大きいとまぶたが自然に開いてしまうためです。

  • シー・ズー
  • パグ
  • ブルドッグ
  • ペキニーズ
  • ボストン・テリア

これらのワンコで見られますが、起きると元にもどります。

このようにこの膜の出方には種類差や個体差があってさまざまです。

そのため、ほかのワンコと比べてちょっと目立っていると思っても、心配ないことが多いのですが、もし気になるようでしたら、一度獣医さんに診てもらうようにすると良いでしょう。

 

疾患が元で出たり戻らなくなることがあるの?

目を閉じるなどの動作に関係なく出て、しかも戻らなくなってしまう原因には疾患によるものがありますので、気をつけるようにしてください。

 

チェリーアイ(第三眼瞼突出、第三眼瞼逸脱)

瞬膜の付け根が緩むことで飛び出した状態になり、炎症を起こして腫れるため赤く丸まってサクランボのように見えるのでこのように呼ばれています。

次のような症状が現れたら獣医さんの診察を受けるようにしましょう。

  • 出たまま戻らなくなる
  • さかんに気にして前足でこするような仕草を見せる
  • いつも涙を流しているようになる
  • 目が痛いような仕草をする
  • 目ヤニがたくさん出る
  • 頭をいつも傾けている
  • ふつうに歩くことができない

また、下記の種類のワンコで特に1歳未満の子に多く出やすいとされています。

  • チワワ
  • アメリカン・コッカー・スパニエル
  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
  • ペキニーズ
  • ボストン・テリア
  • フレンチ・ブルドッグ
  • ビーグル
  • バセット・ハウンド
  • セント・バーナード
  • シー・ズー

治療は抗炎症成分の入った点眼薬を差して、こすらないようにエリザベスカラーを装着します。

また、軽いものは綿棒などで押すと戻りますが、そのままにしておくとすぐに再発します。

飛び出したものを正常な位置にもどして縫い合わせるのが確実ですが、それでも再発する可能性は残ります。

以前は飛び出した部分を切除することもあったそうですが、これには涙を作る働きがあります。

切除してしまうと乾きやすくなってしまうため、現在は切り取らない施術が主流となっています。

また、これらの疾患は似た症状が現れるので気をつけなければなりません。

  • 扁平上皮癌
  • リンパ腫

これらの腫瘍は悪性のものが多いため、必ず獣医さんに診察してもらってください。

 

ホルネル症候群

目の周囲や首の辺りの交感神経が外傷などで遮断されてしまうことで、さまざまな症状が現れる疾患です。

ワンコにこのようなことが現れたら、獣医さんの診察を受けてください。

  • 瞳を見ると瞳孔が縮んでいる
  • 上のまぶたが下に垂れ下がってくる
  • 眼球が内側に落ちくぼむ
  • 飛び出した状態になる

片方だけに現れることが多いとされていて、交感神経が遮断される誘因となっている疾患を見つけて治さなければなりません。

誘因となる疾患としては次のものがあります。

  • 外傷
  • 炎症
  • 感染
  • 腫瘍
  • 中耳炎
  • 内耳炎

外傷には繋がれているリードが首に絡まって生じる例などが報告されています。

また、先天性の異常によるものもありますが、ほとんどは上記の外傷や疾患によって起こる特発性のケースが多く、原因不明とされるものも多く見られます。

特に多いとされる犬種はありませんが、以下のワンコたちに多く見られると言われています。

  • チワワ
  • ダックスフンド
  • ヨークシャー・テリア
  • トイ・プードル
  • ボストン・テリア
  • ペキニーズ

疾患が元で戻らなくなっていたら、できるだけ早く獣医さんの診察を受けるようにしましょう。

 

チェリーアイの手術とは?

術式として2つの方法があり、全身麻酔をかけて行われます。

 

ポケット法

膨らんだ部分の周りにメスで切れ目を入れてポケットを作り、その中に収納してポケットの口を縫い合わせて塞ぎます。

術後には消炎剤の点眼を1週間から2週間続けて、張れを引かせます。

小さく切るので侵襲が低く、回復が早いのですが、5%~10%は再発するとされています。

 

アンカー法

出てしまった部分を、眼球を支える筋肉に引っ掛ける(アンカーする)ようにして飛び出さないようにします。

眼直筋と呼ばれる筋肉に固定することが多いようです。

これらのほかにフロリダ法と呼ばれる術式もありますが、いずれにしても再発する可能性が1割前後あります。

また、長く放置したままで慢性化していると、周りの軟骨が変形してしまっていることがあり、そのケースでは軟骨を切除するなどして形を整えることがあります。

 

瞬膜フラップって何のこと?

ネットで検索しているとこの言葉を見かけます。

これは角膜に傷がついたりしておこる潰瘍など、なかなか治らない疾患の治療に利用することを指しています。

角膜潰瘍はなかなか治りにくい疾患として知られていますが、そのまま進行すると潰瘍を起こしている部分が薄くなって眼球に穴が開くこともあります。

それを治すために瞬膜で覆うようにしてまぶたに縫い付けて保護するのが瞬膜フラップです。

これによって角膜が空気に触れないため、ワンコの痛みを軽減できるばかりか、表面に血管ができるのが早くなり治りも早くなります。

  1. 下まぶたの内側にある瞬膜を引き出す
  2. それを上まぶたの内側の結膜に縫い付けて角膜を覆う
  3. 麻酔が覚めたら目を足で掻かないようにエリザベスカラーを装着する
  4. そのままの状態で3週間ほど放置する
  5. 問題がなければ抜糸して元の位置に戻す。

これだけの手順ですが、抜糸後3ヶ月ほどで潰瘍が消えてきれいになります。

これは次のさまざまな作用が効果をもたらすためとされています。

  • 涙を産生してうるおいを与える
  • 薬剤が長い間移行するようになる
  • リンパが存在していて免疫にかかわっている

ただし、実施している間は治っているかどうか様子を見ることができないために、抜糸してみなければ判定することができません。

ある意味ギャンブルのような治療法になりますが、有効な手段でもあるのです。

 

手術費用はいくらかかるの?

施設や進行の度合、によってかなりの違いがありますが、入院1泊として片目の治療でおおむね10万円程度はかかるとされています。

ポケット法で簡単なものであれば2~3万円程度で済むこともあり、薬で治すのと変わらないかもしれません。

また、瞬膜フラップの場合もやはり10万円程度としている施設が多いようです。

 

犬の瞬膜が出たまま戻らない!?大丈夫なの?まとめ

犬の瞬膜は人間にはない組織であるため、知らずに見た飼い主さんは驚くことでしょう。

しかし、犬は人間のように眼帯などで目を保護することができません。

犬にとって瞬膜は目を保護するために必要な組織です。

ただ、その開け閉めは犬の意思で行うことができず、眼球の動きなどで自動的にされるため、時に必要がないのに出てしまうだけでなく、出たきりで引っ込まなくなってしまうことがあるのです。

そうなると治すことができないために、動物病院に連れていかなくてはなりません。

そして、手術が必要となるとその金額は10万単位で必要となります。

後で後悔しないためにはペット保険に加入しておくことをおすすめします。

犬のチェリーアイなどの瞬膜の疾患は予防することができないため、飼い主さんがいつもこまめにチェックいてあげなければなりません。

>>合わせて読みたい!犬が角膜潰瘍になった!症状・治療法や悪化した際の手術費用までを解説