別名「アカオオカミ」とも呼ばれる野生の犬、ドールは、一般的にはあまり知られていませんが、近年、絶滅の危機にあるといわれている希少な犬種です。
中型犬サイズで、キツネのような顔つきを見るととてもかわいく、たまに近所でこんな雰囲気の雑種犬を見かけることがあり、なんだか親近感が湧いてきます。
が、ドールは野生の犬ですので、群れで狙った獲物を追い込んで狩るという獰猛で狡猾な一面も持っているのです。
今回は、この希少な野生の犬、ドールについてご紹介いたします。
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ドールってどんな犬種?
出典元:https://kids.sandiegozoo.org
ドールは体長75~110cm、体重は10~21kgの中型犬サイズで、尻尾は28~50cmとかなり長めです。
腹と手足の先は白、尻尾の先は黒で、その他は赤茶の毛色をしています。
肩から地面までの高さが40~55cmくらいと足はやや短めですが、筋肉質でしなやかな体つきをしており、いかにも狩りが得意そうな俊敏な見た目です。
ドールは、野生で群れで狩りをして生活しています。
狩りをする際、口笛のように高い声で鳴き仲間とコミュニケーションをとるという特徴があり、このため英語では「whistling dog(口笛を吹く犬)」という別名もあるのです。
広い地域、特に東南アジアに多く生息しており、北はカザフスタン、南はインドネシアでも見られます。
寒い地域では被毛が長くて濃いドールが、暑い地域では被毛の短いドールが見られるそうです。
そのように体の特徴を変えることで、しっかりと環境に順応して生きてきたのですね。
同じイヌ科でもオオカミとは別
「アカオオカミ」という別名を持ち、一見するとキツネのようにも見えるドールですが、学術的に、オオカミはイヌ科のイヌ属、ドールはイヌ科のドール属です。
またキツネもイヌ科に属しますが、彼らはキツネ属やハイイロキツネ属などの分類に属します。
彼らは見た目はやや似ていますが、まったく異なる種なのです。
Wild dog(野生犬)と呼ばれるドールとリカオン
出展元:https://zooofcuriosities.wordpress.com
ドールは主にアジア地域に生息していることから、英語では「Asian wild dog」や「Asiatic wild dog」(どちらも「アジア野生犬」の意味)や「Indian wild dog(インド野生犬)」という別名があります。
一方、ドールとやや見た目の似たリカオンというイヌ科の動物もおり、こちらはイヌ科リカオン属に属し、主にアフリカに生息していることから別名は「African wild dog(アフリカ野生犬)」です。
このドールとリカオンの2種の野生犬は、どちらも平地を疾走して群れで獲物を追い込み、持久戦で弱らせてから最後に仕留めるという方法で狩りをする点で共通しています。
さらにドールに関しては、弱った獲物の肉の柔らかい部分を集中的に攻撃して最後のとどめを刺すことが知られており、その残虐性から悪い印象を持たれることも少なくありません。
狩られる側の動物の恐怖を考えると、なんて残酷な、と思わずにいられませんが、これも自然界で生き残るための術、自然の厳しさなのでしょうか。
ドールは絶滅危惧種って本当?
出展元:https://www.theguardian.com
群れで巧みに狩りを行い、時にはトラやヒョウなどの大型の動物が仕留めた獲物を奪うこともあるドールは、たしかに生態系の上位に位置しており、脅威となる天敵はほぼいません。
にもかかわらず現在、ドールは絶滅危惧種とされているのです。
その背景には、ドールは家畜を襲うことがあるため、人間から害獣とみなされ懸賞金をつけられて狩られていたという歴史があります。
またスポーツ狩猟でも獲物が減ってしまう原因になるとして、多くのドールが駆除されてきました。
さらに人間の飼い犬から伝染した病気(ジステンパー病や狂犬病など)も、個体数が激減した原因の一つです。
このように人間との関わりが間接的にも直接的にも要因となり、ドールは絶滅の危機にまで追い込まれてしまいました。
このままでは近い将来絶滅してしまう可能性が高いといわれています。
ドールは動物園にもいる?
出展元:https://www.tokyo-zoo.net
以前は上野動物園でもドールが飼育されていましたが、残念ながら2016年7月に最後の1頭であったメスの「エリ」が死んでしまいました。
上の写真がその最後の1頭「エリ」です。
現在、日本でドールを見ることができるのは、横浜にある「よこはま動物園ズーラシア」のみで、オス1頭とメス2頭の計3頭が飼育されています。
まとめ
出展元:https://kids.sandiegozoo.org
日本ではあまり知られていない野生の犬ドールは、いかにも犬っぽいかわいい見た目と、野生らしい獰猛さを併せ持っています。
そして外国では家畜を襲う害獣として忌み嫌われきた歴史があり、現在は絶滅の危機に瀕しているのです。
2016年には韓国のSooam Biotech社がドールのクローニングを試みているという報告もありますが、何らかの策を講じることで、少しでも長くドールの犬種がこの世に存在し続けてくれるとよいですね。