イワシは日本近海でほとんど捕れる、安くて美味しい食卓の味方だ。
イワシのサイズは小さく「小魚」に分類されるが、その小さな体にはたくさんの栄養素が詰まっている。
私たち人間や犬が元気に生きるためのエネルギーを作る手助けをするビタミンB群、体の酸化を防ぐビタミンE、骨や筋肉の形成にも必要なカルシウムなど、さまざまな栄養素が含まれているのが特徴。
ほかにも、イワシには血中コレステロール値を低下させ、脳を活性化する働きを持つDHA(ドコサヘキサエン酸)や、血流を良くするEPA(エイコサペンタエン酸)なども含んでいる。小魚とはいえど、イワシは栄養の宝庫なのだ。
そんなイワシ。「犬は魚を食べてもよし」とされているが、なにゆえ小骨が多い魚でもある。
魚の種類によっては与え方も注意しなくてはいけないだろうが、イワシはどんな点に注意すればいいのだろうか?
ということで今回は、イワシの栄養と効能や、犬への与え方などについて紹介する。
イワシに含まれる犬に役立つ栄養と効能
DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHAは、脳や網膜などの組織を構成する成分でもあることから、脳の健康を維持して学習能力や記憶能力の向上、目の網膜や視神経での情報伝達の円滑、視覚回復のサポートなどにも期待がもてる。
また、高齢犬の認知症予防にも効果があるといわれている。
EPA(エイコサペンタエン酸)
DHA、EPAは共に「オメガ3系高度不飽和脂肪酸」という栄養素であり、科学的な構造も似ているため同じ効果を示すことがあるという。
EPAの主な働きは、血液中の善玉コレステロールを増やしてくれる作用がある。血管・血液の健康維持には重要な成分であり、血栓を予防してくれる効果があるとされている。
ビタミンE
ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、アンチエイジング効果が期待できる栄養素である。
また、強力な抗酸化作用で活性酸素を無毒化するといわれており、動脈硬化の予防に期待ができる。
カルシウム+ビタミンD
カルシウムは100gあたり70mgと多く含み、且つ、カルシウムの吸収を上げるビタミンDもイワシには含まれているので、効率よく摂取できるとされる。
骨や歯を丈夫にして骨粗鬆症の予防に有効と言われているので、手作り食をメインで作っている方は意識して摂りたい成分。
マグネシウム
血圧や体温調整、神経伝達には欠かせないミネラルのひとつ。
もちろん、過剰摂取は尿路結石を引き起こす要因にもなってしまうが、気にしすぎて摂取せずにいると欠乏症による神経障害や骨、血圧などに異常をきたす場合もある。
犬の健康維持には必要不可欠なマグネシウム。バランスよく摂取を心がけたい。
さまざまなビタミンB群
イワシには、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン(B3)、葉酸、パントテン酸(B5)を含む。
これらビタミンB群は基本的には炭水化物、脂肪、タンパク質の代謝に必要な成分である。つまり、人や犬にとっても生きるためのエネルギーを作るには欠かせない栄養素でもあるのだ。
またB群はどれかひとつだけでは効果を発揮しにくい成分。互いに助け合ってその機能を発揮するので、一つだけの大量摂取よりもバランスよく摂取することが大切だ。
与える前に知っておきたい2つのポイント
鮮度の良いイワシを与えよう
イワシ(鰯)は、魚へんに弱いと書くように、非常に傷みやすい魚だ。
そのため購入する際は、新鮮かどうか見極めたい。そのポイントとしては、
- イワシの背中が青光りしているもの。
- 表面にハリがあるもの。
- 黒い斑点がはっきりしている。
などが新鮮な証だ。
逆に目の周りが赤くなっているものは鮮度が落ちているので避けるようにしよう。
小骨を気にしない調理方法がおすすめ
ここからが本題となってくるのだが、イワシを開いてもどうしてもある程度の小骨は残ってしまう。
よく「骨抜き」という魚の骨を抜く毛抜きのような専用アイテムがあるが、抜いているうちに身がぐちゃぐちゃになるのでNG。
もっとも簡単な調理方法といえば、やはり圧力鍋だろう。これなら、気になる小骨も柔らかくすることができて時短調理にも便利だ。
また、栄養が溶け込んだ煮汁も活用すれば、イワシの栄養を余すことなく摂ることができてオススメだ。
なお、圧力鍋でなくとも普通の鍋で時間をかけて煮ることでもOK。コトコト柔らかくなるまでじっくり煮込もう。
犬にイワシを与える時の注意点
生で与えてもいいの?
イワシはもちろん生で与えても問題はないのだが、少しだけ知っておきたいことが2つある。
まず、1つ目はアニサキスによる食中毒に注意したい。
アニサキスを生きたまま体内へ取り込んでしまうと、のたうちまわるほどの激痛に襲われる。これは犬にも同様の症状が起こるとされているので、生で与える場合は「刺し身」として売られているものを選ぼう。
また、生のイワシにはチアミナーゼ(アイノリーゼ)という酵素が含まれている。
この酵素はビタミンB1を摂取しても分解してしまうのだ。よく「犬に生で与えるのは避けた方がいい」と言われているのは、こういった理由からきている。
刺し身をお裾分けする分には問題ないが、与え過ぎには気をつけたほうがよさそうだ。
黄色脂肪症(イエローファット)
イワシのような青魚は、不飽和脂肪酸が多く含まれている。
これ自体は悪い成分ではなく、コレステロールを下げて血液をサラサラにしてくれるのだが、過食してしまうと体内の脂肪を酸化させてしまい「黄色脂肪症(イエローファット)」になってしまう可能性がある。
その症状は、毛のツヤがなくなったり、お腹に脂肪のしこりができたりなど、主に猫がかかりやすい病気として知られているが、犬も食べ過ぎれば黄色脂肪症になってしまう可能性があると言われている。
イワシは栄養価が高く「体に良さそうだから」といっても、極端な偏食には注意してバランスのとれた食事を与えるようにしよう。
アレルギーがないか様子を見守ろう
アレルギーの原因となるものをアレルゲンと呼ぶのだが、実は食べ物全てにアレルゲン要素があることは知っておきたいところ。
初めて与える時は少量から与えて、痒がったり嘔吐したりしないか、愛犬の様子を見守ってあげるのも大切だ。
さいごに
魚は栄養もあって美味しい。しかし、正直言って下処理が面倒であったり、骨も気になるという方も多いのではないだろうか。
だが、実はイワシの下処理はそれほど難しくはない。小さなイワシは手で簡単に開くことができるのだ。
小魚とはいえど、栄養豊富なイワシ。ぜひ、愛犬ごはんのレパートリーにも加えてみてほしい。