犬に鍼治療は効果ある?ヘルニア治療の料金や名医を紹介

犬 鍼治療
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身体のツボに鍼を打って刺激することで「氣」の流れを整えるのですが、近年は犬に鍼治療を施術する獣医さんが増えていることをご存知でしょうか?

犬や猫にも動物には全てツボ「経穴(けいけつ)」があって、それらが「経絡(けいらく)」でつながっているのは人と同じだと言われています。

病気は「氣」の流れが乱れ、滞ることで起こるとされていますが、ツボを刺激することで「氣」の流れを正常に戻し自然治癒力が高まるとされているのも人と同じで、これにお灸も合わせて「鍼灸治療」と呼ばれているのです。

ここでは犬の自然治癒力を高めるとされているこの鍼治療について解説して、特に効果があるとされていて人気の高い椎間板ヘルニアへの効果についてもご紹介します。

 

鍼灸治療ってそもそもどんなもの?

鍼(はり)と灸(きゅう)は東洋医学がその基礎とされていて、漢方と同じように身体の持つ治癒力を引き出して悪いところを治すほか、「未病」と言って悪化する前に未然に病気を防ぐことを目的とするものです。

西洋医学が薬剤や外科手術などによって直接的に悪い部分を治療するのと比べて、間接的でもあり時間がかかるものの、身体に無理がかからない方法であるとも言えるでしょう。

世界保健機関(WHO)や米国率衛生研究所(NIH)などでもその効果は認められている療法です。

 

鍼灸治療の長所

何といっても高い安全性がその長所とされています。

特に犬においては全身麻酔による手術や人と同じ医薬品を処方することによる副作用は大きなリスクとなるのですが、体力がおとろえ気味の老犬や心臓などに疾患があっても安心して施術ができることはメリットと考えらえます。

 

鍼灸治療の短所

世界的に注目を集めていながら、医学的、科学的に効果を検討した論文が少なく、効果がないのではないかと疑われることが短所と言えましょう。

しかし近年、この治療への取り組みを始めた施設が増えていることから、いずれはしっかりデータ解析が為された論文を見るようになるかもしれず、今後に期待されています。

 

鍼を刺すのには資格がいるの?

人に対して行う「鍼灸治療」においては、それを実施する「鍼灸師」が知られていますが、実は「鍼灸師」という国家資格はありません。

それぞれ別に「鍼師」と「灸師」という2つの資格があって、それぞれは別に試験を受けなければならないのです。

ただ、実際には鍼も灸もどちらの資格も取って両方を施術している方が多く見られるために、どちらもできるということで「鍼灸師」とされるようになったとされています。

なお、人に施術するためには専門の学校や専門の学科のある大学、短大(3年制)を卒業した後に試験に合格してからでないと許されませんが、動物には獣医師免許があれば施すことができるのです。

そのために現在実施している獣医さんは、すでに以前から実施している施設でそのノウハウを勉強してから開始しているとのことです。

 

鍼灸治療の「鍼」と「灸」は何が違うの?

鍼は経穴に細い鍼を指して直接的に刺激を与え、灸は艾(もぐさ)を経穴の上に乗せて(直接乗せないのでヤケドをするようなことはありません)火を点けて関節的に熱で刺激する治療法です。

どちらも経穴に刺激を与える点では同じなのですが、ざっくり違いを分けると鍼治療の特徴は鎮痛作用が強く急性疾患に効果があるとされ、灸治療は冷えを伴う症状や慢性疾患に効果があるとされています。

しかし、個体差などがあるために一概に「この疾患ならこの方法を」と使い分けるものではなく、結局のところ臨機応変にどちらかを選びながら施術をしているのが実情のようです。

 

犬の椎間板ヘルニアに鍼治療が効くって本当?

鍼で経穴を刺激して得られる効果は人も犬も同じで、それによって神経系が刺激されるために痛みを和らげるホルモンなどが分泌されるほか、免疫力が高まるとも言われています。

それらのことから、膝、腰などの関節炎や神経疾患などに効くとされて椎間板ヘルニアの治療に期待されています。

西洋医学による椎間板ヘルニアには鎮痛薬やステロイドなどの服薬によるものがメインですが、対症療法でしかない上にステロイドの副作用が気になります。

また、ヘルニアでは外科手術も施され改善率の高さが評価されていますが、全身麻酔のリスクに不安を感じる飼い主さんは多いと思います。

特にシニア犬の飼い主さんはヘルニアで苦しむ愛犬への手術をちゅうちょされておられるのではないかと思います。

副作用やリスクが少ない鍼はシニア犬のヘルニアを治す手段として、ひとつの選択肢に成り得ると考えられます。

 

犬の椎間板ヘルニアのグレード分類と西洋医学での治療方針

椎間板ヘルニアは進行度によって5段階のグレードに分けられます。

  • グレード1:腰に痛みはあるが、神経のマヒなどが見られない
  • グレード2:歩く事ができるが片足が上手く動かせない
  • グレード3:歩くことが難しく、自分で立てないが痛覚はあり排尿はできる
  • グレード4:後ろ足はどちらもマヒ、足に痛みを与えると反応するものの排尿はできない
  • グレード5:グレード4に加えて、足に痛みを与えても反応がない

西洋医学ならばグレード3まではステロイドなどの内服療法が優先され、4以上になると手術の実施を勧められます。

鍼の施術においては全てのグレードがその対象となります。

 

鍼治療の効果はほかにもあるの?

鍼でツボ(経穴)を刺激して疾患を治すというメカニズムはこのようになります。

  1. 鍼を刺してツボを刺激する
  2. 皮膚や筋肉に傷が付く
  3. 傷を治そうとして周辺の細胞が活性化する
  4. 刺した刺激と細胞の活性化が経絡を伝わる
  5. 自然治癒力が活性化して免疫が高まる
  6. 疾患を治す

また、疾患を治すほかにも下記のような効果があると言われています。

  • 腰や膝の痛みを和らげる(ツボへの刺激で脳への痛みの神経伝達をブロックする)
  • 新陳代謝を高める(筋肉を弛緩させて血流を良くする)
  • 疲労回復(血流が良くなることで老廃物などが取り去られる)
  • 自律神経を調整する(交感神経を抑えて、副交感神経の働きを高めてリラックスさせる)

これらによって、犬が感じている痛みなどの辛い症状が改善されるのです。

 

犬に鍼を刺して大丈夫?痛がらないの?

鍼を刺すと聞くと注射針の痛みを想像してしまう方が多いことでしょう。

また、愛犬が予防接種の時に見せる、鳴いて痛がる姿を思い浮かべて二の足を踏んでしまうかもしれません。

鍼治療で使う鍼は、液を通さなくてはならない注射針と比べると、先端の太さはかなり細く、形も違うので痛みはほとんどないとされていて、実際にほとんどのワンちゃんが大人しく受けています。

ステンレス製のものが一般的で、最も細いものは0.12mmの細さで毛髪(約0,18mm)よりも細いのです。

刺すツボによって1cmから9cmほどの長さのものが使い分けられていて、たいていは使い捨てのものを使っていますので感染症など衛生的にも安心です。

 

鍼は刺しっぱなし?老犬に刺しても大丈夫?

目的によって時間は異なります。

刺してすぐに抜く時もあれば、しばらく刺したままにして放置しておくケースもあるのです。

刺している時間は、その間の犬の脈を取るなど様子を見て判断されます。

また、鍼に電気を通して刺激を与える電気鍼を施してくれる施設もあり、電気を流すと気持ちよさそうな表情をするワンちゃんは多いですよ。

先にも書いたように細くて痛みを感じないので、もちろん老犬にも安心です。

体力的に椎間板ヘルニアの手術に耐えられるか心配であれば、全身麻酔が必要なく副作用の心配もないおすすめできる治療法だと考えられます。

 

費用はいくら?名医っているの?

施設によって多少の差があると思われますが、平均すると1回の施術で5,000円くらいに設定しているようです。

椎間板ヘルニアの外科手術費用が検査料から入院費なども含めておおよそですが35万円ほどとされています。

と言うことは、70回通院すると手術1回と同じ金額になる感覚ですね。

また、犬の鍼治療にはいわゆる誰もが知っている権威や名医といったような獣医さんは残念ながら見当たらないようです。

しかし、今はインターネットでたくさんの情報があげられている時代です。

実施している先のホームページや獣医さんのブログなどで情報発信されているのを見かけ、そちらの情報の中にはたくさんの施術実績が報告されていたりします。

また日本中どの地域でも勧めている獣医さんがおられますので、ぜひそれらを参考に選ぶことをおすすめします。

 

犬に鍼治療は効果ある?ヘルニア治療の料金や名医を紹介・まとめ

東洋医学には西洋医学のようなデータによる科学的根拠がなく、これまでの歴史の経験則で積み上げてきた医学で、犬への鍼治療もその中にあって有効と考えられている治療法です。

西洋医学のステロイドなどの内服療法や外科的手術はエビデンスの裏付けがあり信頼できるものですがその反面、副作用などの心配があります。

犬の鍼治療は科学的根拠こそありませんが、椎間板ヘルニアなどに有効との報告がたくさん見られます。

また、そのほかの病気の症状に有効な報告も数多くなされています。

飼い犬が老犬、あるいは手術に耐えられないほど体力がないような状態ならば鍼治療の施術を検討してみてはいかがでしょうか。

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