犬の会陰ヘルニアをご存知でしょうか?
人間でいう脱腸のようなもので、会陰部(肛門周辺)の筋肉が何らかの原因で萎縮してしまい筋肉に隙間ができ、その隙間にお腹の中にある直腸や膀胱などの臓器が飛び出してしまう疾患です。
中高齢の雄犬に多く発症しますが、特に未去勢の雄犬に多く見られることから男性ホルモンが影響していると考えられています。
犬種ではポメラニアン、コーギー、ダックスなどの小型犬が罹患しやすい疾患です。
また、吠え癖のある犬やよく咳をする犬も腹圧がかかりやすいので要注意です。
犬の会陰ヘルニアはⅠ~Ⅳまでステージがあり、治療をしなければ症状は進行してしまいます。
軽症のうちは緊急性は低いですが、重症になると治療が困難になり命に関わるので、重症になる前に治療をすることが望ましいでしょう。
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会陰ヘルニアになると犬はどんな症状になる?
お尻の横が膨らんでたので、病院行ってきました
会陰ヘルニアでした。
去勢してないない年をとった雄犬に多いみたいです。
おしっことうんちがちゃんと出てるか様子見です。
今のところ大丈夫です🙆♀️ pic.twitter.com/0dI7h7Bkji— ポメラニアンまる (@marunouta) June 26, 2019
会陰ヘルニアは進行度合いや飛び出した部位によって症状が違います。
重症になるほど治療が困難になるので、思い当たる症状があったら早めに病院で検査をしてもらいましょう。
便秘になる
ヘルニア孔(筋肉の萎縮によりできた隙間)に直腸が飛び出ると排便が困難になります。
排便をする時に長い時間いきんだり、便の量が減ったりします。
または下痢や血便などの症状が出ることもあります。
排尿が困難になる
ヘルニア孔に膀胱が飛び出すと排尿が困難になります。
尿の量が少なくなったり出なかったりなどの排尿障害を放置すると、腎不全を起こし命に関わることもあるので早めに病院で処置をしてもらいましょう。
お尻が膨らむ
症状が進むと肛門脇の片側、もしくは両側がコブのように膨らみます。
コブの影響で尻尾の位置や肛門の向きが変わったりすることもあります。
犬が会陰ヘルニアになる原因は?
昨日から、かりんとうのような細いウ●チ。おしっこ回数も増えた?先生に電話したら「会陰ヘルニア」の症状とのこと。ただ、去勢してない犬に多く、コジロウは去勢していない。後ろ脚の関節症の悪化により、踏ん張りが利かないのか?ご存知の方いますか?#キャバリア#キャバリアルビー#シニア犬12歳 pic.twitter.com/sFliwuxtrR
— ぴのらん (@pinoran12) November 26, 2019
犬が会陰ヘルニアになる原因はまだはっきり解明されていませんが、中高齢以上で未去勢の雄犬に多く発症することから、男性ホルモン(アンドロゲン)が影響していると考えられます。
他にもクッシング症候群の犬は筋肉の萎縮から会陰ヘルニアになることがあります。
ホルモンの影響や病気または遺伝的要因などにより、会陰部(肛門周辺)の筋肉が萎縮してしまい隙間ができ、吠えた時や排便する時の腹圧でその隙間に内臓が飛び出てしまうと考えられます。
もし犬が会陰ヘルニアになってしまったら手術は必要?
#シベリアンハスキー #保護犬
今日は保護犬グレイ君の去勢手術と会陰ヘルニアの手術日です。
待ち時間の間、ツナグ母に遊ばれるグレイ君。おとなしく待てますよ〜🍀 pic.twitter.com/1E8qY51xk2— ツナグ (@petty0125) March 5, 2017
会陰ヘルニアを根治するには外科手術をしてヘルニア孔を塞ぐしか方法はありません。
高齢の犬や持病があるなどの理由で手術が受けられない場合は排便や排尿のケアが必要になります。
手術できない場合、会陰ヘルニアの対症療法とは?
ヘルニア孔に直腸が飛び出すと、腸管が湾曲して自力で便を出しづらくなります。
その場合は便を柔らかくする薬を与えて排便しやすくしたり、定期的に病院で採便してもらったりします。
膀胱が飛び出してしまうと尿道が湾曲して自力で排尿しづらくなりますが、この状態を放置すると尿毒症を起こしてしまうので大変危険です。
この場合には排尿を助けてあげるケアが必要になってきます。
病院で尿道カテーテルを設置もらい、1日2~3回尿を吸引する方法がありますが、この方法では膀胱炎を予防するための抗生剤を与えたり、犬がカテーテルをかみ切るのを防ぐためにエリザベスカラーを付けたりする必要もあります。
犬の会陰ヘルニアは放置していいの?
犬の会陰ヘルニアは進行する疾患ですから、放置すると症状が悪化してしまいます。
便秘や排尿困難な状態が続けば、犬が辛い思いをしますし、さらに症状が悪化して直腸の壁がやぶれたり腎不全などを起こすと命にも関わります。
犬の会陰ヘルニアには術式が様々
突然ですが、明日からラッキー入院します。
会陰ヘルニアの手術で1週間ほどの入院です💦
もともと下半身麻痺のラッキーは痛みなど感じておらず至って元気です😅
色々心配ですが
頑張ってくるんだぞ‼️#犬 #犬好きさんと繋がりたい #ダックス https://t.co/Kt49ORz5Bq pic.twitter.com/Nj3WLzq0yf— あやっぺ⚽🐶 (@pu_cyobiJJ) September 8, 2018
犬の会陰ヘルニア手術は症状によって術式が異なりますが、どの手術の目的もヘルニア孔を塞ぐことです。
飛び出してしまった内臓を腹腔内に戻し、筋肉の隙間を塞いで内臓が飛び出さないようにします。
目的は同じでも手術の方法は様々あり、大きく分けると2通りになります。
- 体の中の生体内組織を利用して塞ぐ方法(内閉鎖筋フラップ法・大臀筋フラップ法など)
- 人工物を使って塞ぐ方法(TIFプレート法・ポリプロピレンメッシュ法)
生体内組織を利用した手術
早期の会陰ヘルニアでヘルニア孔が比較的小さい場合には骨盤隔膜を構成する筋肉を縫い合せて隙間を塞ぐ手術が可能です。
人工物を使わない手術なので異物反応が起きないことと感染症のリスクが低いというメリットがあります。
しかし、手術後に筋肉の萎縮が進むと再発する可能性が高くなります。
また、会陰ヘルニアは発症して長期間経過するとヘルニア孔が大きくなり、筋肉が薄くなっている為これらを縫い合せる手術が出来ないことがあります。
その場合は会陰部に隣接する筋肉を利用して隔膜を再構築する手術になります。
ポリプロピレンメッシュを使った手術
以前は生体内組織を利用した手術が主流だったようですが、現在は人の鼠径ヘルニア手術に使用されるポリプロピレンメッシュを使った手術が開発されました。
メッシュを骨や靭帯と結びヘルニア孔を塞ぐ方法です。
このポリプロピレンメッシュを使った手術は成功率が高く、再発率は低く抑えられています。
人工物なので異物反応の可能性はゼロではありませんが、人の手術に使用される物なので異物反応は出にくいと考えられています。
犬の会陰ヘルニア手術にかかる費用は?
手術費は犬の大きさや症状によって多少変わってきますが、生体内組織を利用した手術の場合平均で5万〜7万円。
ポリプロピレンメッシュを使った手術の場合は10万〜15万円が平均的です。
犬の会陰ヘルニアは男性ホルモン(アンドロゲン)の影響が一因であると考えられますから、未去勢の犬は再発防止のために去勢手術も合せて行います。
去勢手術の費用は平均2万〜3万円です。
会陰ヘルニアの術後
術後は通常の排便や排尿ができるようになるまで入院して様子を見ますが、通常は4~5日で退院できます。
退院後は感染症予防のための抗生剤を与えたり、排便した後のおしりをきれいに洗い流すなどのケアをしてあげます。
問題がなければ術後1週間くらいで抜糸できます。
犬の会陰ヘルニアは再発しやすい?
犬の会陰ヘルニアは再発しやすいと言われています。
手術をしても、会陰部(肛門周辺)の筋肉の萎縮が進めば再発してしまいます。
この疾患は最初に左右のどちらかに発症することが多く、片側のヘルニア孔を塞ぐ手術をした後に反対側にヘルニアを発症することがあります。
その場合には反対側も同じようにヘルニア孔を塞ぐ手術をすることになります。
ですから、筋肉を萎縮を防ぐために去勢手術をする必要があるのです。
犬が会陰ヘルニアにならないために食事で気をつけること
潤之介
ゥシ🔥 便秘解消👍#フレンチブルドッグ #フレブル #犬 #わんこ #里親 #里親犬 #BUHI pic.twitter.com/O4BofwYSsy— アズぅ~⚽️👟👖🍖🍺 (@avirex_yokohama) March 25, 2021
日頃から便秘がちでイキむ事が多いと、腹圧がかかってヘルニアのリスクが上ります。
犬が便秘をしないように食事にも気をつけてあげましょう。
イも類や大根、りんごなどの食物繊維を多く含む食べ物は便秘に効果がありますが、与え過ぎると便が硬くなってしまい逆効果です。
便秘が重症になる前に適量を細かく刻んで与えるようにしましょう。
ヨーグルトやオリゴ糖も腸内環境を整え便秘改善に効果的ですが、こちらも与えすぎないように注意しましょう。
食事以外に水分不足も便秘の原因になります。
5kgの犬なら1日平均200~300ml、15kgの犬は600~900mlの水分を取らせてあげるのがよいでしょう。
犬の会陰ヘルニアまとめ
今日の散歩コースはモエレ沼☀
写真スポットが多くて大好きな公園です🐶🎶 pic.twitter.com/TwV72HfLeY— コーギー犬もこすけ♂9ヵ月🐾 (@mocosuke1106) April 15, 2021
会陰ヘルニアの症状はただの便秘として見過ごしがちですが、進行して重症になるほど治療が困難になります。
日頃から愛犬の様子を観察して、会陰ヘルニアの兆候があると気づいたら早めに病院で検査をしてもらい、重症になる前に治療をしてあげてください。
犬の会陰ヘルニアは未去勢の雄犬に多く発症する疾患ですから、去勢をすることでかなりリスクを下げることができます。
会陰ヘルニア以外にも前立腺肥大や肛門周囲腺腫など他の病気リスクも下げることができますから、若いうちに去勢をすることがこれらの病気の予防になります。
他にも吠え癖をなくすこと、便秘をさせないことも会陰ヘルニアの予防につながります。
ストレスや偏った食事は便秘や無駄吠えの原因となるので、日頃から充分な散歩でストレスを発散させてバランスのよい食事で腸内環境を整えてあげましょう。