ローズマリーは、地中海沿岸地方原産でシソ科に属するハーブのひとつ。
海辺で小さく可憐な青い花を咲かせることから「海のしずく」を意味する、Ros(露) marinusu(海の)の属名をつけられたのだとか。
ヨーロッパでは、教会、死者、生物を悪魔から守る神秘的な力を持つとされ、また記憶や友情を意味するローズマリー。その天然由来の成分は、ドックフードの酸化防止にも効果があるとされ多く使用されているほどだ。
もちろん、犬にローズマリーを与えてもOK。すっかり日本の食卓でもお馴染みの存在となったが、犬への与え方、注意点などをおさらいしてみたい。
ローズマリーに含まれる成分
森の香りにもたとえられる、針葉樹に含まれている樟脳のような強い香りのもとは、ピネンやボルネオ―ル、カンファ―、シネオールといった精油成分によるもの。
ポリフェノールも豊富に含み、別名「若返りのハーブ」ともいわれている。
古代から薬用に用いられ、記憶力を高める効果があるともいわれた秘密を見ていこう。
ロスマリン酸
ローズマリーには、ロスマリン酸といわれるポリフェノールの一種が含まれている。
これには抗酸化作用があり、アレルギー症状を抑える作用があるといわれている。また、ロスマリン酸をはじめローズマリーに含まれる数種類のポリフェノール成分は、非常に抗酸化力が強いため、天然の酸化防止剤としてドックフードに使用されることもある。
もちろん、人間の食品にも広く利用されているので、安全性が高いといえるだろう。
近年では、脳の機能や健康を維持する働きがあることが研究で明らかになっている。
ビタミンE
ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、アンチエイジング効果が期待できる栄養素である。
また、強力な抗酸化作用で活性酸素を無害化すると言われており、動脈硬化の予防に期待ができる栄養素だ。
カルノシン酸
カルノシン酸は、ローズマリーの葉に含まれる、抗酸化作用を持つポリフェノール。
食品では、防腐剤や酸化防止剤として使用される。また、口臭の原因となる微生物に対する抗菌作用を持っているため、歯磨き粉、マウスウォッシュ、スキンケア製品としても使用されている。
カルノシン酸を投与した動物実験では、脳梗塞による壊死を予防することができることが確認されており、アルツハイマー病やパーキンソン病への効果も期待されている。
ローズマリーを与える際の注意点
ローズマリーの安全性
欧米では誰もが知るローズマリー。
古い歴史を持つハーブの一つではあるが、医療目的で大量使用した場合の薬効作用に関しては、信頼のおけるデータはないようだ。
人の場合でも、香辛料としての使用程度であるため、犬に対してもトッピングや手作り食に少量加える程度にしておこう。
また、安全性においては次の事象の可能性が知られているので、愛犬に限らず飼い主さんも知っておきたい。
- ローズマリーに含まれる「カンファ―」が原因と考えられている、「てんかん発作」を誘発する可能性がある。
- 人でも妊娠初期など不安定な時期にローズマリーは禁忌とされている。少量なら問題ないだろうが、日常的に与えるのは避けたい。
エッセンシャルオイルの扱いには注意しよう
深い森を思わせる香りは、嗅ぐだけで集中力が高まりそうなので、日常の生活にも取り入れている方も多いだろう。
しかし、気を付けたいのはエッセンシャルオイル(精油)の取り扱い。
原液のまま犬の肌に触れたり、知らずに舐めてしまったりするのは非常に危険なので、保管場所には充分注意しよう。
また、市販の精油では、偽和(混ぜ物)が行われる例がある。カンファ―油、ユーカリ油、テレピン油、シダーウッド油の成分や、合成物質を添加したり、低グレードの精油を良品に見せるための処理が行われることもあるという。
エッセンシャルオイルは取り扱いにも注意が必要だが、オイルを用いてアロマ効果を得る場合にも、良品を選んで使用するようにしよう。
ローズマリーの与え方
いつものごはんにトッピング
ローズマリーを犬に与えるときは、「少量」をいつものごはんにトッピングしてあげよう。
主に食用に適するとされているのが、立性(たちせい)のローズマリー。なかでも、柔らかい香りが特徴的な「トスカナブルー」という品種がよく出回っているが、葉に幅があるため、細かく刻んでから与えよう。
また、手作り食の方は、鶏肉、豚肉、ラム、じゃがいも、いわしなどを調理する際に活用するのもよい。
ハーブティーにするのも良し??
ローズマリーが苦手な犬のために、ローズマリーティーにして与えるという手もあるが、ちょっとクセのあるハーブティーであるのが気になるところ。
そのため、ローズマリーティーにして与える時は、乾燥させた葉を使うよりも、フレッシュな「生葉」を利用した方が香りがソフトなのでおすすめ。
もちろん、そのままでは濃いので水で薄めてから与えよう。
あまり濃いローズマリーティーは神経を興奮させるので、薄める、与え過ぎないを心がけたい。
さいごに
成長すると高さ1.8メートルに達するローズマリー。
暑く乾燥した気候を好むが、耐寒性も高いため、初心者でも庭先やベランダなどで栽培しやすいといえるだろう。
これから、ローズマリーを育てるという方は、種かからではなく、苗からの栽培を。種から育てると収穫までに3年くらいかかるので、苗からの栽培がおすすめしたい。
食事に何かプラスしたいときに、自宅に1株あるとサッと摘み取れて何かと便利。ぜひ、愛犬の食事にもローズマリーを活用しよう。