日本では縁起物の食材となっている「餅」。
正月などのハレの日の行事には餅を供えるなど、祝い事には欠かせない食材だ。
正月以外でも、ひな祭りの菱餅、端午の節句の柏餅、お彼岸のぼた餅など、おめでたい日の食べ物として用いられる以外に、洋食やデザートにも使われるほどである。
今や、スーパーやコンビニに行けば簡単に手に入る餅。便利な小分けタイプもあり、手軽に餅料理を楽しむことができる食材のひとつだ。
しかし、犬に餅を与える時には、餅をのどに詰まらせてしまわないか気がかりだ。そこで今回は、餅は食べさせてもよいのか、どのようにして与えるべきかなど、餅について解説していく。
犬は餅を食べることができる?
まず、餅の原材料は「もち米」を加工して作られている。
粒状の米を蒸したて搗いた「つきもち」と、穀物の粉に湯を加えて練り、蒸しあげた「ねりもち」の2種類に大別されるが、成分的に犬が食べても何の問題もない。
次に消化だが、餅は米よりも消化しやすいため、犬にとっても問題はない。
しかし、問題はのどに詰まらせないかどうかだ。犬に餅を食べさせることを考えた場合、いくつかの判断基準はある。その内容は以下の通り。
- ゆっくり噛むことができるか(丸飲みしないか)
- 餅を噛み切ることができるか
- 熱い状態で食べられるか(餅は冷めると固くなる)
これは、犬に限らず人の場合にも当てはまることなのだが、犬の場合はこの判断基準をクリアすることはできない。
まして、「ゆっくりよく噛んで食べてね」と言っても、犬は人の言葉を理解できるものではない。餅は成分・消化ともに問題はないが、犬に与えるには適さない食材といえるだろう。
人間でも窒息事故がある
ちなみに私たち人間でも、餅でのどを詰まらせる窒息事故も多い。
主に、年末年始は家庭内で餅を食べる機会も増えるため窒息事故が多く、消費者庁から毎年注意喚起されているほどだ。
事故の多くは高齢者だが、子供や大人でもその危険性は十分にある。まして、犬は「早食い・あまり噛まない・すぐ飲み込む」といった習性があるので、より危険性は増すだろう。
犬に餅を与えるならどんな点に注意する?
餅は犬に与えるには適さないとはいえ、少しだけなら、食べやすくすれば、細かくすれば…と思われる飼い主さんもいるのではないだろうか。
飼い主さんが美味しそうに食べていれば、欲しがってくることもあるだろう。犬に餅を与えたい気持ちは当然だが、危険性があるだけに注意が必要である。
では、どんなことに注意すべきか把握しておこう。
餅を食べさせる際に注意すべきこと
- 餅をドロドロになるくらい柔らかくする
- 餅を小さくカットし少量だけ与える
- 犬から目を離さない
まず、初めて餅を与える際には、餅を柔らかくドロドロになるくらいまで柔らかくしよう。
また、犬が噛まずに丸飲みすることを考えて、小さくカットしていくのだが、餅は粘着力・付着力が高いので口に含んでから餅同士がくっついて塊になる可能性がある。
そのため、細かくしたとしても与える量は控えたほうがよい。餅の温度が低くなると、どうしてもくっつきやすくなるので、犬が食べやすい温度を考えると量は少ない方がよい。
しかし、いくら餅を柔らかくして、細かく少量だけ与えたとしても、想定外の事態が起こる可能性はある。与えないのが一番の得策だが、もし与える際は犬から決して目を離さないこと。これらの事は、最低限守ってほしい。
万が一、餅を詰まらせた時にはどうする?
ここまで、犬が餅を食べるリスクや気をつけるべきポイントなどを解説してきたが、交通事故と同じで、どんなに注意しても事故は起こるかもしれない。
たとえ飼い主さんがしっかりと見守っていたとしても、餅を詰まらせる可能性はゼロではない。盗み食い、ゴミ箱あさりもあるかもしれない。
しかし、いつもと変わった様子に気付くことができれば対処することはできる。ここでは、万が一、餅を詰まらせたらどうするか説明していこう。
いつもと変わった様子を見逃さない
いち早く対処するためにも、まず餅が詰まったことに気づくのが大切だ。
餅を食べて以下のようなサインが見られる場合は窒息状態となっている可能性がある。
- 食べた物を吐き出そうとする仕草をする
- 苦しそうな動作をする
- パニックになり暴れる
かかりつけの動物病院に即電話
犬が餅を詰まらせた場合、とにかく動物病院へすぐ電話しよう。
今やネットで「誤飲した場合の対処方法」を調べることはできるが、どの対処法がいいか…とやってるうちに、低酸素状態が続いてしまう。
しかし、かかりつけのドクターに連絡することにより、状況に合った必要な指示を的確に受けることができる。まずは連絡して指示を仰ぐのが一番早い対処法だ!
さいごに
餅は食べさせてもよいのか、どのようにして与えるべきかについて解説した。
日本人には古くから馴染みのある食べ物であり、さまざまな食べ方で私たちを魅了してくれるが、犬へのリスクを考えるとそう簡単に与えるべき食べ物ではないといえるだろう。