12月頃から旬を迎える「ブリ」。
魚類の中では、脂ののった身が特徴的な魚だ。
名前の由来も、脂多き魚であるため「アブラ→ブラ→ブリ」と言葉がなまって命名された説があるほど、ブリには脂がのっている。
そんな日本人には馴染みの深いブリ。犬にとっても必要な栄養素が含まれているため、与えた方がよい食材に分類されている。
与え方のポイントをしっかり押さえておき、冬場に脂がのって美味しくなるブリを愛犬と一緒に堪能しつくそう!
ブリ含まれる犬に役立つ栄養と効能
基本的にブリは年間を通して捕れる魚なので、脂が程よくのったブリを口にしたことがある人は多いと思うが、その美味しさだけではなく栄養も多く含まれている。
DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHAは、脳や網膜などの組織を構成する成分でもあることから、脳の健康を維持して学習能力や記憶能力の向上、目の網膜や視神経での情報伝達の円滑、視覚回復のサポートなどにも期待がもてる。
また、高齢犬の認知症予防にも効果があるといわれている。
EPA(エイコサペンタエン酸)
DHA、EPAは共に「オメガ3系高度不飽和脂肪酸」という栄養素であり、科学的な構造も似ているため同じ効果を示すことがあるという。
EPAの主な働きは、血液中の善玉コレステロールを増やしてくれる作用がある。血管・血液の健康維持には重要な成分であり、血栓を予防してくれる効果があるとされている。
ビタミンB1
ビタミンB1はエネルギー代謝に必要な栄養素といわれ、記憶力や認知機能を正常に保つ働きや、脈拍数や血圧が上がりすぎないように調節する。
別名、「神経系のビタミン」とも表現され、ビタミンB1の欠乏は運動失調や神経伝達に障害が発生しやすくなる。
ビタミンB2 (リボフラビン)
糖質、脂質、タンパク質を分解する酵素のサポート役として働く。
別名「発育のビタミン」とも言われ、発育促進に重要な役割を果たしてくれる。ほかにも、皮膚、被毛、爪などの細胞を作るためにも必要と言われている。
ナイアシン
ナイアシンはビタミンB3とも呼ばれ、基本的には肉や魚に多く含まれている成分。
糖質・脂質・タンパク質の代謝には欠かせない。循環系、消化器系・神経系などの働きをサポートしてくれる。
ビタミンB6
「ピリドキシン」とも呼ばれる水溶性ビタミンの一つ。
ビタミンB6はタンパク質をアミノ酸に作り変える働きがあり、効率よく体内へ取り込むには欠かすことのできないビタミンと言われている。
また、ビタミンB6を活性化するには、ビタミンB2の摂取も必要になってくる。ブリのようにビタミンB2も持ち合わせた食材は、まさに相性のいい食材と言えるだろう。
ビタミンD
食べ物以外にも日光を浴びることにより、体内でもある程度は作ることが可能なビタミン。しかし、犬は被毛があるため人間に比べて作られる量は少ないという。
ビタミンDは、骨や歯の健康には欠かせない、カルシウムやリンの吸収をサポートし、血中カルシウムの濃度をコントロールする働きがあると考えられている。
とはいえ、ビタミンDはカルシウムの吸収に役立つ栄養素だが、過剰摂取は高カルシウム血症の要因ともなってしまう。
ブリにはビタミンDが豊富に含まれているが、その豊富さゆえに与える量は少量にしておこう。
愛犬に与える前に知っておきたい2つのポイント
生で与えないほうがいいの?
「犬に生で与えるのは避けた方がいい」とされる理由のひとつに、ビタミンB1欠乏症がある。
どういうことかと言うと、ブリに含まれる成分の中にチアミナーゼ(アイノリーゼ)という酵素が含まれており、ビタミンB1を摂取しても分解してしまうことにある。
ビタミンB1は別名「神経系のビタミン」ともいわれ、記憶力や認知機能を正常に保つ働きがあるとされている。
ひと昔前は、私たち人間でもジャンクフードの偏食によってビタミン欠乏になり「脚気(かっけ)」と呼ばれる、心不全、末梢神経障害をきたす病気が発生して問題となったこともあった。
確かに、毎日欠かさず食べ続ければ欠乏する可能性はあるかもしれないが、極端な偏食、例えば「毎日愛犬にブリを与えています」といった食生活を続けなければ、そう怖がらなくても大丈夫だ。
ちなみに、このチアミナーゼだが、熱を加えることによって活性が失われ反応が進行しなくなる。心配な時は念のため加熱してから与えよう。
脂が多い分カロリーは高め!?
やはりあれだけ脂がのっていると、カロリーは高そうだが実際はどうなのだろう?
まずは生のブリと、養殖物の意味でも区別されるハマチとでカロリーを比較してみよう。
ブリ(生) | 257kcal |
ブリ(ハマチ/皮つき/生) | 251kcal |
ブリ(ハマチ/皮なし/刺し身) | 203kcal |
(※いずれも100gあたりの数値)
こうして見てみると、意外にもブリのカロリーは高い。
これは、同じグラム数で鶏肉と比較した場合、鶏ムネ肉(108kcal)、鶏ささみ肉(105kcal)の2倍以上にも匹敵するカロリーになってしまう。
ブリの刺し身でいうと、だいたい6~7切れが100gと思ってもいいだろう。
一度にそれほどの量を与えることはまずないだろうが、カロリーコントロールしている場合は、「焼く」「茹でる」などで、余分な脂を減らしてから与えるのがベストだ!
ブリに寄生虫っているの??
ブリ特有の寄生虫として「ブリ糸状虫(しじょうちゅう)」というものがある。
この寄生虫は食べても害があるものではないが、やはり寄生虫と聞くと口に入れるのは抵抗のある人が多いだろう。
しかし、ブリ糸状虫は天然物のブリにのみ寄生すると言われている。つまり、スーパーで売られている殆どは養殖物のブリであるため、安心して食べることができるのだ。
ただ、市場で天然のブリを買ったり、釣ってきたものには潜んでいる場合がある。
調理の際には、しっかりと取り除いてから与えるようにしよう。
アニサキスはいるの?
最近よく聞くようになった寄生虫アニサキスによる食中毒。
当然、ブリにも寄生するが、その状態が「天然物」か「養殖物」で、その寄生する確率も変わってくる。
主に、養殖されているブリは、餌の管理が徹底されているためアニサキスに寄生する確率は低くなるのだが、一方の天然物は、アニサキスの寄生したものを餌として捕食するため、養殖物に比べて寄生する確率は高くなってしまう傾向にある。
スーパーで売られている刺し身は養殖物がほとんど。加工の際も入念にチェックされているため寄生されている可能性はほとんどないだろうが、天然物を購入して刺し身でいただくときには注意が必要だ。
さいごに
水産庁の消費者動向を見てみると、サケ、イカ、マグロに続き、家庭で消費される魚介類の4位に位置しているブリ。
ブリは成長とともに呼び名も変わる出世魚としても知られており、ハマチ、イナダ、ツバス、フクラギなど、地方によりその呼び方が全く違うのも面白い。
今や養殖物も含め、一年を通してほぼ全国で水揚げされることもあり、もはや食卓でもお馴染みの食材だ。
生でも、加熱しても美味しく、栄養価も高い。部位によってもいろいろな食べ方もあるので、愛犬の食事にもぜひ活用してほしい。