古くから日本で利用されてきた和食の名脇役「ゆず」。
クエン酸が豊富で健康にもうれしい果物だ。
使われるのは主に皮の部分だが、果汁はポン酢や鍋物といったものにも使われる。強い酸味と独特の香りが特徴であるため、ほんの少量を料理に加えるだけでいっそう風味を増すことができる食材だ。
そんなゆず。入手する機会があれば、愛犬の食事にも使ってみたいが、酸味が強い分だけあって犬には難しいような感じもするが与えてもいいものだろうか。
そこで今回は、ゆずを与えてもいいのか?与えるとしたらどのような調理になるのか、どんな栄養が含まれているのか調べてみた。
【獣医師監修】班目美紀
ゆずは犬に与えてもいいの?
結論から先に述べれば、ゆずには「ネギ類」や「チョコレート」に含まれているような中毒症状を起こす成分は入っていないため犬に与えても問題はないと言えるだろう。
ただ、少し気になるのが、ゆずは香酸柑橘類のひとつであるということ。
柑橘類の中でも酸味が強いため生食には不向きとされるものを「香酸柑橘(こうさんかんきつ)」と呼び、レモン、ライム、スダチ、カボス、そしてゆずも香酸柑橘類に含まれる。
そのため、少量程度を与えるのであれば大きな問題になるようなことはないだろうが、与えて嫌がる場合は無理に与えないようにしよう。
ゆずを与える量は「少量」を心がけ、間違っても、犬の反応見たさに一気に与えることは避けたい。
ゆずに含まれる栄養について
ゆずには多くのビタミン類が含まれている。特にビタミンCとビタミンEに関して言えば、果汁よりも皮の部分に多く含まれているのが特徴だ。
ビタミンC
ゆずの皮に最も多く含まれており、果汁の3倍以上の含有量を誇っている。
ビタミンCの主な働きとして、活性酸素を無毒化する「抗酸化作用」が挙げられ、免疫力の向上、コラーゲンの生成を促すなど、身体の調子を整えるには欠かすことのできない栄養素なのである。
ビタミンE
こちらも皮に多く含まれているのが特徴で、果汁100g当たりでは0.2mgとほとんど含まれていないのに対し、皮には100g当たり3.4mgと豊富に含まれている。
ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、アンチエイジング効果が期待できる栄養素である。
また、強力な抗酸化作用で活性酸素を無害化すると言われており、動脈硬化の予防に期待ができる。
クエン酸やリンゴ酸
ゆずにはクエン酸やリンゴ酸といった有機酸も豊富に含まれている。
これらの有機酸は、運動で体に溜まった乳酸を排除し、疲労回復を助けてくれるのに一役買ってくれる。
また、クエン酸は吸収されにくい成分を吸収されやすい形に変えて吸収したり、体内の有害物質を排出しやすい形に変えて排出する「キレート効果」にも注目されている成分だ。
多彩なビタミンB群
ゆずには、ビタミンCやEといったビタミン以外にも、ビタミンB1、B2、B6、ナイアシン(B3)、葉酸、パントテン酸(B5)といったビタミンB群も含まれている。
ビタミンB群は基本的には炭水化物、脂肪、タンパク質の代謝に必要な成分である。つまり、人や犬にとっても生きるためのエネルギーを作るには欠かせない栄養素でもあるのだ。
上記以外にも、カルシウムやカリウム、鉄、リン、マグネシウムといったミネラル分もゆずには含まれている。
基本的にミネラルは、「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」の3大栄養素の機能をサポートしてくれる大切な成分である。
一見、ゆずにはそれほど栄養がなさそうなイメージがあるが、犬の成長には欠かせない成分が含まれているというのは嬉しいポイントではないだろうか。
犬への与え方と注意点
犬にゆずを与えること自体は問題ないのだが、ゆず特有の酸味は犬にとっては刺激が強すぎるだろう。
しかし、ゆずの酸味成分であるクエン酸には、鉄やカリウム、カルシウムなどのミネラル分の吸収をサポートする役割があるので活かしたいところではある。
一見、酸味が強いため与え方に困ってしまうゆずだが、一工夫することにより得られる効果がアップする。ここでは、犬への上手なあげ方や注意点について説明しよう。
与える部分は「皮」がオススメ
まず、果汁は酸味が強すぎるため与えるのは控えよう。ゆずは果汁より皮のほうが酸味も少なく、栄養も豊富なので皮を与えるのが良い。
それと、皮についてくる白い「わた」の部分は苦み成分を多く含んでいるので取り除こう。
また、消化を良くするためにも薄くスライスするのがコツだが、ゆずは冷凍も可能なので一度凍らせてしまうのも良い。冷凍すれば皮をすりおろしやすくなるので、ドックフードや手作り食など何にでもささっとすって、加えるのもいいだろう。
手作り食のサポートに
体の組織や機能を調整しているミネラルは、非常に吸収しにくい栄養素である。
だが、ゆずに含まれているクエン酸はキレート剤として働き、ミネラルの吸収を高めてくれる働きがあるのだ。
特に手作り食を与えている方は、カルシウムや鉄分などが不足しがちになってくる。完成した食事にゆずを少々加えると、ミネラル分の吸収をアップさせるのでオススメだ。
少量を目安に与えよう
ゆずに限らず、柑橘類の多くはクエン酸を含んでいる。適量であれば体にとって嬉しい成分であるのだが、大量摂取は中枢神経系の抑制、炎症などを引き起こす可能性があると言われている。
これは「大量」に摂取した場合での話であるが、こうした情報もあるということは知っておかなくてはならない。
私たち人間の場合、ゆずを大量に食べる、といったケースはないかと思うが、犬の場合も同様で刻んだものを1~2欠片食事に加える程度に留めておくのがいいだろう。
また、柑橘類の外皮に含まれるソラレンには皮膚炎を引き起こす原因にもなってしまう可能性があるとも言われている。
日本では「ゆず湯」といった、邪気払いの意味を込めて冬至にゆず湯に入る習わしがあるが、犬のゆず風呂は避けた方がよさそうだ。
さいごに
ゆずは1年を通じて流通しており、夏~初秋に出回るのが「青ゆず」、秋以降に旬を迎えるのが、みなさんがよく目にする「黄ゆず」だ。
美味しいゆずを選ぶなら、まず「におい」を嗅いでみること。香りがよく、皮が固く厚みのあるもの、皮がきれいで傷がないものがオススメだ。
ぜひ少量を心がけて、愛犬の食事にもゆずの栄養や風味をアクセントとして加えてみてはいかがだろうか。
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