縄文時代には主食として重宝されていた「どんぐり」。
その後も飢饉や戦争直後の食糧難時代によく利用されたのみならず、米の栽培が困難な東北の山村などいくつかの地域では、大正時代あたりまで主食級の食品として重要であった。
今では食生活が豊かになったこともあり、どんぐりを食すことは少ないものの、里山の食育や町おこしの食材として使われることもあるようだ。
そんなどんぐり、現代人ももちろん食べることはできるが、犬にとってはどうなのだろう。今回は、犬にどんぐりを与える際の注意点について確認しておきたい。
犬はどんぐりを食べても大丈夫
どんぐりには、犬が中毒を起こすほどの危険な成分は含まれていないのだが、注意しなくてはいけない成分が含まれている。
それが、タンニンやサポニンといった成分によるもの。
タンニンには組織や血管を縮める収斂作用(しゅうれんさよう)があり、下痢を改善する効果がある。
人の場合、この性質を利用して下痢止めとしても使われているのだが、半面、逆に摂りすぎは便秘になりやすくなってしまうこともある。
一方のサポニン。
血液中のコレステロールや中性脂肪など、血液中の余分な脂質を洗い流して肥満予防によいとされているが、こちらも大量に摂取すると腸の炎症要因になるとも言われている。
いずれも共通して言えることだが、「摂りすぎ」や「大量に摂取」は身体に良くないというわけだ。
ちなみに、どんぐり自体のおよそ半分弱がタンパク質、1割ほどが脂質、それ以外がタンニンやサポニンといった構成でできている。
結論としては、犬がどんぐりを大量に食べなければ基本的に問題ないといえるだろう。
道端に落ちているどんぐりを食べても大丈夫?
秋になると、道端や公園などにどんぐりが落ちていて犬がパクリとすることもあるだろう。
その光景を目の当たりにするとギョッとしてしまうが、まず口に一度入れたどんぐりを急いで取り除くのは避けよう。犬は口にしたものを横取りされると思い、逆に飲み込んでしまうからだ。
食べる直前に間に合えばいいのだが、もし間に合わなかったとしても、無理やり吐き出させようとはせず、ウンチと一緒に排出されるのを待とう。
翌日、または翌々日あたりにはウンチと一緒に排出されるのでよく観察しておきたい。
また、硬いカラを取り除いたとしても、どんぐりは渋み(主にタンニンやサポニン)が非常に強く、人間でもそのまま食用とするには適していないので注意を。
渋みがほとんどない一部の種(スダジイ、ツブラジイなど)もあるが、なにより判別することは難しいかと思う。そのため、落ちているどんぐりは犬が勝手に食べないようにするのが得策だろう。
時空を超えて食べてみる?
では次に、食べることを前提とした場合はどうやって食べるのか見ていこう。
ここでは、どんぐりの見分け方や調理方法、与え方などについて紹介していく。
どんぐりの見分け方
どんぐりといっても種類はたくさんある。
前項でも説明した通り、タンニンやサポニンの含有量が多いどんぐりは身体によろしくないので、「渋み」がほとんどないシイ類のものを選ぶ必要がある。
シイ類の中でも、もっとも食べやすく見た目も特徴的なのが「スダジイ」だ。実自体は鋭くとがっていて、薄い殻のような帽子におおわれているのが特徴。熟してくると、この帽子が裂けてくるのだが、この帽子に虫食いの穴がない、きれいなものを選ぶようにしよう。
どんぐりの調理方法と与え方
きれいなどんぐりを拾ってきたら、次はいよいよ調理の番だ。
まず、どんぐりの帽子部分を取り除き、ボウルなどに入れて水に浸しておく。すると、浮いてくるものがあると思うのだが、それは未熟な実や虫食いであるので取り除く。
次に、選別したどんぐりの水をよく切り、紙封筒に入れて電子レンジで加熱。火傷に注意しながら、熱いうちに殻を割り、中の白っぽい実を食べてみよう。
愛犬に食べさせる分は、そのままの形ではなく潰してから与えるのがよい。ただし、冷えると実が固くなってしまうので早めに食べることをおすすめする。
さいごに
どんぐりというと、子ども達の宝物、小動物が冬眠前にせっせと集める、そんなイメージではなかっただろうか。
ところが、米作りが始まる前は主食として食べられていたものだったのだ。現代ではなかなか食べるという概念がないどんぐりだが、私たちが日常の中で忘れがちな「採取して食べる楽しさ」というものを気軽に体験させてくれる。
犬には積極的に与えるものではないが、食べさせる時はスダジイを選んで調理し、ほんの少しだけお裾分けするようにしよう。
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