犬の人工呼吸って必要?心肺停止の症状で対処する方法

犬 人工呼吸
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「愛犬の呼吸も心臓も動いていない!」こんな状況は想像しただけでもドキドキしますよね。

しかし、一緒に暮らしている中で「ウチの犬に限って絶対にこのようなことはありえない」とは言い切れないのです。

危険は交通事故、海や川へ遊びに行った際の水難事故などの思わぬ事故だけではありません。

心臓疾患やてんかん、腫瘍などの持病があるワンちゃんが、ある日急に意識を失くすことは珍しくはありませんし、異物を誤飲して息が止まり心肺停止状態になることは、日常でふつうに起こります。

そんな時、愛犬への人工呼吸や心肺蘇生について知っておけば、大切な命を救うことになるのです。

脳に酸素が届かなくなることが長く続くと、もし命が助かっても大きな後遺症が残ることもあり、正しく対応しなければなりません。

ここでは愛犬の呼吸や心臓が止まってしまった際に飼い主さんがなすべきことをご紹介します。

 

急に意識をなくすことがあるのはどんな病気?

愛犬がこのような持病を持っていたら、突然意識をなくす、あるいは心臓が停止することがあるので気をつけなければなりません。

 

てんかん

急にけいれんを起こすなどが見られる「てんかん発作」は犬にも多く見られる特発性の原因不明な疾患です。

部分発作と呼ばれる軽いものであれば意識をなくすようなことはありませんが、重度の全般発作の場合は完全に意識を失くすことがあるのです。

てんかんと診断されて抗てんかん薬を飲ませている、あるいは手術をしたワンちゃんは、発作が起きたら要注意です。

遺伝的に起こりやすいとされる犬種はこちらです。

  • ダックスフンド
  • プードル
  • シェットランド・シープドッグ
  • シェパード
  • ハスキー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • ラブラドール・レトリーバー

 

脳腫瘍

高齢になると脳腫瘍ができやすくなると言われています。

呼吸中枢そのものに腫瘍ができて障害を起こすほか、大きくなり脳が圧迫されて障害が起こり二次性のてんかん発作を起こすのです。

以下の犬種には脳腫瘍ができやすいとされています。

  • ゴールデン・レトリーバー
  • フレンチブルドッグ
  • ボストンテリア

 

心臓病

拡張型心筋症や心房中隔欠損症などは意識を失くすことがあるとされています。

拡張型心筋症は心筋の異常で血液の循環がうまくいかなくなり、心房中隔欠損症は心臓の真ん中の壁に穴が開いてしまう疾患です。

 

犬糸状虫症

犬の心臓に寄生するフィラリアが引き起こす疾患で、意識がなくなるようなことがあります。

蚊が運ぶフィラリア幼虫が体内で成虫になって発症するため虫刺されには注意してください。

 

犬の呼吸と心拍を確かめるにはどうしたらいいの?

意識がないことがわかったら、次にしなければならないのは「呼吸があるか?」と「心拍があるか?」の2つを確認することです。

 

心肺蘇生をする姿勢で犬を寝かせる

ぐったりしているワンちゃんを右半身が下になるようにして寝かせ、呼吸をしているかと、心拍があるかの確認をしやすいように背中側にしゃがみます。

ここからの動きは一刻を争いますので、手早く行うようにしましょう。

 

呼吸をしているか?

耳や目での確認だけでなく、周囲がうるさいこともありますので手で触るなどの確認も大切です。

  • 胸元(肺のあたり)が動いているかを目で見て、手を当てて確かめる
  • 鼻の先に手を当ててみて、息をしているかを確かめる
  • 鼻の先に耳を近づけて、息が通っているか音を確かめる

 

心拍があるか?

手で心臓のあるところや足の付け根の内側など皮膚が薄い部分にある動脈をしっかり触って確認してください。

前足、後ろ足の親指、後ろ足の付け根の動脈がわかりやすいとされています。

それらを指先で探りますが、力を入れて押さえつけず、軽く添える感じで置くようにしてください。

心拍はそれだけでしっかりわかります。

パニック状態でいきなり脈を取ろうとしてもなかなかできないと思われますので、ふだんから心臓の場所や太もものの内側の脈を取って数える練習をしておきましょう。

 

犬が心肺停止状態になった!まずすべきことは?

愛犬の意識がなく、息をしていないだけでなく心臓が止まっていて脈がない!

これらのことが確認できたら、次にやるべきことをいつも頭に置いておきましょう。

 

動物病院に第一報を入れる

一刻を争います、至急かかりつけの獣医さんに連絡を取り、その支持をあおぎましょう。

もし、おでかけ中で遠い場合には近くの動物病院に連絡をしてかけ込むようにしてください。

 

犬の気道を確保する

意識がなくなると筋肉が緩み、舌がノドの奥に引っ込んで気道を塞ぎますので、呼吸をさせるために舌を引っ張って気道を確保してください。

犬の首をまっすぐにして、口に手を入れて舌をつかみ引っ張り出す

素手で滑ってつかめないようなら、ハンカチなどの布を使ってつかみ出す

のどの奥に異物などがあるようなら、すぐに取り除く

ここまでの確認や処置が全て終わったら、急いで心臓マッサージと人工呼吸を交互に施します。

 

犬の心臓マッサージのやりかたはどうすればいいの?

心臓マッサージは人に対しては体重をかけて胸骨を圧迫しますが、犬では骨折してしまう恐れがあります。

大型犬では多少体重をかけることがありますが、小型犬では指の力加減で行うこともあります。

  1. 心臓の位置を確かめる(左前足を動かした際にひじが当たるところです)
  2. 左右の指を絡めて心臓部分に置き、大型犬5~6cm、小型犬3~4cmほど沈みこませるように押す
  3. 1分間に100回ほどのペースで繰り返しマッサージをする

ポイントは押す力加減です。

弱すぎると心臓を動かせませんし、強すぎると肋骨を骨折させてしまいます。

 

犬に人工呼吸をするにはどうすればいいの?

人にするのと違って、犬の鼻に口を当てて行う「マウスtoノーズ」です。

  1. 寝かせた犬の背中側からあごをつかんで口をふさぐ
  2. そのまま鼻先を口で加えるようにして息を吹き込む
  3. 風船をふくらませるイメージで、肺がふくらんでいるか確認しながら何度か繰り返す

ポイントは息を吹き込み過ぎないことと、あごをつかんだ際に鼻筋を押さえつけないことです。

これを早めのテンポで4、5回繰り返したら、すぐに心臓マッサージをジ始めてください。

 

心臓マッサージと人工呼吸を繰り返す目安は?どこまで続けたら良いの?

1度やっても蘇生しない時には、どちらも蘇生するまで繰り返し続けます。

心臓マッサージを30回、人口呼吸を2回することを1セットにして繰り返します。

その合間に呼吸と心拍を確かめながら続けてください。

なお、心肺停止から1分ごとに救命率が10%近く低下すると言われているほか、5分以上たっても脳に酸素が送られないままでいると、蘇生したとしても脳に大きな後遺症が残る恐れがあるとされています。

そのため心配停止からの5分間で蘇生することが大切とされています。

まず素早く始めることと、蘇生するまであきらめずに続けることが肝心なのですが、心臓マッサージはする人がとても疲れる動作です。

そばにほかの人がいる場合は2分ごとに代わってもらうようにして、息を吹き返すまで継続してください。

 

犬の蘇生後には人工呼吸器がいるの?

動物病院にある人工呼吸器は呼吸器疾患のために呼吸を補助することや、手術の際の全身麻酔時に行う呼吸管理に使われるもので、心配停止の蘇生には使われません。

蘇生が上手く成功して、呼吸も心拍も戻り、さらに意識も戻ったならしばらく入院して様子を見ることになりますが、自発呼吸に問題がなければ、やはり人工呼吸器は使われることはありません。

しかし、意識がもどらず自発呼吸のみならず心拍も不安定な状態であれば、人工呼吸器を用いて呼吸の管理をしなければならないでしょう。

 

犬の心肺蘇についての新ガイドライン

心肺蘇生においてはスピードが勝負ですが、呼吸や心拍の有無を確認することにバタバタしているうちに、間に合わず命を落とすことがあります。

そこで新ガイドラインでは、早急に心臓マッサージを始めるとされていて、すでに意識がなく、胸が動かず息をしていないのであれば、心臓の動きにかかわらずマッサージをスタートさせましょう。

心臓が動いていたとして、そこにマッサージをしたとしても大丈夫なのです。

動いているかなどと確かめているヒマがあったら、少しでも早く心臓を動かした方が良いとの考えに変わってきています。

意識がなく呼吸をしていなかったら、マッサージを急いで始めるということを覚えておいてくださいね。

 

犬の人工呼吸器って必要?心肺停止の症状で対処する方法・まとめ

愛犬の呼吸が止まり、心臓が停止する、いわゆる心肺停止状態になる事は突然起こります。

飼い主さんがふだんから何も準備していないでいると、いざという時にパニック状態となって何もできず、愛犬が「虹の橋」を渡ってしまうことになるでしょう。

いつ起こるかわからない愛犬の心肺停止にいつでも対応することができるように心構えが必要です。

心肺停止となった愛犬を救うために、人工呼吸と心臓マッサージのやり方を練習しておきましょう。

そのために必要なのは、一つには愛犬の心臓のある場所を知っておくことです。

定期健診などでかかりつけの獣医さんから教えてもらっておくと良いでしょう。

そして、脈の測り方の指導も受けておくことをおすすめします。

愛犬の不測の緊急事態に対処するためにぜひ、ふだんから心臓マッサージや人工呼吸を学ぶことで心の準備をしておきましょう。

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