【獣医師監修】犬は松茸を食べても大丈夫?芳醇な香りだけではない!

松茸
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古くは「あきのか(秋香)」とも表現され、日本人に食されてきた松茸。きのこの中でも高級食材としても扱われており、高価なのでなかなか手が出せないが、旬の時期は1回だけでも食べてみたいものだ。

秋の恵みの代表格でもある松茸の旬は、秋。

日本全土に生息し、赤松や黒松、コメツガなどの林に生える。しかし、近年では松林の減少から国産松茸は希少な存在になってきている。そのため、スーパーで出回っているものの大半は中国産をはじめ、アメリカ、カナダなどの外国産である。

そんな、高級食材である松茸。運よく入手できたなら愛犬にも少し分けてあげたいところ。とはいえ、犬は毒キノコ以外であれば基本的には食べれると聞くのだが、松茸にはどのような栄養が含まれているのだろうか?

ということで、今回は松茸にスポットをあて栄養と効能、与え方のポイントなどを紹介していく。

【獣医師監修】班目美紀

専門家 監修
麻布大学獣医学部獣医学科卒。現在は動物病院で小動物臨床獣医師として勤務。

 

松茸は低カロリーながらも栄養をしっかり含んだ食材

松茸

松茸と言えば、香りや風味が注目されやすいが、100gあたり22kcalと低カロリーな食材。

栄養面では、骨や歯の健康には欠かせない、カルシウムやリンの吸収をサポートするビタミンDをはじめ、カリウム、カルシウムなどのミネラル分も含む。

 

一見、きのこ類は「そんなに栄養なさそう」と誤解されがちだが、栄養素もしっかりと含んでいる魅力的な食材なのだ。

 

ちなみに、松茸の独特の香りは「マツタケオール」や「ケイ皮酸メチル」といった成分によるもの。

日本人にとっては好ましい香りだが、欧米人には悪臭に感じられるという。私たちが良い香りだと思うのは、日本人に馴染みの深い大豆に近い香りであるのも理由かもしれない。

 

犬にとって役立つ栄養と期待される効果

松茸の栄養

ナイアシン

ビタミンB3とも呼ばれ、基本的には肉や魚に多く含まれている成分。
 
糖質、脂質、タンパク質の代謝に欠かせない。循環系、消化器系、神経系などの働きをサポートしてくれる。

 

ビタミンD

食べ物以外にも日光を浴びることにより、体内でもある程度は作ることが可能なビタミン。しかし、犬は被毛があるため人間に比べて作られる量は少ないという。

ビタミンDは、骨や歯の健康には欠かせない、カルシウムやリンの吸収をサポートし、血中カルシウムの濃度をコントロールする働きがあると考えられている。

犬は人間よりも必要量が多いと言われているので、不足しないよう摂取したい。

 

カリウム

ミネラルの一種。カリウムは、体に含まれている余計な塩分(ナトリウム)を排出する効果があることから、利尿作用血圧を下げる働きに期待ができる。

 

食物繊維
 

松茸は不溶性の食物繊維を多く含んでいる。便秘を予防する働きはもちろん、コレステロールの吸収を抑制する作用にも期待ができる。

 

まずは与え方の基本をマスターしよう!

 

犬に与える際は「加熱」が基本!

松茸せっかく入手しても、調理の仕方によっては食中毒になってしまう可能性があるのはご存知だろうか。

シイタケで言えば、生食後に体に湿疹がでる「しいたけ皮膚炎」や、えのき茸に含まれる「フラムトキシン」など、主に生食が原因によるものが多い。

 

人間でも、きのこの生食は「腹痛・嘔吐・下痢」といって食中毒症状が起きてしまうので、あえてリスクの高い「生食」に挑むのは避け、安全な加熱調理をしたうえで犬に与えるようにしよう。

 

 

腐りかけには毒がある!?

松茸には必須アミノ酸である「ヒスチジン」や「フェニルアラニン」といった、体に欠かせない成分も含まれているが、松茸が腐りかけてくるとこれらの成分が有毒物質に変化し、激しい中毒症状を起こすと言われている。

 

松茸はそもそも菌類の一種。その88%は水分で出来ているため、傷むのも早い。そのため、常温保存では2日程度、冷蔵保存の場合は4日程度を目安に覚えておこう。

それと、松茸を選ぶ時は、全体に汚れが少なく、傘が開いていないか要チェック。

軸に弾力があり太さが均一のものは、歯ごたえ、香りがよしとされている。風味が落ちやすいので、入手したらなるべく早く食べるのがベストだ。

 

松茸は食物繊維が豊富

きのこ類といえば食物繊維が豊富に含まれているが、松茸も例外ではない。

松茸の食物繊維は100gあたり4.7gと、きのこ類の中でもトップクラスの含有量を誇る。

そのため、与え過ぎは消化不良を起こす場合もあることは覚えておこう。せっかく愛犬に与えるのだから、消化不良で下痢や嘔吐になっては元も子もない。

 

食物アレルギーがないか様子をみよう!

アレルギーの原因となるものをアレルゲンと呼ぶのだが、実は食べ物全てにアレルゲン要素があることは知っておきたいところ。

初めて与える時は少量から与えて、痒がったり嘔吐したりしないか、愛犬の様子を見守ってあげるのも大切だ。

 

 

番外:野生のきのこはご用心

野生きのこ

一般的にキノコの種類は6万種を超えると言われており、その中で食用になるのは、およそ200種類なのだとか。

みなさんも、公園や道端に自生する『野生のきのこ』を見かけることはないだろうか?

毎年、秋になるときのこによる食中毒のニュースを見るが、野生のきのこは、生育時期、場所などで形態が異なり、毒きのこ食用きのこかを見分けることは大変難しいとされている。

中には、独特の臭いがある「きのこ」もあるので、犬が間違えて食べないよう、野生きのこには近寄らせないよう要注意だ。

 

さいごに

松茸

人工栽培が難しく、収穫量が減少している理由から、今もなお高級食材である松茸。

しかし、松茸の人工栽培の試みはすでに始まっており、徐々に技術が確立されている。兵庫県にある肥料メーカー多木化学株式会社では、香りも味も松茸に引けを取らない「バカマツタケ」の完全人工栽培に成功したと発表。3年後をめどに商業生産を目指すという。

 

松茸は高い栄養価があるとは言い難いが、実際には低カロリーでありながらも、犬にとっても必要な栄養素をしっかりと含んでいる。

大変貴重で高価な松茸。運よくいただくことができたなら、愛犬にもおすそ分けしたいものだ。

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