西暦1000年前後には中国で作られていたという「春雨」。
製造の過程で、直径約1㎜の小さな穴から春雨が流れ落ちていく様子が、春の雨を思わせるということで命名されたという。
日本に春雨が伝わったのは鎌倉時代とされているが、実は春雨という名が付いたのは昭和初期の頃。国内製造が始まってからの名称なので、意外にも最近つけられた名前なのだ。
そんな1000年の歴史を持つ春雨。害のある成分は含まれていないので、もちろん犬に与えても大丈夫なのだが、原材料によって種類が異なってくるのはご存知だろうか?
含まれている原材料によってはアレルギーが心配で犬に与えられない…とならないよう、春雨の種類・成分・与え方などをマスターしておこう。
春雨の種類
中国語では「粉条(フェンティヤオ)」、「粉絲(フェンス―)」、韓国では「당면(タンミョン)」と呼ばれている。
今では総称として、中国産、韓国産、日本産でも「春雨」と呼ばれているが、各国それぞれに原材料が異なる。
- 中国産・・・主に、緑豆やえんどう豆のデンプン質から作られる。緑豆とは日本ではあまり馴染みがないが、モヤシの原料ともされる豆だ。
- 韓国産・・・サツマイモのデンプン質のみで作られる。日本の春雨よりも太い麺であり、韓国の家庭料理の定番「チャプチェ」などに使われる。
- 日本産・・・日本の気候では緑豆の生育には向いていないため、国産のじゃがいもやサツマイモのデンプンを原料としている。どの程度の割合で配合されるかによって食感が変わってくるのも特徴だ。
春雨にはどんな栄養が含まれているの?
使われている原料が異なるため、含まれている栄養素に若干の違いはあるものの、中国産・韓国産・日本産でそれほど大きな差はないようだ。
では、実際の数値はどうなのか見ていこう。一般的な国産ものの数値は以下の通り。
※国産春雨/茹で/100g当たりの数値
- エネルギー・・・80kcal
- 水分・・・80.0g
- 炭水化物・・・19.9g
- ナトリウム・・・1mg
- カリウム・・・2mg
- カルシウム・・・10mg
- マグネシウム・・・1mg
- 鉄・・・0.1mg
- 食物繊維・・・0.8g
こうして見てみると、ビタミンにいたっては全く含まれておらず、ほとんど「炭水化物」しか含まれていないことが分かる。
ちなみに、緑豆春雨の方は「利尿作用」があるとか聞くが、調べたところ利尿作用に効果のあるカリウムは、同gで見た場合0mg。それどころか、カルシウム、マグネシウム、鉄といったミネラル分も、国産春雨より含まれていないことが分かった。
犬用ごはんのレシピに、ダイエット食材として紹介されているのも見かけるが、主食として扱うのは控えた方がよさそうだ。
春雨の与え方・注意点
春雨の戻し率は4倍。作りすぎないようにしよう
乾物には、水で戻した際の増加率を示す「戻し率」というものがあるのだが、春雨の戻し率は4倍。
つまり水で戻すと4倍の重量になるので、作りすぎないよう注意しよう。
春雨は基本的に茹でる
春雨を戻す基本的な方法は茹でることにある。
茹でたものを食べやすいサイズにカットしてから、トッピングや手作り食に加えるようにしよう。
しっかり戻しきっていないと、少し春雨に芯が残っていて固い場合があるので注意したい。
また、芋デンプンの春雨は熱に溶けやすい性質を持っている。茹ですぎると溶け出すので、あまり長い時間茹でるのは避けよう。
栄養が偏らないように与える量は控えよう
前項でも説明した通り、茹でた春雨の栄養のほとんどは炭水化物や食物繊維、水分といったもの。
当然、春雨が主食となってしまえば栄養が偏ってしまうので、他の食材とバランス良く組み合わせるようにしよう。
また、春雨のカロリーも意外と高い。いつもの食事に単純にプラスしてしまうと、あっという間にカロリーオーバーになってしまうので注意したい。
アレルギー
中国産・韓国産・日本産で使われている原材料が異なるため、以前それらの食材でアレルギーを起こしたことがある場合は注意が必要だ。
購入の際には、裏側のパッケージを確認のうえ選ぶようにしよう。
また、中国産のものでも使われている原料に「馬鈴しょ」と記載されているものもある。
馬鈴しょとは「じゃがいも」のこと。呼び名は中国から伝わった説が有力でなんとも混同しやすいが、じゃがいもと違いはないことは覚えておこう。「馬鈴薯」「馬鈴しょ」「ばれいしょ」と表記されていることが多い。
さいごに
今回ご紹介した以外にも、「ビーフン」や「フォー」など、見た目が春雨にそっくりなものもあるが、これらの原料は「米」。
ビーフンの原料は主にインディカ米で作られているが、近年では粘りを出すためや、コスト上の問題でとうもろこしのデンプンを使うことも多い。
一方のフォーも米を原料としており、その特徴や風味はほぼ同じだと言ってもいいだろう。
いずれも犬に与える際は、原料に使われている食材でアレルギーがないか必ずチェックしてから購入したい。