みなさんは「ヤーコン」という野菜をご存知だろうか。
見た目はサツマイモにそっくりなのだが、生のまま食すと、梨のような甘さと舌ざわりあることから「畑のナシ」とも呼ばれている不思議な食材だ。
アンデス生まれのこの野菜、日本でも徐々に知名度が上がっており、よく耳にするようになった人も多いのではないだろうか。
まだまだスーパーに大量に並ぶとまではいかない食材だが、「せっかく入手したのだから愛犬にも…」と思われる方もいるだろう。
ということで、犬はヤーコンを食べても大丈夫なのか?ダメのか?早速調査してみよう。
そもそもヤーコンってどんな野菜なの?
ヤーコンは南米アンデス高地が原産のキク科の植物である。
日本での主な生産地は、北海道や香川県で生産されており、食べ頃の美味しい旬は11~2月頃となる。
ほのかに甘みがあり、水分が多く、シャキシャキした食感で、生でも食べられるのが特徴だ。
また、ヤーコンが人気になってきた理由には、「フラクトオリゴ糖」がある。
腸の中で善玉菌を増やす整腸作用により排出を促すため、ダイエットの心強い味方とされるフラクトオリゴ糖。
ヤーコンには、野菜の中でもその含有量は多く、さらには抗酸化作用のあるポリフェノール、ミネラル、食物繊維なども豊富に含んでいる。おまけに低カロリーであるのも人気の秘密だ。
ヤーコンの栄養と効能
フラクトオリゴ糖
オリゴ糖といっても、その種類はさまざま。オリゴ糖はビフィズス菌を活性化させるが、実はすべてのオリゴ糖にその効果があるわけではない。プレバイオティクスを呼ばれるものに、その効果が認められているのだ。
フラクトオリゴ糖はプレバイオティクスとしての要件を満たすとして認められている食品成分。
主な効果として、整腸作用が挙げられるが、便の状態を良くすることにより、便の臭い「悪臭」を抑える効果でも知られている。
豊富なポリフェノール
ポリフェノールは酸化を防ぐ抗酸化物質の成分でもあるため、動脈硬化や血管の老化を防ぐ働きがある。
また、一緒に含まれるクロロゲン酸やフラボン類と共に活性酸素の除去に効果があり、発ガン予防や老化防止にも期待ができる。
カリウム
ヤーコンにはカリウムが豊富に含まれているのが特徴だ。
カリウムは、体に含まれている余計な塩分(ナトリウム)を排出する効果があることから、利尿作用や血圧を下げる働きに期待ができる。
近年、高血圧や脳卒中の予防などにもつながる重要な栄養素として注目されている。
マグネシウム
血圧や体温調整、神経伝達には欠かせないミネラルのひとつ。
もちろん、過剰摂取は尿路結石を引き起こす要因にもなってしまうが、気にしすぎて摂取せずにいると欠乏症による神経障害や骨、血圧などに異常をきたす場合もある。
犬の健康維持には必要不可欠なマグネシウム。バランスよく摂取を心がけたい。
ヤーコンの有害性
一般的にキク科の植物を犬が食べてしまうと、嘔吐や下痢などの症状を引き起こしてしまうと言われている。
ほかにも、キク科の植物にはアレルゲン物質の「セスキテルペンラクトン」が含まれている。これは、接触性皮膚炎の原因物質の一つとされており、キク科の植物との長期的な接触にによって皮膚炎が生じるもの。
しかし、セスキテルペンラクトンはキク科以外の植物にも多く含まれ、適度な量であれば動脈硬化の予防や治療の助けとなる成分でもある。
ただ、放牧家畜のように人間が繁殖させ飼育する動物では、過剰による毒性やアレルギー反応の原因となってしまうこともあるようだ。
ヤーコンもキク科の植物。つまり、ヤーコンも同じように危険な植物ではないのか、ということになる。
ちなみに、同じキク科の仲間である「春菊」もその有害性を指摘されているが、いずれも犬が春菊を食べて中毒を引き起こした症例はない。過度に与えたりしなければ、そうそう神経質になる必要はないのかもしれない。
だが、ハッキリとした確証がないだけに、わざわざ春菊を与えない飼い主さんも多い。
ヤーコンの与え方
前項で説明したように、ヤーコンには成分上のいくつかの懸念点はあるものの、一概に「ダメな食材!」と言い切ることはできない。
与える際は最低限の懸念点を理解した上で食べさせるようにしよう。
生で与える時はアク抜きが必要
ヤーコンは加熱せずに食べることができるが、調理する前には必ずアク抜きをしておこう。
スライスや千切りにして数分間、水にさらしておけばOK。ただし、ヤーコンの特徴でもあるフラクトオリゴ糖は水溶性であるため、いつまでも放置しておくと栄養が溶け出してしまうので注意したい。
また、アク抜き後は犬が消化しやすいよう、細かくカットしてあげるのも忘れずに。
柔らかく茹でれば消化にも優しい
栄養の観点からすれば、生で与えたほうが効率よく栄養を摂取できるヤーコン。
しかし、消化力の弱い犬や高齢犬などの場合は、柔らかく茹でてから与えるのがおすすめ。
愛犬の消化を一番に考えるなら茹でて柔らかくなったものを与えるのがベストだ。
ヤーコンは傷みやすく腐敗しやすい食材
ヤーコンは傷みやすく腐敗しやすい野菜であるため、購入したらできるだけ早めに使い切るようにしたい。
丸ごと保存する場合は、乾燥を防ぐために新聞紙などに包み、ビニール袋に入れて乾燥を防ぐようにして保存しよう。
また、使い切れずに残った分は、ラップでしっかり包み、必ず冷蔵庫へ保存すること。日が経つにつれて、フラクトオリゴ糖は減少していくので、栄養を重視したいなら早めに食べるように心がけよう。
さいごに
ヤーコンは、栄養豊富で低カロリーな食材だ。
比較的扱いやすいので、アク抜きさえしておけば、愛犬の食事にも簡単にプラスできる野菜として使える。
ヤーコンの栄養を重視するなら生で与えるのがベストだが、消化にあまり適さないというデメリットもあるので、愛犬の体調に合わせて生か加熱かを選びたい。
また、長期保存が困難な野菜であるため、早めに食べきることを前提に購入しよう。