お手頃価格で、1年を通して手に入りやすい「鯵(あじ)」。
刺し身をはじめ、煮てもよし、焼いてもよし、揚げてもよし、と調理方法もバラエティーに富んでいる食材だ。
栄養面でも、血液をサラサラにしてくれるDHAや、血中コレステロールを抑制する働きがあるEPAを多く含む青魚なので、積極的に食べたい魚といえるだろう。
そんな栄養豊富で価格も庶民の味方であるアジ。もちろん、犬に食べさせても大丈夫なのだが、与える前に少しだけ知っておきたいポイントがある。
ということで今回は、アジの栄養や効能、犬への与え方などについてご紹介しよう。
アジには必須アミノ酸がすべて含まれている
アジの栄養でまず注目したいのが、「必須アミノ酸」と呼ばれる、体内での合成ができないアミノ酸が全て含まれていることにある。
生きていくうえで必要不可欠な栄養素でもある必須アミノ酸。その種類や数は動物によって異なり、我々人間では9種類、犬は10種類と言われている。
アミノ酸はタンパク質の元となる大切な成分。血液や筋肉、骨、爪といった体全体を作る大切な栄養素なのだ。
アジの栄養や効能
DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHAは、脳や網膜などの組織を構成する成分でもあることから、脳の健康を維持して学習能力や記憶能力の向上、目の網膜や視神経での情報伝達の円滑、視覚回復のサポートなどにも期待がもてる。
また、高齢犬の認知症予防にも効果があるといわれている。
EPA(エイコサペンタエン酸)
DHA、EPAは共に「オメガ3系高度不飽和脂肪酸」という栄養素であり、科学的な構造も似ているため同じ効果を示すことがあるという。
EPAの主な働きは、血液中の善玉コレステロールを増やしてくれる作用がある。血管・血液の健康維持には重要な成分であり、血栓を予防してくれる効果があるとされている。
ビタミンE
ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、アンチエイジング効果が期待できる栄養素である。
また、強力な抗酸化作用で活性酸素を無毒化するといわれており、動脈硬化の予防に期待ができる。
カルシウム+ビタミンD
カルシウムは100gあたり53mgと多く含み、且つ、カルシウムの吸収を上げるビタミンDもアジには含まれているので、効率よく摂取できるとされる。
骨や歯を丈夫にして骨粗鬆症の予防に有効と言われているので、手作り食をメインで作っている方は意識して摂りたい成分。
マグネシウム
血圧や体温調整、神経伝達には欠かせないミネラルのひとつ。
もちろん、過剰摂取は尿路結石を引き起こす要因にもなってしまうが、気にしすぎて摂取せずにいると欠乏症による神経障害や骨、血圧などに異常をきたす場合もある。
犬の健康維持には必要不可欠なマグネシウム。バランスよく摂取を心がけたい。
さまざまなビタミンB群
アジには、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン(B3)、葉酸、パントテン酸(B5)を含む。
これらビタミンB群は基本的には炭水化物、脂肪、タンパク質の代謝に必要な成分である。つまり、人や犬にとっても生きるためのエネルギーを作るには欠かせない栄養素でもあるのだ。
またB群はどれかひとつだけでは効果を発揮しにくい成分。互いに助け合ってその機能を発揮するので、一つだけの大量摂取よりもバランスよく摂取したい。
犬にアジを与える際の注意点
アジを生で与えても大丈夫?
アジはもちろん生で与えても問題はないのだが、少しだけ知っておきたいことが2つある。
まず、1つ目はアニサキスによる食中毒に注意したい。
アニサキスを生きたまま体内へ取り込んでしまうと、のたうちまわるほどの激痛に襲われる。これは犬にも同様の症状が起こるとされているので、生で与える場合は「刺し身」として売られているものを選ぼう。
また、アジに限らず生の魚には、チアミナーゼ(アイノリーゼ)という酵素が含まれている。
この酵素は、せっかくビタミンB1を摂取しても分解してしまう成分。よく「犬に生で与えるのは避けた方がいい」と言われているのは、こういった理由からきている。
刺し身をお裾分けする分には問題ないが、与え過ぎには気をつけたい。
黄色脂肪症(イエローファット)
アジのような青魚は、不飽和脂肪酸が多く含まれている。
これ自体は悪い成分ではなく、コレステロールを下げて血液をサラサラにしてくれるのだが、過食してしまうと体内の脂肪を酸化させてしまい「黄色脂肪症(イエローファット)」になってしまう可能性がある。
その症状は、毛のツヤがなくなったり、お腹に脂肪のしこりができたりなど、主に猫がかかりやすい病気として知られているが、犬も食べ過ぎれば黄色脂肪症になってしまう可能性があると言われている。
アジは栄養価が高く「体に良さそうだから」といっても、極端な偏食には注意してバランスのとれた食事を与えるようにしよう。
アジは鮮度が命。食中毒には注意しよう
アジに限らず、魚は買ってきて速攻で冷蔵庫に入れなくてはいけない。
その理由は、魚は死後、アミノ酸の一種であるヒスチジンが、アレルギーのような食中毒を起こすヒスタミンを生成してしまうからだ。
特に、アジ、サバ、イワシのような青魚は、鮮度が落ちるのが非常に速いので注意が必要だ。
また、このヒスタミンは加熱しても減少しないので、冷蔵庫から取り出したらなるべく早く調理して食べる事。
気温が高い日には、保冷剤や保冷袋の利用も心掛けたい。
さいごに
「アジの旬は?」と聞かれても、あまりに日常的な魚のため、知らない人も多いのではないだろうか。
本来、アジは暖流性の回遊魚だが、日本沿岸に住み着いた「瀬付きアジ」なども含めると、種類や漁獲する地域によって旬が異なる。
旬についてはさまざまな見解があるが、夏が旬の魚として取り上げられている一方で、晩秋くらいのほうが脂がのって美味いという話もあるようだ。
一年中、スーパーなどで入手できる魚なので、時期や産地による味の違いを愛犬と一緒に楽しんでみるのも一興だ。