長いひげを生やし、調理すると腰が曲がることから、海の老人と書いて「海老(エビ)」。
日本人が大好きなエビは、古くから長寿を象徴する縁起物として親しまれてきた食材だ。そのプリプリした食感と濃厚な旨味に虜になっているエビラヴァ―も多いことだろう。
もちろん犬にエビを与えてもOK。あの鮮やかな赤い身の中には、犬にとっても豊富な栄養素が含まれているのだ。
ただ、犬に与えるにはいくつかの重要なポイントがある。それが、「加熱処理」「アレルギー」「与え方」の3つだ。今回は、この3つのポイントを中心に説明していこう。
【獣医師監修】班目美紀
加熱処理
刺し身として「生」で食べることもあるエビだが、エビに限らず多くの魚介類・甲殻類は「チアミナーゼ(アイノリーゼ)」という酵素が含まれており、ビタミンB1を破壊してしまう。
ビタミンB1は、別名「神経系のビタミン」。
チアミナーゼを頻繁に摂取し、ビタミンB1が欠乏することになれば、運動失調や神経伝達に障害が発生しやすくなるというわけなのだ。
では、なぜ「加熱処理」が必要なのか。その理由は、チアミナーゼは熱を加えることにより活性が失われるから。そのため、犬が安全に食すなら加熱したものを与えることが必須になってくる。
ちなみに、チアミナーゼを多く含むものには魚介類、甲殻類が一般的だが、ワラビやぜんまいなどのシダ類、酵母などにもチアミナーゼは豊富に含まれている。
アレルギー
エビには「トロポミオシン」というタンパク質が含まれている。
主に、イカやエビ、貝類などといった水生生物によるアレルギーの原因物質となるものだが、加熱することで若干量は減少するものの、その性質自体は変わらない。
アレルギーの原因となるものをアレルゲンと呼ぶのだが、犬に頻繁にエビを与えていると、これがアレルゲンとなって痒みや脱毛、そのほかのアレルギー症状を起こす可能性はある。
人の場合でも、エビはアレルギーを起こしやすい食品として「特定原材料」に指定されているほど。飼い主さんはエビにアレルギーがなくとも、愛犬がアレルギー症状を起こす可能性は十分にあることを忘れてはならない。
初めて与える時は少量から与えるのはもちろん、痒がったり嘔吐したりしないか、愛犬の様子を見守ってあげるようにしよう。
与え方
ここまで、加熱処理やアレルギーについて説明してきたが、一番重要なポイントになってくるのは「与え方」といっても過言ではない。
せっかくエビを加熱して安全にしようが、アレルギーの知識を持っていようが、与え方次第では無意味になってしまうことも。ここではエビの与え方について紹介しよう。
下処理
まず、頭や皮はそのままに、背にあるワタを爪楊枝などで取り除く。※背ワタには砂が入っているが特に害はない。
皮なしのむきエビの場合は塩をまぶして揉み込み、洗い流せばOK。これで下処理は完了だ。
殻ごと茹でる
フライパンで焼くのもアリだが、しっかり火を通したいので茹でることをオススメする。
手順としては、沸騰した湯に、頭や皮が付いたままエビを投入。2~3分ほど茹でたらザルにあけ、自然放置して粗熱が取れるのを待つ。
こうすることにより、中までじっくり火が通り、パサパサにならないプリプリのエビが完成する。殻ごと茹でることにより、身の縮みも少なくなるのでぜひ試してみて欲しい。
与え方
茹でたからと言っても、頭や殻ごと与えてしまっては消化不良になるので丁寧に取り除こう。身の部分は食べやすいサイズにカットすればOKだ。
また、取り去った頭や殻は、カルシウムやアスタキサンチンなどを含む貴重な栄養源であり、いい出汁がでる。殻が入らないようにザルで濾してからフードに加えるのもオススメだ。
エビの栄養
タンパク質
エビには皮膚、毛なみ、免疫組織など、犬の健康を維持するのに必要なタンパク質が多く含まれている。
茹でたものだと100gあたり約21.4g、干したものだと100gあたり約48.6g含まれているのだ。タンパク質が多い食材といえば肉や魚だが、エビを茹でたものであれば同程度、エビを干したものは、これらの2倍も含まれる。
また、エビは脂質が少ないのも特徴だ。肉のように脂質が多く含まれている食材とは違うため、比較的タンパク質を摂取しやすいヘルシー食品だといえるだろう。
ビタミンE
エビには、ビタミンEも多く含まれている。
ビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、アンチエイジング効果が期待できる栄養素である。
また、強力な抗酸化作用で活性酸素を無害化すると言われており、動脈硬化の予防に期待ができる。
カルシウム
エビはカルシウムも豊富だ。特に殻や尻尾に多く含まれているので、これらが食べやすい干しエビがおすすめ。
特に桜エビには多く、100gあたり約2000mgのカルシウムが含まれている。これは、カルシウムが多いと言われている煮干しとほぼ同じ量だ。
カルシウムは骨や歯を作るのに必要な栄養素。それなりのドックフードを与えていれば、カルシウムを不足することはないだろうが、手作り派の方は不足しないよう意識して摂取したい成分でもある。
さいごに
エビは甲殻類ではあるが、しっかり下処理をすれば消化に悪い食材ではないので、与え方さえ間違えなければ犬にも与えられる食材だ。
ただ、人でもエビはアレルギーを起こしやすい食材として知られているように、犬もアレルギーには十分気をつけなければならない。
美味しいうえに、ヘルシーであり、栄養価も高いエビ。ぜひ与え方のポイントをマスターして愛犬にも与えてみてはいかがだろうか。
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