「ワカサギ」といえば冬の魚。
凍った湖面に開けた穴から釣り糸を垂らし、寒さに震えながら釣りを楽しむ氷上穴釣りは、日本の冬の風物詩の一つだ。
近年では、手ぶらで行っても釣り道具をレンタルできて気軽に楽しめることから、冬のレジャーとしても人気が高い。釣ったワカサギをその場で天ぷらにして食べるのは最高の贅沢だといえるだろう。
そんなワカサギの旬は「桃の節句」の前後。つまり、桃の花が咲き始める3月3日付近が、最も脂が乗って美味いのだという。
もちろん、ワカサギを犬に与えても大丈夫なのだが、どうやって調理するの?と、疑問に思う方も多いのではないだろうか。
せっかく入手しても、何だか生臭い(泥臭い)ので食べられない…とならないよう、下処理の方法からワカサギの栄養、与え方について解説していこう。
ワカサギに含まれる栄養
寿命はおおむね1年で、産卵を終えると死んでしまうというワカサギ。寒冷な地域では2年、3年と生きる個体もあるとされている。
ミジンコやヨコエビなどの動物プランクトン、魚卵、稚魚などをエサとしているようだが、栄養などあるのだろうか?
ビタミンA
ワカサギはビタミンAを含む数少ない魚のひとつ。
ビタミンAは、動物由来のレチノールと、植物由来のβカロテンに区別される。ワカサギに含まれるビタミンAはレチノールに区別され、活性化ビタミンであるため体内で変換する必要がない。
ビタミンAには粘膜を強く丈夫にする作用があることから、目・口・鼻・喉・皮膚などの健康維持をサポートしてくれる。
また、体を酸化から守ってくれる抗酸化作用をもち、ガンの抑制効果もあるとされている嬉しい栄養素なのだ。
カルシウム+ビタミンD
カルシウムは100gあたり450mgと多く含み、且つ、カルシウムの吸収を上げるビタミンDもワカサギには含まれているので、効率よく摂取できるとされる。
骨や歯を丈夫にして骨粗鬆症の予防に有効と言われているので、手作り食をメインで作っている方は意識して摂りたい成分だ。
カリウム
カリウムは、体に含まれている余計な塩分(ナトリウム)を排出する効果があることから、利尿作用や血圧を下げる働きに期待ができる。
近年、高血圧や脳卒中の予防などにもつながる重要な栄養素として注目されている。
ビタミンB12
ビタミンB12は補酵素として、タンパク質、炭水化物、脂質などの代謝を助ける働きがある。
また、造血ビタミンの一つであるビタミンB12は、赤血球の生産には欠かせない栄養素でもあるため、老化防止、貧血防止、タンパク質合成などに効果を発揮する成分ともいわれている。
必須アミノ酸
生きていくうえで必要不可欠な栄養素でもある必須アミノ酸。その種類や数は動物によって異なり、我々人間では9種類、犬は10種類と言われている。
アミノ酸はタンパク質の元となる大切な成分。血液や筋肉、骨、爪といった体全体を作る大切な栄養素なのだ。
ワカサギの下処理方法
さて、せっかくワカサギを入手しても、美味しく食べることができなければ意味はない。
ここでは、釣って持ち帰ったものや市販のワカサギの下処理の方法をご紹介していこう。
釣ったワカサギの下処理方法
釣りあげたワカサギは、湖水を入れたバケツなどに生きたまま入れておいて、泥や食べたもの、フンを出させてから持ち帰るのが基本。
その後、クーラーボックスに入れて持ち帰るのだが、ワカサギは鮮度落ちが早いので、できる限り早めに下処理をしよう。
まず、ボールなどにワカサギを入れて塩を振り、軽くこすってウロコの臭み(ヌメリ)を取る。その後、水で洗い流して、塩をして少し放置。すると、水分が出てくるのでもう一度水で洗う。
この時、臭いが気になる方は、牛乳にしばらく浸けておくと良い。こうすることにより、臭みはほぼ無くなるので気になる方は試してみて欲しい。
また、釣ったワカサギの内臓(胃の内容物)は泥臭い場合が多い。
そのため、内臓は取り除いてから調理するのがおすすめ。手順としては、以下の通り。
- 片方の手で、ワカサギの「下唇」を指でつまむ。
- もう一方の手で、ワカサギの頭の下の硬い「骨」があるので、そこを掴む。
- 頭の下の骨をしっかり掴んだまま、下唇を少しずつひっぱり内臓を引き抜く。(※下あごとともに抜き取るイメージ)
小さいので手間かもしれないが、ワカサギの内臓は指で簡単に取れるのでぜひお試しを。
市販のワカサギの下処理
小売りされているワカサギは、釣りによって獲られたものではなく、ほとんどが「地引網」や「刺し網漁」で獲られたものがほとんど。
もちろん、釣っているわけではないので、釣りエサによる内臓臭さの心配はない。そのため、内臓を取り除く必要はなく、よく洗って調理することが可能。
ただし、鮮度が落ちやすい魚なので、やや鮮度の落ちたものは、内臓を取り除くことをおすすめする。
ワカサギの与え方・注意点
犬への与え方
まず、成長した親魚では骨が太くて硬いが、小ぶりなものは骨も細くて柔らかいので、犬に与えるワカサギは小ぶりなものを選ぶとよい。
また、ワカサギといえば「天ぷら」にして食べるのが美味いが、犬に与えれば胸やけ・胃もたれの原因になってしまうので避けよう。
そのため、調理方法としては「茹でる」のがベスト。小ぶりのものであれば、煮込むと骨も柔らかくなるので丸ごと与えることができる。もし、小骨が気になる方は身の部分をほぐしてから与えてもOKだ。
肝吸虫が寄生している場合があるので「生」では与えない
肝吸虫(かんきゅうちゅう)とは、人や犬などを含む哺乳類などの肝臓内の胆管に寄生する吸虫の1種。
そのため、寄生されると肝臓から胆汁が流れにくくなり、肝臓で炎症が起こる。主な症状としては、だるさを感じたり、下痢といった症状が起こるとされている。
成虫になると20年以上生きると言われており、肝吸虫症が進行すると肝硬変に移行する。
肝吸虫は、特にコイ科のモツゴに効率で寄生するが、ワカサギをはじめ、フナやコイ、タナゴにも寄生するという。くれぐれも、ワカサギを生では食べないことが大切だ。
さいごに
普段食べる機会が少ないワカサギだが、スーパーや釣りで入手する機会があれば、下処理をマスターしてぜひ食べてみよう。
しっかり下処理することができれば、ワカサギはとても美味しいお魚だ。
また、ワカサギは新鮮さが全てになるので、入手後は速やかに調理することも心がけよう。もし可能なら、釣ったワカサギは生きたまま持ち帰るのがベストである。