「ししゃも」と聞いて、みなさんはどんなイメージをお持ちだろうか?
もしも、スーパーなどで100~200円程度で購入できるししゃもを想像したならば、それは間違いである。
基本的にスーパーに並んでいるものは外国から冷凍輸入されたもの。よく見ると「カラフトシシャモ」などと表示されているため、ししゃもだと思ってしまうが、実はししゃもではなく「カラフトシシャモ(カペリン)」という別な魚なのだ。
他にも、北海道産の「キュウリウオ」という魚もししゃもの代用品として売られている。商品名は「子持ちししゃも」と書かれていることが多いので、ししゃもだと思って買ってしまう人もいるのだとか。
今回は、意外と知らないししゃもの違いから、犬に与えることが可能なのか考察してみよう。
そもそも本物のししゃもとは?
まず生物学上で見てみると、スーパーなどに並ぶ輸入物の多くは、サケ目/キュウリウオ科/カラフトシシャモ属/カラフトシシャモに分類されている。
だが、本物のししゃもは、サケ目/キュウリウオ科/シシャモ属/シシャモだ。
本物の漁獲量は多くとも年間1,500トン、しかも北海道太平洋沿岸の南エリアでしか獲れない大変希少なもの。それに対して、カラフトシシャモは年間約20,000~30,000トンと本物の13~20倍の漁獲量がある。
しかも、カラフトシシャモは年中流通しているのに対し、本物のししゃも漁はメスが産卵を迎えた10月初旬から11月の半ばまでの大体1カ月ほどしか行われない。
カラフトシシャモの主な輸入先はアイスランド、ノルウェー、カナダなど。日本で食べられるようになったのは30年ほど前になるが、乱獲や産卵場所の減少で獲れなくなってしまった『本物のししゃも』の代用品として売られるようになったという。
そして気になる味の方だが、本物のししゃものほうが身の付きがよく脂がのっている。
よく食べられるカラフトシシャモでは、腹に卵が入ったメスが多く、オスは水族館にいる海獣類の餌に回されることが多いが、本物のししゃもはオスの個体でさえも身が美味しいということで、メスよりも高値が付くことがあるほど。
もちろん本物は子持ちのメスでも、卵のプチプチ食感とカラフトシシャモよりも濃厚な旨みを楽しめる。ただ、値段が輸入品の3倍ほどとかなり高めである。
ししゃもの栄養
ししゃもは丸ごと食べられるのでカルシウムが豊富なイメージがあるが、他にはどんな栄養があるのだろうか?
ここでは、本ししゃもとカラフトシシャモの両方でチェックしてみよう。
※いずれも100gあたりの数値 本ししゃも(生干し・生) / カラフトシシャモ(生干し・生)の順
- エネルギー・・・166Kcal / 186Kcal
- 炭水化物・・・0.2mg / 0.6mg
- カリウム・・・380mg / 210mg
- カルシウム・・・330mg / 380mg
- マグネシウム・・・48mg / 55mg
- 鉄分・・・1.6mg / 1.4mg
- ビタミンD・・・0.6㎍ / 0.4㎍
- 葉酸・・・37㎍ / 21㎍
やはり丸ごと食べられるししゃもはカルシウムをたくさん摂取できるようだ。
また、内臓に含まれるビタミンDはカルシウムの吸収を促進するのにも役立つ。さらに、タンパク質やマグネシウム、葉酸も含まれていて、多様な栄養が摂れる食品であるのも嬉しいポイントだ。
気になる塩分量は?
本ししゃもは天日干し加工されたものが生の状態で売られていることが多いが、カラフトシシャモは冷凍、または一度冷凍にしたものが解凍されて販売されている。
製造工程は大まかに、選別(サイズを分ける)⇒塩抜き⇒洗浄⇒乾燥~凍結といった工程になる。使用している原材料はししゃもと塩のみである。
素材が持つシンプルな旨みと塩分でつい1本、また1本と手が伸びてしまうが、実際のところ塩分はどの程度含まれているのだろうか。
※いずれも100gあたりの数値 《 》内は焼いたときの塩分
- ししゃも (生干し/生)・・・1.2g 《1.6g》
- カラフトシシャモ (生干し/生)・・・1.5g 《2.0g》
やはり焼くと水分が抜けるため、その分塩分は少し高くなるようだ。
犬が1日に必要とする塩分量
次に、犬が1日に必要とする塩分量だが、犬の身体が必要とする1日のナトリウム摂取量は、体重1㎏あたり50mgと言われている。
これを塩分に換算してみると、体重1㎏あたりで0.127gとなる。例えば体重10㎏の犬では1.27gが適量ということになるだろう。
一方、ししゃも1尾分の重さは12~30g。これを塩分含量で見た場合、丸ごと一尾与えると、本ししゃもで0.19g~0.48g程度、カラフトシシャモで0.24g~0.6g程度の塩分を摂取することになる。
与える際は他の食材との塩分バランスを考える
ししゃもには特別中毒になる成分は含まれていないが、与えるには塩分摂取量に気を配る必要がある。
また、毎日の食事がドックフードか手作りご飯かでも、摂取する塩分量は変わってくることも頭に入れておきたいところである。
例えば…
- ドックフードを与えている飼い主さんは、すでに十分すぎるほどの塩分がドックフードに含まれているので与えない。もしくは、極少量。
- 手作りご飯の場合は、1日に必要な塩分量(適量)を目安に、塩分が不足・過多にならないよう他の食材との塩分を調整する。
など、ししゃも以外で塩分を摂り過ぎないように注意することが大切だ。
他にも気を付けるべきポイント
ししゃもの骨には注意しよう
私たち人間であれば「よく噛んで食べる」ということが可能だが、犬の場合は「丸飲み」「急いで食べる」という習性があることは忘れてはならない。
ししゃもの小骨は柔らかく、よく噛んで食べればそれほど問題ではないのだが、犬の習性ではそうはいかない。そのため、ししゃもを丸ごと一匹与えるのは避けよう。
少し面倒かもしれないが、小骨を取ってから与えるのが良いだろう。
コレステロールが高い
ししゃもは、頭から尻尾まで丸ごと食べることができる魚のため、内臓や肝、抱卵していれば卵まで食べる魚だ。そのため、コレステロール含有量は他の魚類に比べてどうしても高くなってしまう。
含有量としては、ししゃも100g中のコレステロール値は230mg。これは、卵(鶏卵)1個分とほぼ同量の含有量であるということは知っておこう。
コレステロールを多く含む食材は他にも、肉の脂身や内臓(レバーなど)がある。手作り食を与えている飼い主さんは、卵+肉+ししゃも…といった高コレステロールなメニューにならないよう、少しばかり気にかけてあげると良いだろう。
さいごに
なかなか本物のししゃもにお目にかかるのは難しそうだが、どの種類も主な栄養価に変わりはない。
ただ、気になるのは塩分、骨、そしてコレステロールが高めということだろう。
犬に与えるには少々ハードルが高い食材ではあるが、今回の記事を参考に上手にお裾分けしてほしい。