みなさんは、「馬肉」を食べたことはあるだろうか。
馬肉とは、その名の通り馬(ウマ)の肉のこと。馬肉は、ほかの牛・豚・鶏と比較しても栄養価が高く、滋養強壮、薬膳料理ともされ、日本でも古くから食べられている食肉のひとつだ。
もちろん、馬肉に対してアレルギーがなければ、犬が馬肉を食べても大丈夫。むしろ、豊富な栄養を含んでいるため犬にも与えたい食材なのだ。
とはいえ、馬肉といえば「馬刺し(=生)」で食べられることがほとんどだが、生で与えてもいいのだろうか?また、それ以外の与え方はあるのだろうか?
今回は、馬肉の与え方や気になる栄養・カロリーなども含めて調査してみた。
馬肉に含まれる栄養
高タンパク、低脂肪で健康や美容にも良いといわれる馬肉。滋養強壮にも効果的とも聞くが、一体どんな栄養が含まれているのだろうか。
グリコーゲン
馬肉が滋養強壮に良い、と言われる理由には「グリコーゲン」という多糖類の一種が含まれていることにある。
体内にあるグリコーゲンは筋肉に貯蔵され、運動するのに重要な役割を担う。体内で素早く吸収され、即パワーを発揮してくれるのでスタミナ持続の効果も期待できるようだ。滋養強壮、疲労回復にも良いと言われている。
L-カル二チン
動物性タンパク質に含まれるアミノ酸の一種。
カルニチンの健康的効果とは、体内の脂肪を燃焼させる働きに一役買ってくれる。
さらに、カルニチンは体内で代謝されると新たに「アセチルカル二チン」という物質に合成される。これには脳細胞を再生する働きがあるとされている。つまり、カルニチンは脳の活性化にもつながる嬉しい成分でもあるのだ。
鉄分
みなさんは、鉄分のなかでも「ヘム鉄」「非ヘム鉄」があるのはご存知だろうか?
主に、肉や魚に多く含まれているヘム鉄と、野菜に含まれる非ヘム鉄に分けられるのだが、ヘム鉄のほうが鉄としての吸収率が高い。
鉄分は貧血予防や改善に効果的と言われている。鉄分は赤血球の中の「ヘモグロビン」を作るのに欠かせない材料である他にも、赤血球が酸素を運ぶ手助けをしてくれる大切な役割がある。
ナイアシン
ビタミンB3とも呼ばれ、基本的には肉や魚に多く含まれている成分。
糖質、脂質、タンパク質の代謝に欠かせない。循環系、消化器系、神経系などの働きをサポートしてくれる。
ビタミンB12
ビタミンB12は補酵素として、タンパク質、炭水化物、脂質などの代謝を助ける働きがある。
また、造血ビタミンの一つであるビタミンB12は、赤血球の生産には欠かせない栄養素でもあるため、老化防止、貧血防止、タンパク質合成などに効果を発揮する成分ともいわれている。
亜鉛
亜鉛は、細胞の再生やストレスの軽減、免疫力の向上に効果があるといわれている。
亜鉛の不足は、フケ、鼻や肉球のカサカサの原因にもなってしまう。犬は人よりも多くの亜鉛が必要だとされているため不足しないよう摂取したい。
馬肉のカロリーを牛・豚・鶏と比較した場合
馬肉は低カロリーと言われているが、はたして実際のカロリーはどれくらいなのかチェックしてみよう。
※以下は、馬肉・牛肉・豚肉・鶏肉100gあたりのカロリー
- 馬肉(赤肉)・・・110kcal
- 牛肉(和牛/もも)・・・191kcal
- 豚肉(もも)・・・128kcal
- 鶏肉(もも)・・・116kcal
こうして比べてみると、馬肉のカロリーはほかの肉類に比べても低いことがわかる。
馬刺しでいえば、1枚あたりの重さは4~5g程度。カロリー計算して与える場合は、1枚あたり4~5kcalと考えて与えるといいだろう。
ただし、すこし注意しなくてはいけないのが、部位によってはカロリーが違ってくるという点。実は馬肉の部位毎の詳しいカロリーは公表されていない。
そのため、馬肉は低カロリーだからといっても脂肪の多いところは避けるべきだろう。
カロリーを気にして犬に与えるなら脂肪分の少ない赤身部分をチョイスしよう。 ちなみに馬肉特有の「コウネ(タテガミ)」と呼ばれる部位や、霜降りが多い部分はカロリーが高くなってしまうので避けるようにしたい。
なぜ馬肉は生食できるの?与え方
国内で流通する多くの生食用の馬肉は、生産地でマイナス20℃で48時間以上冷凍されて出荷するものが多い。
これは馬に寄生する、ザルコシスティス・フェアリーによる食中毒のリスクを低くするための有効な手段として用いられている。これが他の肉類とは異なり、生で食べることができる所以だ。
しかし、肉の生食といえば原則、禁じられているものが多い。では、馬肉といえば生食定番の「馬刺し」はどうなのか?
これは検査を厳重に行い菌が発見されていないことが生食可能な条件。そのほか、ガイドラインにそって衛生管理がなされているものだけが生食できるというわけだ。
ただ、すべての馬肉が完璧であるとは限らないので、こうしたリスクがある以上、信頼できる業者からの購入をおすすめする。
Q:その前に、「ザルコシスティス・フェアリー」ってなぁに?
A:ザルコシスティス・フェアリーとは、馬を中間宿主、犬を終宿主とする寄生虫です。
寄生虫の多くは、複数の宿主の間を行き来しており、発育段階で寄生する生物を「中間宿主」、寄生虫がその体内で成虫まで発育する宿主を「終宿主」と言います。
人間には寄生しませんが、この寄生虫が多数寄生した馬肉を人間が食べた際、食後数時間で、下痢、嘔吐、腹痛などの消化器症状が報告されています。
火を通してから与えるのも吉
このように生食できる馬肉だが、もちろん火を通して食べても美味しく味わえる。
もし、焼くのであれば肉が締まって固くなりやすいので、薄くスライスしてから焼くとよい。火の通りも早く、よりあっさりとした口当たりになるのでおすすめだ。
また、馬肉を茹でる場合は、薄くスライスしてから茹でるようにしよう。馬肉は解凍後、外側は柔らかくても、中心部は凍っている場合が多い。
厚みのある状態で茹でてしまうと、中心部が半解凍のまま…ということもあるので、中までしっかり火を通したい場合は薄くスライスして茹でるのがベストだ。
さいごに
高タンパクで低カロリーな馬肉。その豊富な栄養を知れば知るほど食べたくなってくる食材だ。
なかなか口にする機会は少ないが、生で与えるなら信頼できる業者から購入して安心して与える、不安な時にはより安全に加熱してから与える。これを基本に、ぜひ愛犬と一緒に馬肉を味わってみて欲しい。