昔から、「医者いらず」と呼ばれてきたアロエ。
古代エジプト時代の医学書にはすでに記載があり、6000年以上私たち人間の暮らしと共にあった植物だ。アロエは食べ物としてはもちろん、薬としても活用されてきた万能な植物でもある。
その豊富な栄養素や人の体に有用に働く成分が含まれているため、アロエドリンクやアロエヨーグルトなどで一世を風靡した頃もあった。
そんなアロエ。健康にも良いと思って愛犬にも食べさせたい飼い主さんもいるだろうが、実はアロエは犬が食べるには適さない食材というのはご存知だろうか。
一体、アロエにはどんな成分が含まれていて、何が適さないのか。今回はアロエの成分とともに、犬が食べてはいけない理由について解説していこう。
【獣医師監修】班目美紀
アロエって何?
アロエは、南アフリカ共和国からアラビア半島まで広く分布する多年生多肉植物で、その種類は500以上もあるといわれている。
多肉植物であるアロエは葉の中に水分を蓄えており、その99%が水分でできている。これは、ほかの野菜と比べても水分量が多い。しかも、ミネラルも豊富なので熱中症対策にも効果的とされているほどである。
ちなみに、アロエの旬は夏から秋。日本で流通しているのは主に2種類で、食用は「アロエベラ」、観賞用は「キダチアロエ」が多い。
アロエベラは大きな葉が特徴であり、皮をむいて食用にするのが一般的ではあるが、一方のキダチアロエは、葉にトゲが多く小さい。苦みが強いといった特徴があるので食用には向かないようだ。
また、アロエといったら用途の多様性も見逃せない植物だ。
食用や飲み物としてはもちろん、塗るということもできる万能植物。アロエが持つ成分には、保湿効果や鎮静効果、皮膚の修復効果などもあるとされている。古くから薬用としてアロエが用いられるには、こうした理由があるからなのだ。
アロエの有用効果の多さ
主に食用とされるアロエベラには、ビタミン類やミネラル類、アミノ酸類、酵素類など多くの有用成分が幅広く含まれている。また、アロエ特有の成分も含めると、その数は実に200種類にも及ぶのだという。
こうした有用効果の多さの理由として考えられるのは、厳しい生育環境で育ったことが大きい。
アロエの原産地は、とりわけアフリカ大陸南部、およびマダガスカル島に集中して分布している。これらの地域は日差しが強く乾燥した場所。その環境で種を絶やさず生き延びるには、身を守るための成分を多く持ってなくてはならない。
厳しい土地で生まれた成分こそが、私たちの健康に役立っているというわけだ。
カリウム
カリウムは、体に含まれている余計な塩分(ナトリウム)を排出する効果があることから、利尿作用や血圧を下げる働きに期待ができる。
近年、高血圧や脳卒中の予防などにもつながる重要な栄養素として注目されている。
カルシウム
丈夫な骨や歯を作り骨量を増やす上で大切なのは、何と言ってもカルシウムだ。
カルシウムは体内で合成することができないので、食事から摂る必要がある。
ドックフードを食べていれば安心…と言われる今日だが、最近では手作り食派も増えてきている。手作り食では意識しないと1日に必要な量を満たすことは難しいので、不足しないよう注意したい。
犬がアロエを食べてはダメな理由
このように、アロエには食用・薬用といった観点から優れた食材であることは確かなのだが、その半面で犬にとってマイナスになる成分も含まれている。
アロエ特有の苦み
アロエを食べると苦味を感じると思うが、これはアロエに含まれる「アロイン」や「サポニン」といった成分によるもの。
サポニンは、血液中のコレステロールや中性脂肪など、血液中の余分な脂質を洗い流して肥満予防によいとされているが、大量に摂取すると腸の炎症要因になるとも言われている。
一方のアロインという成分。人の場合では便秘や胃の健康に効果があるとされているが、大腸を刺激する作用もあるので、お腹を下しやすい人は食べ過ぎは禁物。犬にも同様の可能性がないとは言い切れないので注意が必要だ。
バルバロイン
バルバロインはアロエの「葉」に多く含まれている成分。
これには下剤作用があり、人の場合は適量で整腸作用をもたらしてくれるが、犬の場合は下痢や腸の炎症の元になると言われている。
葉肉部分にはほとんど含まれていないが、自宅でアロエを育てている方は、愛犬がガジガジしないよう注意したい。
アントラキノン
アントラキノンは、アロエ以外にも、マメ科センナなどにも含まれる成分で古くから下剤として使われてきた。
現在でも、一般医薬品や漢方薬を問わず、マメ科センナの成分は下剤によく使われている。
このアントラキノンだが、内閣府の食品安全委員会によると、「動物実験において腎臓および肝臓で発ガン作用を有する可能性がある」と示めしている。
犬がアロエを食べたら?
愛犬が食べてはいけない…と知っていても、想定外の出来事が起こる可能性もあるだろう。
もし、犬が少量のアロエを食べたからといってもすぐに容体が急変するわけではないので、まずは様子見を。ただし、量を食べてしまって下痢やいつもと変わった様子が見られた場合は、すぐに動物病院へ連絡しよう。
まずは電話で状況を伝え、ドクターの指示に従うのがよい。
また、アロエは角切りにされたものやシロップ漬けにされて販売しているものが多い。
加工食品としてもお馴染みのアロエヨーグルトもそうだが、シロップ煮のアロエを使った加工品は糖質が高い。アロエ自体のカロリーは100gあたり3kcalと低いのだが、加工された食品にはこうした落とし穴もある。
少しだけなら大丈夫、手軽だから与えやすい…と思っても、犬には与えないほうが無難だろう。
さいごに
アロエにはどんな成分が含まれていて、何が適さないのかについて解説した。
古くから「医者いらず」と呼ばれるほど、食用・薬用と優れた食材であることは確かなのだが、その半面で犬にとってマイナスになる成分も含まれている。
やはり愛犬にはリスクがある以上控えるべきだろう。