緑茶の一種である「抹茶」。
通常、緑茶をお茶として飲むと茶殻が残ってしまうが、意外にも茶葉がもつ約7割もの栄養成分が茶殻に残ってしまっている。
抹茶は「碾茶(てんちゃ)」と呼ばれる緑茶の一種を粉末にしたもの、つまり茶葉を粉末にして飲む抹茶はミネラルやビタミン類を余すことなく摂取できるといった優れものなのだ。
茶道で飲用として用いられるほか、スイーツ、料理の素材としても幅広く用いられる抹茶。その味わいや、美容や健康にも嬉しい効果があることから、特に女性に好まれる存在だ。
そんな抹茶だが、犬が口にする場合は注意が必要なのはご存知だろうか。ここでは、抹茶に含まれている危険な物質について説明していく。
抹茶にはカフェインが含まれている
カフェインが含まれているのは抹茶に限った話ではないのだが、抹茶には特に多量に含まれている。
そのため、犬が抹茶を食べるとカフェイン中毒を起こす可能性があるのだ。
カフェインは、人の場合でも過剰摂取による中毒を引き起こすリスクがあることでも知られている。犬の場合でも同様で、過剰摂取による中毒のリスクが指摘されている。
抹茶には、ミネラルやビタミン類をはじめ、カテキン、ポリフェノールといった体に嬉しい成分も含まれているのだが、一方で多量のカフェインが含まれているため、犬には与えないほうがいいだろう。
カフェイン中毒って何?
カフェインには、中枢神経を刺激して覚醒する作用があるため、眠気を抑えたり、疲労感を軽減させてくれる作用がある。
またそれだけではなく、大脳の海馬という記憶をつかさどる器官があるが、海馬は中枢神経ともつながっているため、カフェインは記憶力アップにもつながるとも言われている。
ほかにも、カフェインを多く含んだ飲み物といえばコーヒーがお馴染みであるが、コーヒーを飲んでオシッコが近くなる人がいるように利尿作用にも効果があるようだ。
ただ、カフェインの摂り過ぎは、カフェイン中毒を引き起こすこともある。
人の症状としては、落ち着きがなくなる、緊張感、感覚過敏、多弁、不安、焦燥感、気分高揚、一時的な不眠症といった精神症状をはじめ、胃痛、胸痛、吐き気、嘔吐などの消化器症状、不整脈、動悸呼吸が速くなるといった症状を引き起こすことがあるという。
犬の場合においても似たような症状が多く、落ち着きがなくなる、興奮状態、多量のよだれ、嘔吐や下痢。症状が重くなれば、ふらつきや痙攣、呼吸不全といった症状も出るという。
また、カフェインは中枢神経を刺激する作用があることから、てんかん発作や痙攣を起こしたことのある犬には特に注意が必要とも言われている。
ちなみに人の場合、日本中毒学会の調査によると、2011年~16年の5年間で日本国内で3人がカフェイン中毒によって死亡したという報告もあるようだ。
抹茶のカフェイン量はコーヒーよりも多い!?
お湯で抹茶を点(た)てる場合、一般的には抹茶1杯60mlのお湯に対し2g(小さじ1)が「薄茶(おうす)」の目安となっている。これをカフェイン量に換算すると64mgほど。
これに対して、コーヒーに含まれているカフェインは、コーヒー1杯(10gの豆で淹れた150ml)で60mg程度含まれている。
つまり、抹茶(薄茶)1杯はコーヒー1杯とほぼ同じ程度のカフェイン量が含まれているのだ。
また、抹茶には薄茶の他にも「濃茶(おこいちゃ)」というものもある。漢字が表している通り、濃茶は濃厚でカフェイン量もグンと上がる。だいたい、お湯30mlに対して4gほどの抹茶を使用した場合、カフェイン量は128mgと薄茶の2倍以上も高くなってしまう。
濃茶は茶道をしていなければ、なかなかいただく機会はないかもしれないが、抹茶は濃いほどカフェイン含量が高くなることは覚えておきたい。特に粉末のままでの誤飲には注意したい。
ちなみに、手軽に飲めるペットボトル飲料はどうなのか?抹茶飲料で有名なサントリーの伊右衛門で見てみよう。
※それぞれ100mlあたりのカフェイン量
- 伊右衛門・・・10mg
- 伊右衛門 濃いめ・・・20mg
- 伊右衛門 特茶・・・18mg
こうして見ると、商品によっては含まれているカフェイン量に差があるようだ。
とはいえ、コーヒーに比べカフェイン量は少ないようだが、やはりそれなりの量は含まれている。ペットボトル飲料は手軽さゆえに、飼い主さんが飲まれる機会もあるかと思う。目を離したスキに犬に飲まれないように注意した方がいいだろう。
カフェインの致死量
犬の場合、体重1㎏あたりに対して150mgのカフェインを摂取すると致死量だと言われている。
例えば、5㎏の犬の場合は750mg摂取すると危険レベルになってくる。
これを抹茶1杯(60mlのお湯に対し2g)=64mgのカフェイン量として考えると、抹茶10杯以上も飲むことになる。5㎏の犬が抹茶10杯以上飲むことなど現実的にはありえない話だが、致死量でいうとこのようになる。
犬がペロリと舐めた程度や、少量与えた程度では死に至る可能性は低いかもしれないが、ただ、カフェイン中毒のリスクがある以上、積極的に与えることは避けるべきだろう。
さいごに
抹茶の爽やかな苦味は砂糖の甘味とよく馴染み風味が際立つため、和菓子はもちろん、洋菓子にも用いられ、抹茶味のアイスクリームは日本では定番風味の一つともなっているほど。
もちろん、それらの加工品にもカフェインは大なり小なり含まれている。また、抹茶を含む食べ物以外でも私たちの身近にはカフェインが含まれた食品は数多く存在していることを忘れてはならない。
いずれにしても犬には不向きなカフェイン。抹茶に限らずカフェイン入り飲食物の取り扱いには十分注意した方がいいだろう。
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