油絵などの洋画に対して、日本の伝統的な様式を伝える日本画があります。
名前を聞いてもなかなかピンとこなくとも、歴史の教科書などに乗っている屏風(びょうぶ)絵などを見たことがある人は多いでしょう。
その伝統的な絵の世界に数ある流派のなかの一つに、琳派(りんぱ)と呼ばれる派があり、その開祖である俵屋宗達は犬好きとされ、いくつか犬の絵が残されているのをご存知でしょうか?
俵屋宗達の犬の絵は「たらし込み」という技法で描かれているものが多く、犬のモフモフした毛並みの質感が上手く表現されています。
ここではそんな面白くかわいく描かれているワンちゃんの絵をご紹介します。
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俵屋宗達は尾形光琳などを生んだ琳派の開祖
琳派最高ですね…!
私は若冲も好きなのでパパこれ買って〜!!! pic.twitter.com/ZBGevrjfOO— ぐみたべる (@gumi_taberu_) October 2, 2022
江戸時代初期に多くの作品を描き、現在では国宝級とされる絵を残している彼の生涯は、ナゾだらけとされています。
天才絵師とされる彼が開いた派からは、尾形光琳、酒井抱一など名を知られた画家が生まれていますが、彼自身は生年も没年もはっきりわかっていません。
ただ、伝わっている話のなかには「法橋(ほっきょう)」という高い位が与えられ、当時の天皇のために絵を描くなどして、絵師として活躍していたという記録が残っています。
しかし、開祖でありながらその絵が評価されたのは300年も後の大正時代でした。
俵屋宗達と琳派の日本画にはどんな特徴があるの?
北斎の「神奈川沖浪裏」の鑑賞から気が付けば1ヶ月と……🌀
西洋絵画だけでなく日本絵画も少し触れたかったので。有名所から俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を書で鑑賞📖「たらしこみ」の技法で雲の質感を表現した点が見所🌩
宗達は琳派の始祖。ならば次は継承した尾形光琳の作品の鑑賞が妥当やも。 pic.twitter.com/1I6ujJOKrt
— 獣司祭/Jyusisai📖🌹 (@JyusisaiGepe798) April 4, 2022
絵全体がキラキラしていて、誰にでもわかりやすく面白い絵が多く、代表作として知られているのは、京都国立博物館に展示されている国宝の「風神雷神図屏風」です。
金箔がふんだんに使われてまぶしいばかりの背景に、それまでは絵のモチーフとして取り上げられることがなかった風神と雷神が、人間味のあふれる神としてユーモラスに描かれ、恵の雨をもたらす神が乗る黒い雲は「たらし込み」が使われていて、奥行きの深さを感じる作品です。
そのほか、琳派の特徴としては、
- デザイン性が優れている
- 装飾性に優れている
などの2点が挙げられています。
「たらし込み」技法のやり方とは?
琳派の「たらしこみ」という水墨画の技法を知ったら、墨汁と修正液でそれを応用してみたくなって、昆虫を描いてみたり、 pic.twitter.com/LLJH2hLmkr
— al (⃔ *`꒳´ * )⃕↝ sinceK (@alsinceke) October 25, 2017
最初に塗った墨が乾く前にその上から違う濃さの墨で書くことで、濃さの違う墨がにじんで混ざり合うことで影ができるのを利用して、立体感を表現するやり方です。
宗達が編み出したこの技法は、後世の絵師たちが受け継ぎ、代表的な技法となりました。
俵屋宗達が犬を描いた作品一覧をご紹介!
毎年楽しみにしている、京の冬の旅が今年もスタート!しかも 琳派 自分の大好きな俵屋宗達さんのたらしこみが、観れるなんて・・・・。なかなか、眠れません! pic.twitter.com/pfK0sBFzYk
— ロータスの狼 (@dfuz1) January 10, 2015
動物が大好きだったとされていて、ワンちゃんをかわいく書いた「犬図」やたくましい牛を書いた「牛図」などのほか、鹿・象・鴨・シラサギなどの絵なども残されています。
ここでは彼が書いたかわいいワンちゃんの絵をご紹介します(カッコ内は所蔵している施設名です)。
狗子(くし)図
現在残されている子犬の絵としては、次の2種類が知られています。
狗子図(個人蔵)
今宵の可愛い墨絵
俵屋宗達 狗子図薄墨の幻想のような草
墨の滲みでビロードみたいな毛並みの仔犬ずっと見てるとなんか仔犬が宙に浮いているようにも見えてくる。
空間の使い方は本当に大事ね、見る側はストレスが無い。 pic.twitter.com/eFd00B5n3W
— ニューポンチ♨️repum (@555takumome) July 4, 2022
タンポポなどが咲いてポカポカした春、匂いを嗅ぎながら歩くコロコロした黒いワンちゃんが描かれている絵です。
黒いワンちゃんは全身が「たらし込み」で書かれていて、コロコロした質感がよく表現されています。
狗子図(神奈川県立美術館:所蔵)
俵屋宗達の白黒ブチの「犬図」可愛い が小林古径の『狗」も良い。#秋の彩り展#琳派 pic.twitter.com/uQhSUCRDcm
— komimiyako (@komimiyako) September 12, 2015
背景が描かれておらず、ホルスタインのような牛柄のワンちゃんが、「犬図」とは反対に左を向いて地面の匂いを嗅いでいます。
白黒の柄の黒い部分は「たらい込み」が使われていて、グラデーションの陰影によってワンちゃんのコロコロした体型が伝わってくるかわいい絵です。
双犬図(細見美術館:所蔵)
俵屋宗達 「双犬図」
江戸前期 細見美術館蔵 pic.twitter.com/GYYXVL1v8T— old zen barrier (@old_zen_barrier) September 7, 2017
じゃれあっている白と黒の2匹のワンちゃんの絵です。
とくに黒いワンちゃんの毛並みの質感がしっかり表現されていて、モフモフで手触りがよさそうで、思わずなでてあげたくなりますね。
犬図「扇面散貼付屏風より」(醍醐寺:所蔵)
『RT感謝!その記事再登場』(26259)
『琳派』(4)
『犬図』
俵屋宗達、醍醐寺三宝院
「九相詩絵巻」という古画の中から犬の姿をほぼそのまま取り出している。ブチの犬は座り込んで首が逆さになるほど興奮状態。土坡と2匹の犬だけで構成されているが実に不思議な絵。原画は犬が肉をあさる場面。 pic.twitter.com/yjnP5alZJv— K’s Dee(ケイズ・ディー)🎸歌うロボット工学者・SSWで空想大学『京都観光文化大学』配信 (@Ks_Dee_info) May 23, 2022
金色の背景に11枚の扇が浮かんでいて、そのなかの1枚の扇に白いワンちゃんと牛柄の黒ぶちのワンちゃんが登場します。
この絵は彼の「扇面画」のなかでも最高傑作とされていて、鎌倉時代の「九相詩絵巻」の一つの場面をモチーフにしているとされています。
狗を抱く童子図(MIHO MUSEUM:所蔵)
小さな子どもが子犬を抱っこして楽しそうに遊んでいる様子が伝わってくる絵です。
彼の絵としてはキラキラの金箔が使われた派手なものが有名ですが、この絵は水墨画で「たらし込み」の技法で使われていて、ワンちゃんの黒ぶちにそのにじみの陰影がきれいに出ています。
俵屋宗達の犬の絵がおもしろかわいい!まとめ
今日の収穫、山種美術館で購入した名刺入れ。俵屋宗達の描いた鹿。 pic.twitter.com/syErp2pmVw
— kenken_S&G 🦌🦌🦌 (@dylan_kenken) October 9, 2022
俵屋宗達が開祖の琳派は有名な「狩野派」などと違い、流派としての子弟制度などない自由な集まりで、後の人によって琳派と名付けられました。
その特徴である「たらし込み」と呼ばれる技法で、俵屋宗達は犬の絵を描いているのですが、ほかの琳派の画家たちが俵屋宗達の真似をして描いたかわいい犬の絵もたくさんあります。
もしこの記事で俵屋宗達の犬図に興味を持たれたならば、ぜひほかの琳派の画家が描いた犬の絵も観賞してみてください。
同じ「たらし込み」の技法でも、画家によって濃淡などの付け方の違いを感じ、かわいさの表現方法が違うのが感じられると思います。