秋の味覚として昔から愛されてよく知られている柿。諸説あるが、奈良時代に仏教を介して中国から渡来したという説が有力とされている。
現在では、「富有柿(ふゆうがき)」「次郎柿(じろうがき)」といった甘柿種と、「刀根早生柿(とねわせがき)」「平核無柿(ひらたねなしがき)」などの渋柿の4種類が主流であるが、これ以外にも全国ではおよそ1000種類以上の品種があるといわれている。
渋いイメージが強いせいもあり、お世辞にも人気者とは言えないが、昔から「柿が赤くなれば医者が青くなる」と言い伝えられているほど柿には素晴らしい栄養が詰まっている。
とはいえ、犬にとってはどうなのだろうか。
今回は、医者が青くなるほどの栄養が犬にとっても期待できるか、その秘密に迫ってみたい。
犬は柿を食べてもOK!でも与え過ぎは注意
まず注目したいのが、柿に豊富に含まれている「ビタミンC」「βカロテン」といった成分。
これらには強い抗酸化作用があり、活性酸素による細胞の酸化を弱めたり除去する働きがあることから、ガンの予防や老化予防に効果があると考えられている。
そのうえ、柿に含まれるビタミンCは100g当たり70mgと、みかんの2倍の含有量を誇る。ビタミンCには免疫力を高めてくれる働きもあるため、冬に向けての体調維持にも一役買ってくれる。
一方、犬にとって危険な成分は含まれていないので、基本的に与えても何の問題もない。
とはいえ、柿には果糖が豊富に含まれているのが気になるところである。その甘さゆえ、食べ過ぎてしまうとあっという間にカロリーオーバーになってしまうので気をつけよう。
特に、肥満気味の犬や糖尿病を患っている犬などに柿を与える場合は注意が必要だ。また、柿には腸の働きを抑えるタンニンも含まれており、食べ過ぎは便秘の原因にもなってしまう。
犬に柿を与えても問題はないが、与え過ぎには注意が必要である。
柿に含まれる犬に役立つ栄養と期待される効果
βカロテン
βカロテンには抗酸化作用があり、ガンの予防や老化予防に効果的と言われている。しかも、βカロテンは必要な量だけ体内でビタミンAに変換するという優れもの。ビタミンAは、視力を維持するには欠かすことのできない栄養素の一つ。
β-クリプトキサンチン
ビタミンCと合わせて、強い抗酸化作用が期待できる。β-クリプトキサンチンは発ガン物質や活性酸素などの有害物質から体を守ってくれるバリアの役目を果たす。
肝機能の改善、糖尿病の予防、ガンの抑制効果などが報告されている。
タンニン
タンニンには血液上昇を抑制する効果があるとされる。
また、タンニンには組織や血管を縮める収斂作用(しゅうれんさよう)があり、下痢を改善する効果があると言われており、この性質を利用して下痢止めとしても使われている。
ゆるい便を硬くするには効果があるが、逆に摂りすぎは便秘になりやすくなることも知っておこう。
干し柿は犬に与えてもいいの?
モチモチした食感がやみつきになる「干し柿」。主に「渋柿」を甘くするために干し柿にするのが一般的だが、干された柿は水分が抜けて糖度が増し、甘柿の4倍も甘くなると言われている。
甘味は犬の嗜好にもあっているので、いくらでも欲しがる犬もいるだろうが気になるのはカロリーだ。
生の柿は100gあたり60Kcal含まれているのに対し、干し柿100gあたりのカロリーは276Kcalと、生柿と比較しても圧倒的に多い。これは、干すことにより柿の水分が抜け、その分栄養が凝縮され炭水化物の占める割合が大きくなるからだ。
ちなみに、食物繊維も凝縮される割合が多く、100gあたり生柿1.6gに対し、干し柿14.0gとおよそ9倍近く含まれている。
干し柿は、犬にとって害を与える成分は含まれていないが、生柿に比べ高カロリーなうえ食物繊維が豊富であるため、肥満気味の犬や糖尿病を患っている犬などは避けた方が無難である。
まずはおさえておきたい。注意するべきポイント
柿には体を冷やす作用がある
柿にはスイカやメロンのように、体を冷やす作用がある。
暑い夏場にはピッタリな果物だが、柿は10月頃から出荷の最盛期を迎える秋の味覚。早生種や露地物など、8月下旬から出回るものもあるが、朝夕に寒さを感じるこの時期に食べさせる場合は、体を冷やさないように気をつけなくてはならない。
そのため、鶏肉や鶏レバーなど、体を温める食材を一緒に与えるのがオススメ。冷やす力を軽減できるので、是非試してみてほしい。
犬は渋柿でも平気で食べるの!?
ひと昔前は、よく庭先に柿の木があり、秋になると収穫を手伝ったものだ。みなさんも「食べてみたら渋柿だった」という経験はないだろうか。
実はその渋味や苦み、犬は感知する器官が鈍い、もしくはないと言われており、実際に平気で食べる犬もいるようだ。もし、家の近くに柿の木があるようなら、落ちている柿を犬が拾い食いしないように注意しよう。
柿の皮は犬の消化には悪く、大きな種は喉に引っかかる恐れがある。消化不良は下痢や嘔吐の原因になってしまう可能性があるため注意が必要だ。
食物アレルギーがないか様子を見守る
アレルギーの原因となるものをアレルゲンと呼ぶのだが、実は食べ物全てにアレルゲン要素があることは知っておきたいところ。
初めて与える時は少量から与えて、痒がったり嘔吐したりしないか、愛犬の様子を見守ってあげるのも大切だ。
さいごに
柿のことわざに「桃栗三年柿八年」というものがあるが、実際に種から育てて実がなるまでには6、7年はかかるといわれている。
実がなるまで相応の歳月を要することから、何事も成就するまでにはそれ相応の年月がかかるということをあらわしているのだが、日本人が古くから柿と親しんだことは感慨深い。
「柿が赤くなると医者が青くなる」といわれるほど、柿には犬にとっても栄養がたっぷり含まれているのは分かった。
愛犬の健康維持にも、与え方のポイントをしっかりおさえて、柿の栄養を得ようではないか。