果物の王様とも呼ばれる南国原産の果実「ドリアン」。
ドリアンと聞けば、その強烈な臭いで知られているが、実際に食べてみたことはない…という人が多いのではないだろうか。
臭い、と聞くと何だか食べるのが恐くなってしまうが、実は「悪魔の果実」とも呼ばれ、そのあまりの美味しさに取りつかれて身を滅ぼした、という逸話があるほど魅力的な果実なのだ。
とはいえ、最近では大型デパートや果物専門店でも見かけるようになったが、詳しく知らないため買うのをためらう人もいるかもしれない。
もちろん、ドリアンには中毒になる成分は含まれていないため、犬に与えても問題ないのだが、一体どんな果物なのだろう?
そこで今回は、ドリアンとはどんな果実なのか紹介するとともに、栄養や与え方などについてご紹介しよう。
【獣医師監修】班目美紀
ドリアンとは?
ドリアンの原産地はインドからマレーシア地域とされており、現在でも東南アジア以外には土着しないという不思議な果実だ。
ちなみに、日本の沖縄県でもドリアンの木が植栽されてはいるが、開花することはあるものの、結実にまで至ることは非常に稀なほどである。
このドリアン。現地の東南アジアでは、4月中旬から7月頃に旬のピークを迎え、日本にも出荷されるため手に入れることができる。主に、タイ・フィリピン・インドネシアからの輸入がメインだ。
ドリアンの果実は臭いが強烈なため、飛行機内への持ち込みが禁止されているほか、公共の建物やホテルなど持ち込み禁止にしている場所も多い。
その強烈な臭いが「生ごみ」と例えられることもあるが、品種改良されてそれほど臭わないものも出回っているようだ。
そんな臭いイメージばかりが強いドリアンだが、果実は強い甘味を持ち、且つ栄養豊富なため、かつて国王が精力増強に好んで食してた。ゆえに「王様の果実」とも呼ばれていたようだ。こうしたこともあり、今日では「フルーツの王様」「果物の王様」と呼ばれるようになったのだ。
また、東南アジアでは「アルコールを飲みながらドリアンを食べると死につながる」と信じられている。
これには様々な俗説があるようだが、ドリアンと飲酒による因果関係は証明されていない。科学的にも医学的にも根拠のない迷信だが、それだけ現地の人にとってドリアンは特別な存在であったことが伺える。
こういった特徴から、「悪魔の果実」「王様の果実」「禁断の果実」など、数々の異名を持っているようだ。
ドリアンの栄養
ドリアンに含まれている主な栄養素はビタミンB群やミネラルといった成分だが、中でもビタミンB1はフルーツの中でもトップクラスの含有量を誇っている。
また、カリウム、リン、鉄分、カルシウムといったミネラル分も豊富に含まれている。
ビタミンB1
ビタミンB1はエネルギー代謝に必要な栄養素といわれ、記憶力や認知機能を正常に保つ働きや、脈拍数や血圧が上がりすぎないように調節する。
別名、「神経系のビタミン」とも表現され、ビタミンB1の欠乏は運動失調や神経伝達に障害が発生しやすくなる。
カリウム
カリウムは、体に含まれている余計な塩分(ナトリウム)を排出する効果があることから、利尿作用や血圧を下げる働きに期待ができる。
近年、高血圧や脳卒中の予防などにもつながる重要な栄養素として注目されている。
カルシウム
カルシウムは骨や歯を作るのに必要な栄養素。
それなりのドックフードを与えていれば、カルシウムを不足することはないだろうが、手作り派の方は不足しないよう意識して摂取したい成分である。
リン
リンには歯や骨を丈夫に保ったり、神経や筋肉を正常に維持してくれる効果がある。
不足は発育不良の症状がみられるというが、一方で過剰による注意も必要。特に、腎臓病を患う犬は腎機能の低下でリンを体外へ排出しにくくなるともされている。
リンは体にとって必要な成分ではあるが、バランスよく摂取を心がけたい。
鉄分
鉄分が不足すると貧血になることは多くの人が知っているだろう。
鉄分は貧血予防や改善に効果的な成分。鉄分は赤血球の中の「ヘモグロビン」を作るのに欠かせない材料であるほかにも、赤血球が酸素を運ぶ手助けをしてくれる大切な役割があるのだ。
ドリアンの選び方・与え方・注意点
ドリアンの選び方
まずドリアンというものは、未熟な状態で収穫され出荷される。そのため、店で売られている時にはまだ完熟していないものがあることは知っておこう。
選び方としては、形が整って均等に膨らんでいるものが良い。膨らみの部分に果肉が入っているので、形がいびつなものや小さいものは果肉が入っておらず味も落ちるので避けよう。
また、穴が開いているものは中に虫が入っていることもあるので注意が必要だ。
ポイントとしては、形が整って膨らんでおり、穴が開いていないもの、と覚えておきたい。
次に、自宅で食べ頃を見極めるコツだが、追熟が進むにつれてトゲ状の果皮が緑色から茶色に変わってくる。
他にも、熟すにつれ臭いが強くなる、表面にヒビ割れができて、その裂け目から果肉が見えたりすることがある、といった兆候が見られたら食べ頃のサインだ。
ドリアンの果肉を取り出す
ドリアンを食べるには果肉を取り出す必要があるのだが、表面のトゲで怪我をしないように軍手やタオルなどを準備しよう。(ドリアンの下に濡れタオルを敷くと、切ってる最中に滑らなくてよい)
次に切っていくのだが、ドリアンは熟してくると花落ちの部分が5つに割れてくる。
この割れ目に沿って包丁を入れて割るようにして切っていこう。すると、中に5つの房に分かれていると思うのだが、この部分こそがドリアンの果実だ。
また、ドリアンの果実には大きめの種が入っているため、犬が誤飲しないよう注意したい。
ドリアンはお裾分け程度に
ドリアンは100g当たり133kcalと高カロリーな果物であるのが難点。健康に嬉しい成分がたくさん含まれているのだが、与える量はお裾分け程度にしておくのがいいだろう。
また、これまでにドリアンと飲酒による組み合わせで死に至ったケースはないようだが、人の場合でドリアンを食べたことによる消化不良や違和感、体調が悪くなる、といったことはあるようだ。
地元の人は、胃腸内で発酵が起こることで、体が火照るような症状を経験する人も多いのだという。そのため現地では、ドリアンがいくら美味しい果物とはいえ食べ過ぎないように注意しているのだとか。
犬が喜んで食べるから…といっても、少量程度に留めておきたい。
さいごに
ドリアンはどうして臭いのか?
その臭いの原因は、硫黄を含む発揮物質やインドール物質、スカトール物質などによるもの。
これら、まったく聞いたことがない物質だが、簡単に言うと人間の「おなら」を臭しくしている物質だ。この独特の臭いのためドリアンは敬遠されがちであるが、2回、3回と食べてるうちに好きになる人も多いのだとか。
栄養満点のドリアン。食べ過ぎには注意して、ぜひ愛犬と味わってみてほしい。
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