パセリは、春の七草の一つである「セリ」の仲間として知られている。
18世紀にオランダ人が日本へ持ち込んだとされており、当時は「ヲランダゼリ」と呼ばれ、長崎で栽培されていた。
パセリの原産地は地中海沿岸周辺といわれており、薬用や歯磨き用、匂い消しなどとして、古代エジプトや古代ギリシャではすでに使われてきたとされている。
パセリと言えば、その鮮やかな緑と独特の香りを持つことから、香味野菜として風味付けに用いたり、煮込み料理でも使われる機会が多い。
とはいえ、料理の主役ではなく彩り役として、いつも隅に置かれているパセリ。食べずに残す方も多いかもしれないが、実はパセリは他の野菜に負けないほどの栄養を持っているのだ。
今回は、パセリに含まれる栄養と犬の相性について紹介していこう。
【獣医師監修】班目美紀
麻布大学獣医学部獣医学科卒。現在は動物病院で小動物臨床獣医師として勤務。
パセリは犬に効果あり!もちろん犬に与えてもOK
パセリでまず注目したいのは、その見た目からは想像できないほどビタミンCや鉄分が豊富に含まれていることにある。
ビタミンCといえば「レモン」のイメージが強いが、実はパセリのほうがビタミンCを多く含んでいるのはご存知だろうか。レモン100gあたりビタミンC含有量が100mgに対し、なんとパセリには100gあたり120mgも含まれているのだから驚きだ。
それと、パセリには鉄分も豊富に含まれている。鉄分含有量が多いことで知られている小松菜の約3倍、ほうれん草の約4倍と言われており、数ある野菜の中でもパセリの鉄分はナンバーワンを誇る。
その他にも、βカロテン、ビタミンB1、B2などのビタミン類やカルシウム、マグネシウムなどのミネラルも含んでいるため、パセリの栄養価は極めて高い。
一方、犬にとって害を与える成分は含まれてはいないので、パセリは犬に与えても問題ない。むしろ、トッピングや手作り食にも加えてみたい優秀食材なのだ。
犬にとってパセリの栄養と効能とは?
ビタミンC
犬は体内でビタミンCを合成できるが、だからといって摂取しなくてもいいわけではない。年齢と共にその能力は低下するので長期的に摂取したい栄養素の一つ。
ビタミンCの主な効果は、抗酸化作用、免疫力の向上、コラーゲンの生成を促す、などの働きに大活躍してくれる栄養素だ。
また、水に溶けやすく加熱することで壊れてしまうビタミンCも、生で愛犬に与えることによって、無駄なく摂取できるだろう。
鉄分
パセリには鉄分が豊富に含まれているのは、前項でも説明した通り。
鉄分は貧血予防や改善に効果的と言われている。
鉄分は赤血球の中の「ヘモグロビン」を作るのに欠かせない材料であることのほかに、赤血球が酸素を運ぶ手助けをしてくれる大切な役割がある。
βカロテン
βカロテンには抗酸化作用があり、ガンの予防や老化予防に効果的と言われている。
しかも、βカロテンは必要な量だけ体内でビタミンAに変換するという優れもの。ビタミンAは、視力を維持するには欠かすことのできない栄養素の一つ。
しかも、パセリに含まれるβカロテン含有量は、モロヘイヤ、人参に次ぐ含有量を誇っている。
パセリ独特の香りは、アピオールという精油成分によるもの。
アピオールは、食欲を増進させる働きはもちろん、雑菌の繁殖を抑える働きもあるため口臭の予防にも役立つと言われている。
よく肉料理中心の洋食などにパセリが添えられているのは、こうした作用があるからなのだ。
与え方のポイントを知っておこう!
本題に入る前に、パセリは乾燥に弱い野菜であることは知っておこう。
愛犬にパセリのフレッシュな食感を与えるのであれば、冷蔵庫で保存するのがオススメ。キッチンペーパーでパセリをくるみ、そのままポリ袋に入れて冷蔵庫で保管しよう。
このとき、少し気をつけてほしいのは、ポリ袋の口は閉じて立てて保存するのがポイントだ。こうすることによって、1週間程度はパセリの食感をキープすることが可能になる。
パセリは「生」でも「加熱」でもOK!
パセリは、生で与えても、加熱して与えても問題はないが、どちらかと言えば「生」の方が栄養がたくさん摂れると言われている。
一方、加熱ならではのメリットもある。
パセリに含まれるβカロテンは脂溶性で油との相性が非常に良い。そのため、油を使って調理することにより体内での吸収率がアップするのだ。
油を使って調理する場合は、動物性の油より、植物油(オリーブオイルやゴマ油など)を少量使って炒めるのがいいだろう。
手作り食をメインで与えている方は、他の食材を炒めるときにパセリを少々まぜて炒めると、βカロテンも上手に摂取できてオススメだ。
パセリは食物繊維が豊富。与える量には注意しよう!
犬は肉などの消化吸収は得意ではあるが、野菜などの消化吸収は難しいとされている。
適量であれば便通を良くして軟便や便秘を改善してくれる食物繊維だが、消化を得意としない犬にとってみれば、パセリの食べ過ぎは消化不良の原因になってしまう。
それと、与える際は消化に良いよう、細かく刻んでからフードにまぜることも大切だ。
少量でも十分栄養が摂れるパセリ。せっかくの栄養を効果的に摂取するためにも、少量を細かく刻んでから与えるなど、手を抜かずに行いたい。
食物アレルギーがないか様子をみよう!
アレルギーの原因となるものをアレルゲンと呼ぶのだが、実は食べ物全てにアレルゲン要素があることは知っておきたいところ。
初めて与える時は少量から与えて、痒がったり嘔吐したりしないか、愛犬の様子を見守ってあげるのも大切だ。
さいごに
料理の彩り役のパセリだが、最近ではその栄養価が注目され、パセリを残さずに食べる人が増えているのだという。
もし、パセリの「苦味」に抵抗がある方は、少し熱を通すことにより苦味が少し減り食べやすくなるので、是非試してみて欲しい。
パセリは、栽培が比較的容易なこともあり、家庭菜園でもプランターや植木鉢で気軽に栽培することができる。
しかも、一度植えたら1年近く収穫し続けられるのだから、愛犬の食事に何か追加してあげたいときなど、サッと摘み取れるよう育ててみるのもいいだろう。
想像以上に栄養満点なパセリ。是非、愛犬と一緒に活用してみてはいかがだろうか。